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128番目の魔王  作者: ぱっぱぱらぱ
1/1

魔王強いわ・・・。

いきなりここは魔王城です。






いろいろあって結局…。






死闘の果てに、ついに勇者一行は魔王城にたどり着いた。多少疲弊はしているものの五体満足。回復アイテムもたっぷりある。


パーティ構成は、勇者アル。剣の技も魔法も申し分ない。魔術師ミム。攻撃から防御、回復、なんでもこなす万能なパートナー。なかなかの美人というのを付け加えていないと消し炭にされる。


それから…無職のバグ。パーティのアイテムを運んでいる。無職といっても何も出来ないわけではない。該当する職業がないので、無職ということにしている。で、何が出来るかというと、大きめのスイカくらいまでの手に触れるものを、5m以内の任意の場所に瞬間移動させることが出来る!!


「すごい能力じゃないか!!」ってアルが連れてきたのだが、移動させられるものが、小さい。距離が近い。「絶対、旅が楽になるって!!!」・・・それ程、変わらなかった。


役に立たないわけではない。戦闘中でも離れた場所からたいていのアイテムはアル達に渡せる。火炎瓶なんかを敵の頭上に移動させて不意打ちなんてこともできる。


しかし、アル達が強くなると、あまり必要ではなくなってきて、必然的に荷物持ちをやっている。


という3人のパーティ。






「さて、あとは魔王倒して終わりだな」アルが城の扉へと向かおうとすると、


「入口から入って魔王倒しに行くの?」ミムが声をかける。


「そんな、お行儀よくしなくったって相手は魔王だよ。城ごと焼き払っちゃおうよ」


ミムの提案にアルはあっさりのった。


「バグ、ありったけの火炎系のアイテムでサポートしてくれ。在庫処分だ」


バグが爆弾、火炎瓶などを用意する。


「はいはーい。離れて離れて。アル、あんたも全力でやってよね。」





「いくわよ!!!」炎が前方に差し出されたミムの両手に集まる。


「うぉぉりゃぁぁぁ!!!」アルの突き上げられた拳に光が集まる。


「いっけぇっ!!!!!」


城は一瞬で炎に包まれた。そこに申し訳程度の火炎系アイテムをバグが放り込む。


炎は次第に集束し巨大な火球になった。内部温度1万度程度のプラズマだ。この規模で、これだけの熱量を維持するのは相当な魔力と技量を要する。


周囲に熱は殆ど漏れていない。至近距離にいるバグが熱がる様子はない。熱をすべて火球の内部に閉じ込めているのだ。





「よっしゃ。もういいだろ」アルが魔力の放出をやめる。続いてミムも。


火球が一瞬で消えた。そこには何も残っていない…はずだった。





 魔王城は無傷でそびえていた。その壁は劫火に包まれていたことなど何の証もなく、ひんやりと冷気さえ放っていた。


「うっわっ!ミム、ダッセー!魔王城半端ねー」アルが大げさに叫ぶ。


ミムのアイアンフィストを腹に喰らいうずくまる結果になる事は容易に予測できた。


加速、筋力強化にアイアンフィスト。瞬時に3つの魔法を発動。魔術師ながら、これまで何体ものストーンゴーレムの腹に風穴を開けている。





「仕方ないわね。お行儀よく入口から入って挨拶に行きましょ」


アルを無理やり立たせ、3人は魔王城の扉の前に向かう。





重々しい扉だ。禍々しいレリーフが施されている。


「悪趣味なデザインよね。誰が彫るんだろ?魔王が自分で彫ったとか?」


「魔王が自分で扉彫るの?もしかして城も自分で建てたとか?建築スキル半端ねー」


ミムが拳を握りしめ、アルが黙る。


「ねえ、扉に鍵がかかってるよ」バグが鍵穴を指さす。


3人で扉を押したり引いたりしてみる。


「引き戸だったりして」……結局扉は開かなかった。


「…さて鍵なんか持ってないし、呼び出しのベルもなさそうだな。どうやって入る?」


アルが二人に話しかける。


「帰りましょ。『魔王城には鍵がかかっていたので勇者一行は帰りましたとさ。めでたし、めでたし』 完!!」


「完!!じゃねーよ。ここまできて帰れねーだろ」





「じゃ、ちょっと待ってて。」バグが小さなナイフを取り出した。


「ミム、刃先が軟らかくなるくらいに加熱して」


「何するの?」


「僕にまかせてよ」


ミムがナイフの刃先に触れると一瞬で白色に発光した。と思うまもなくナイフは消え、扉のカギ穴の所に刺さっている(様に見えた)。


「アル、少し冷まして。冷気を当てるんじゃなくて、ナイフからゆっくり熱を奪って」


「はいはい了解」今度はアルが、そのナイフに触れる。


「代わって」バグが触れると再びナイフが消え、地面に転がった。


