082 安土城
いよいよ安土に乗り込む信忠さん一行。おゆきは念願の安土城を見学できるのか?
私と信忠さんはかなり遅くなって宿に戻ったが、何故か誰にも何も聞かれなかった。
何となく興味津々な視線を感じたが、単なる自意識過剰かもしれない。
プロポーズを受けた事を忍軍にも伝えて置く必要がある気がしたが、佐助は論外だし、十蔵に伝えるのも違う気がした。こういう時きりが居ないと相談できる相手が居ないボッチな私を自覚してしまう。
しょうがないんで、本来のレポートラインでは無いけど、有る意味全郷、頼れるお姉さん代表であるおりょうさんに相談と言う態で伝えておく事にした。
おりょうさんに声を掛けたところ、待ってました位の感じで個室に連れ去られたが、一連の話をすると。
「まずは、おめでとう御座います。」
といきなり居住まいを正して言ってきた。もしかして、彼女はこの為に来たのか?
私が男共には伝えづらいんだけど・・というと、他の忍軍には、自分の方から伝えますが、佐助だけはご自分で伝えられた方が宜しいかと。とはっきり言われてしまった。
佐助と私の謎な関係は、大なり小なり郷の皆には知れ渡っている。そう言われるも止むを得ないかもしれない。
そりゃまぁそうなんだけどね・・。やっぱそうだよね~。
「時間が経つとドンドン言い出しにくくなりますので、直ぐに伝えに行って下さい。」
え?!ちょっと心の準備が・・。明日の朝で良くない?
「後、お館様の耳に入れないわけには行かないので、一応文をお書き下さい。お福に届けさせましょう。或いはもし安土に来られているなら、出来るだけ早く面会できる様信忠様にお頼み下さい。」
うーん。なんて頼れるんだ。この人!
「じゃあ、佐助の所へ参りますよ」
え?今から?本当にこの脚で?直ぐ?
おりょうさんは私の両肩後ろからガシッと捕まえて、佐助に個人的に割り当てられている部屋までグイグイ私を押していった。
扉をノックして佐助が居る事を確認すると、私を部屋に放りこんで、ピシャッと扉を閉めてしまった。
え?一緒に言ってくれるんじゃないの?!
佐助がこちらをジロリと見ている。・・・気まずい。
えーい。女は度胸!ままよ!
私は観念して、信忠さんからプロポーズを受けた事。佐助との出会った頃の話をして、佐助が私の為だけの忍者である事。それでも嫁に来て欲しいと言われた事。それを了承した事。等、今晩信忠さんとあった事を、一挙にありのまま伝えた。
説明し終わった後、恐る恐る佐助の方を窺い見ると、佐助はある程度覚悟していたのだろう。「そうか」と一言だけ答えた。
私は何か気の聞いた事を言いたかったのだが、遂には何も思いつかなかった。
「じゃあ、おやすみ」
と何とか其れだけを言って、私は部屋を出ようとした。背中から「ああ、おやすみ」と言う言葉を掛けられて、ほんの少しだけほっとする私だった。
翌朝、我々は早朝から、宿を発って、雄琴の近くの漁港から、船で安土城に向かった。
広い琵琶湖だったが、風も良く、船で渡ると程無く対岸の安土城が見えた。
デカイな?!
小高くなった山の上に天主閣が聳え立っていた。
正直あまりセンスが良いとは言い難い気がしたが、これは私が女の子だからだろうか?ぶっちゃけ魔王の城か?!という意匠っである。
それは私が本格的な天主閣を持つ城を見るのが初めてだったからかもしれない。
城の上に城が乗っている?というか、別所で見た、八角三重塔をど派手にして普通の城の上に乗っけた様な感じだ。男の子の好きな合体なんとか的なあれである。
それも然る事ながら配色というか色使いがすさまじい。黒、白、青、赤、金。原色が多彩できつ過ぎるのだ。
きっとこの城を、侘びだの寂だの言っているお茶方面の人達が見たら卒倒するんじゃないだろうか。まぁ、そう考えると、それぞれ人の好みだし、まぁ良いかという気もして来る。
そんな事を思っていると、信忠さんが近付いて来て
「まだ、驚くのは早いぞ、中に入ったらもっと引くぞ(笑)」
そんな事を言い出した。信忠さんをしても、多少思う所はあるらしい。さすが傾奇者のお父さんと言った所だろうか。
安土城がある安土山は琵琶湖に突き出しており、直接船を寄せる事が出来る。
我々が上陸した所は、武家屋敷のメインストリートと呼べる場所なのだろうか(正式な大手門は別の場所にある)?天守閣まで続く、階段道の両側に兎に角屋敷が延々と続いている。
もはや街だ、街!
殆ど城下町がそのまますっぽりおさまっている感じだが、聞くところによると安土山の反対側の麓にまだまだ町が広がっているらしい。
船着場には、一門衆さんや重臣さん達がお出迎えに来ていた。一門衆の信孝さん、もう一人のそっくりさんは信雄さんだろうか?重臣の方々ではお馴染みの丹羽さんや恒興さん、後の知らない人で一番偉そうなのが柴田さんかも知れない、その他滝川さんも来ているかもしれないが、軽く十名を超える人達が藁藁来るので、とても一々相手になっては居られない。
信忠さんは取りあえず柴田さんとだけはなにやら挨拶を交わしていたが、それ以外の人達には「後だ。後。取りあえず城に行こう。」と促していた。
私はというと秘技「近習成りきりの術」でそ知らぬ顔で付いて行っていたが、丹羽さんとは目が会ったので、軽く会釈をしておいた。
後、信忠さんに続いて船を下りた秀吉さんの事を先の柴田さんと思われる偉そうな人がメッチャ睨んでいた。やはりこの人が柴田さんで確定だろう。お二人の仲が悪いのは今や三つ子でも知っているからね。
当の秀吉さんは平気の平左で、気のせいか見せ付ける様にちょっと胸を張って信忠さんに付き従っていた。やだ、大人って怖い!
安土城は現存していない事もあり、諸説が入り乱れているため、あまり正確に描くのもどうかと思ったので、当時としてはかなり奇抜なお城だったと雰囲気が感じられる様な描写にしてみました。再現図も大体のイメージは固まりつつあるみたいですが、色が結構再現された人によってマチマチ。まるで恐竜の復元想像図を見るようでした(笑)このお話では一番ドギツイのをイメージして書いてます。




