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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
京への旅路編
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008 上田 その2

真田の郷を旅立ったおゆき一団は、まだ幾ばくもたっていないのに、上田・別所で骨休みです。果たしておゆきは京都に着く事が出来るのか?そもそも着く気があるのか?波乱の気配がちょっとだけする第8話です。


さて、我々は湯めぐりに飽き足らず、湯でほてった体を覚ましついでに、北向観音をはじめその別院である常楽寺や安楽寺の八角三重塔など、名跡めぐりもしてみた。


別所でもっとも有名な名跡は北向観音だ


北向観音はかの有名な善光寺とセットなお寺で、互いに向かい合って建立されているそうだ。両方参拝しないといけないだの言われている事もあり、結構近隣では人気があり、こんな世の中でも、湯治を兼ねた人々が訪れ、にぎわっていた。


いやこんな世の中だからか・・。戦国時代でも楽しみは必要なのだ。



鬱蒼とした森の中に作られた階段を昇っていくとそこには八角三重塔と呼ばれる建物が建立されている。


階段を昇るごとに次第に姿を現してくる三重塔は荘厳で演出効果満点である。


中々感動ものなのだ。


「でも、四重なのに何故三重塔?」


私は隣で塔を見上げてほう然としていたきりに何とは無しに訊ねてみた。


「・・知りません」


おい。


予想以上の荘厳さに感動していたらしいきりは邪魔されて多少気分を害されたのだろう。いつも以上につっけんどんに答えた。


こう見えて素直(自分に)で乙女なのである。


今回主君の命令とはいえ私に付き添い京まで行くのだ。下手すれば何年にもわたるかもしれないこの同行のおかげで彼女は行き遅れるかもしれないと思うと正直胸が痛い。


行き遅れるといえば、私もそうだ。


京についたら男装で過ごすのだ。嫁の貰い手など出来る筈も無い。


まぁその事は今は話考えない様にしよう。


意外とあっさり解放されて郷に戻れるかもだからね。


「一番下の屋根は裳階なので勘定にいれないそうですよ」


宿の女将からもらっていた名跡の解説メモを思い出した様に取り出して読んでいたきりが答えた。


まじめか?!さすが内記殿の娘。血は争えんな!


「裳階って何?」


そんな感想はおくびにも出さず。とりあえず聞いてみた。


「ひさしですね。塔は三階建てでそれごとに屋根があるんですが、その下に建物を雨風から守る為にひさしが付けられることがあるそうです。この塔の場合一番下のがそうですね。」


私は「ふーん」という気のない返事だけを返した。


「形が八角のも珍しいそうですよ。・・・そんな事より・・」


気づいてますか?と、意味ありげに小声で付け加えるきり。


「昨日辺りから我々に付きまとってるやつらか?」


私はきりに顔をむけて、ニヤッと口角をほんのわずかにあげて少し小声で答えた。勿論気付いているさぁ~お前も気付いたか~やるな~という表情である。


「はい。この塔への山道を登り始めてから、多少行動が大胆になりました。」


私は、三重塔を見上げる位置に顔を戻しながら、周りを見回す事無く気配だけを探る。


二人、三人かな?気配隠されたらちょっとわからない可能性もあるけど・・。


気配を隠して我々に近づくものがあれば、護衛の者が放って置く訳は無いだろうから、いずれにしても大人数ではないだろう。


「デバガメではなさそうね・・」


私は顔を軽く伏せて今度ははっきりニヤリと笑う。


さぞ悪い顔をしているに違いない。


「ひめ・・いやお嬢様・・」


きりがちょっと心配そうな声を出す。普段は私の事を姫様またはゆき姫様と呼ぶことが多いきりだが、今は隊商について来た商家のお嬢様という設定なので、言い直すきり。まだ慣れていないらしい。


「いや、こんな郷中で騒ぎを起こすわけには行かないし、それは相手も一緒か・・。」


顔を上げた時は普通の小娘に戻っていた。


「じゃあ、宿に戻りましょ!お腹すいたし!」


上田というか別所観光が第二弾です。別所松茸おいしいですよね。名跡がほとんど歩いて回れるのもとっても素敵。

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