その刃先は、複雑な鍵穴の奥の形状を写し取っていた。それを元に、不要な部分を削り取り、魔王城の合鍵は完成した。


「…バグ、こんなこともできるんだ…」


「瞬間移動。使い方次第でいろんなことが出来るよ…って、ずっと前にも言ったよね?」


「あ、えっと、もちろん知ってるよ!さすがバグ!さぁ開けよう」


鍵を挿しこみ回す。カチャっと以外にも心地よい音を立て鍵が開いた。そして扉を押すとゆっくり開いた。


「おじゃましまーす」アルが大きな声を出し、ミムに睨まれる。


中は想定外に明るい。禍々しさを漂わせつつも美しい彫刻の柱が並び、床や階段には分厚い真っ赤な絨毯が敷き詰められている。


その美しさ豪華さ、静けさ、何よりその圧倒的な存在感に呑まれる。





「…さてと、魔王はお決まりの最上階かな。…バグはここで待っててくれないか?いつでも出られるように扉を開けっ放しにしといて欲しい。そして、3時間で俺たちが戻らなかったら、町に戻って、失敗したって伝えてほしい…」


珍しくアルが真顔だ。


ミムも真剣な顔をしている。そしてバグを全身強化する。


「5時間はもつわ。おそらく、このフロアに魔物は来ない。外の魔物なら余裕であしらえるはずだから、よろしくね」





いくらかの回復用アイテムをもち、バグを残し2人は階段を上がっていく。


「生きて帰れるかねぇ」「1パーセントってとこじゃない」「お、高確率じゃん」


階段の先の扉に手をかける。この先はもう別次元だ。外のゴーレムなど、もはや小動物程度にしか過ぎないだろう。


「俺達、なんで魔王を倒しに来たんだっけ?」「世界の平和じゃなかった?」


しばらく沈黙があった。


「ずいぶん強くなったつもりだった。俺が世界で一番強いんじゃないかと思ってた。こりゃまいったね『初心忘る べからず』ってやつだね。ドキドキする。ほぼ死ぬのに、なんかウキウキする。なんか楽しい」


「アル変態だね。…でも私も同じような感覚。悔しいけど私も変態かも」


2人は薄ら笑みを浮かべえている。その時後ろから声がした。


「2人とも楽しそうだね。僕だけ置いてくのは、あんまりじゃない?」


バグが微笑んで立っている。


「どうせ、逃げ帰る気はないんでしょ?入口開けっ放しにしとく必要もないでしょ?」


「お前を死なせないように気遣ってかっこつけたんだよ。察してくれよ」


アルが笑ってバグに話す。


「似合わないね」バグが一蹴する。そして、


「じゃ、僕一番ね!」扉を開き、中に入る。2人も急いで続く。






目の前に「壁」があった。


そいつは腕を振り上げ、そのまま振り下ろした。バグの頭上に。ミムの施した強化魔法は何の意味もなかった。目の前で仲間が粉砕される。今までにない『初めて』の体験。アルとミムの奇妙な高揚感は消し飛んだ。





恐怖。2人は思い出した。幼いころ、突然襲ってきた魔物に家族が喰い散らされた。強引に忘れていた記憶。目的は『世界の平和』などではない。『復讐』だった。同じような境遇だった2人は意図せずして出合った。


押し消した記憶と差し替える為に「世界を平和にする」という目的を自分自身に摺り込んだ。その目的すら薄れるほどに、2人は戦い続けてきた。


自信があった。どんなに絶望的な状況でも絶対に切り抜けられる。そう思えるほどに己を鍛え上げてきた。


自信は一瞬で消し飛んだ。一瞬で気付かされた。『自信』ではなくし『傲り』そんなものは必要なかった。


アルはゆっくりと息を吐いた。そして、吸えるだけ吸い込む。それを、絶叫とともにすべて吐き出す。


「グゥアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」その叫びは2人同時だった。





アルが剣を構え瞬時にミムが強化する。振り下ろされた腕に斬りつけ切断。間髪入れずに猛烈な炎が腕を焼いた。それを、時間稼ぎに間合いを取り、2人でプラズマを発動。一気に収束し「壁」の頭部を焼き切った。





扉を開けて5秒。仲間を1人失い。巨大な魔物が1体屍を築いた。


周りには「壁」とも見紛う魔物が無数に徘徊し、2人の小さな人間を敵だと認識した。それが一斉に襲いかかってくる。息をつく間もない。図体の割に速い。一気に間合いをつめられた。ミムが魔法で壁を張って防ごうとしたが、まるでシャボン玉だった。そんな壁など存在しないかのように、魔物の拳がミムを捉えた。かわしきれず殴り飛ばされ壁に激突した。生存など不可能なほどの衝撃。砕けた骨が肉を引き裂き突き抜け、内臓が破裂し、膣や尻の穴から血しぶきと共に飛び出した。脳が砕ける寸前に自分に治癒の魔法をかけていた。無意識だった。「生きる」そして何よりも「復讐」のために。


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