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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
湖上の告白編
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070 桃山丘陵

京に集結する忍軍。其処には一人の男が合流していた。


黄梅院での会合の後、私は一旦信忠さんと分かれて、菊亭家の別邸に戻った。忍軍の今後について、打ち合わせを行うためだ。


十蔵も一緒だ。信忠さんの護衛としては念の為青海を残して来たはずだったのだが、別邸に行くと、其処に巨漢の僧体の男が居た。「お前!信忠さんの護衛をほったらかして何やってるんだ?!」と言うとしたが、振り向いた顔をみてその言葉を飲み込んだ。


「もしかして利三さん?」


私のその言葉に、少し恥ずかしそうに苦笑するその男は斉藤利三さんだった。


「もういいの?」


もちろん体の事だ。山崎の戦いの直後は動く事すらままならない感じだった。


「もうすっかり。って訳には行きませんが、動くぐらいなら。」


そういって服のあわせガバっと開いて、木の板と包帯でぐるぐる巻きにしている胸周りを見せる。これ!年頃の娘の前で何見せてるんだお前?!


そんな事より、その格好はなんだ?頭は綺麗に剃髪してるし、その割りに無精ひげがボウボウ状態じゃないか。結構口鬚がダンディな感じだったと記憶しているけど、台無しだぞ。


「さすがに斉藤利三のままお嬢に仕えるわけには行かないですからな。今日から俺は三好雲海と名乗る事にします。」


なんだ?その青海の偽者みたいな名前は?それにお嬢って・・。ただなんか自由で生きいきしている様にも見えたので、取りあえず、放っておく事にした。ちょっと無理してる様にも見えたしね。



別邸には、利三さん改め雲海の他に、佐助、十蔵、小助、甚八、おりょうさんの忍軍主要メンバーに後きりが集まっていた。一山超えたので、主水は一旦帰した。あっちはあっちで忙しそうだしね。甚八も一段落したら戻るように言われているらしい。それは已む無しとして、お福と新月は置いていけ、と言ったのだが、どっちみち何人かは手の者を連絡用に置いて行くという事だった。臨時に小助の部隊に組み入れるそうだ。


取りあえず私は、三日後に安土に発つ事になった事を伝える。佐助、十蔵、と青海、後当然の如く女衆は私に付いて来ることになった。小助は、取りあえず京に新たな拠点を作るという事で、下京に開く商店を現在物色中との事だった。堺の拠点もそのままで、商店としてはまだ営業中だそうだ。地元の商人に委託はしている様だが。


例の大坂構想もあるので(理由は伏せて)堺はそのままにして置けとは伝えた。しかし小助お前その内本気で商人に転職する気じゃないだろうな?


きりは、新たに出店する下京の商店開設の手伝いだ。安土に行けないと分かった時は物凄い不満を噴出していたが、安土に腰を下ろすかも判らんから、事情が見えたら改めて呼ぶからという事で何とか納得させた。


正直、下手したら権謀渦巻く(予定)の安土城にきりを呼ぶなんてぞっとしない。


何となく手代と言うか看板娘的なポジションも気に入ってるみたいだしね。とは言え、寂しいかもと思って、女衆に頼んで、一人護衛として残ってもらう事にした。具体的には歳の近い紅葉だ。隠れ巨乳同士、せいぜい看板娘、頑張れよ!



さて、実は私は明日、信忠さんに誘われている。誘われているといっても、毎日引っ付きまわってるので、今更な気もするが、信忠さんが個人的に行きたい所があると言うので、久々に二人でお出かけだ。デートだ!デート!ヒャッハー!


ちょっとはしゃぎすぎました。すいません(主に佐助)。


その話をして若干テンションを上げていると、天罰が下ったのかまたもや女衆に奥に連れ去られるおゆきちゃんであった。あ~れ~・・・(以下略)。



翌日。またもやピカピカおゆきちゃんになった私は、信忠さんと二頭の葦毛の馬(勿論白星と新月)の轡を並べて、京の街を常歩でゆったり進んでいた。


相乗りと言うのも提案されたが、馬が可哀想なのでやめた。白星はそれ程大きな馬格では無い(いたって標準)し、私も騎乗はお手の物だし、幾らデートだからと言って馬に無理させる必要はない。


ただ、轡こそ引かれていないが、手綱を使わず、足だけでほぼ全速の馬を操りつつ、おまけに八匁弾を敵の額にぶち込める程の騎馬上手のおゆきちゃんが、何が悲しゅうて女乗り(横座り)で、静々とお上品に騎乗せなアカンねん!


理由は、馬に乗るから通常の旅装の又割れの袴で良いと言うのを女衆が頑として拒否したからだ。一応町娘風にしてくれたが、逆にこんな格好で馬に乗ったら目立つだろうとも思うのだが、逢引なのですから!と頑として聞こうとしない。この件についてはきりも同調する始末で、逢引にどれだけ爆走するつもりですか?!と怒られた・・。


まぁ新月ほど調教された馬なら、横座りのまま早掛けだろうが、だく脚だろうが、曲乗りだろうが、やってやるけどな!


とはいえ、そんな不満はおくびにも出さず、信忠さんの横を楚々と進む私。


女性が騎乗しているだけでも目立つのに、今日は特に磨き上げられたピカピカおゆきちゃん。なんかもう注目の的なんですけど!美少女(自称)って本当に大変!!


信忠さんは其れに気付いてるのかどうか、いつもよりニコニコしながら歩を進める。


目的地を聞くと「伏見」という事だった。あの思い出の伏見稲荷だろうか?と思っていたら、どうやら違うらしく通り過ぎて宇治の方に向かっている。私は良く知らなかったがもしかして伏見稲荷は伏見には無いのかしら?


しばらくすると小高い丘陵が見えて来た。どうやら其処が目的地らしい。桃山丘陵といって、シーズンには桃の花が満開になるらしい。勿論時期が違うので花は咲いていないが、今は青々とした葉が太陽に照らされてこれはこれで美しい。


馬で登れるぐらいの緩やかな丘陵だったので、そのまま登ると、上は整備されていて、開けて野原の様になっていた。丘陵の端まで行くと、其処からは京の町並みが見渡せた。方向で言うと京の街からは南東に位置する場所の様だ。


丘陵の南側を見ると、宇治川が穏やかに流れている。風光明媚といって良いだろう。


うん、確かにデートには良いかも。


今度は少し移動して、南西~南の方向が見える位置に来る。


宇治川から淀川まで見渡せる場所だ。あの向こうは石山や堺がある河州かな?南は大和ね。等と思っていたら、急に信忠さんが声を掛けてきた。


「どうだ?」


え?何が?


この当時桃山丘陵ではなく、木幡山と呼ばれていたそうです。ただ通りが悪いので桃山で行かせて貰いました。安土桃山時代はここから来てますしね。桃の木も江戸時代に入ってからとも言われていますが、こちらも、雰囲気重視という事でご容赦を。桃山丘陵の麓は、やがて、武家屋敷が並び発展する事になりますが、水が良いことで有名で、月桂樹のマークや色っぽいカッパのお姐さんで有名な酒造メーカーが並んでいます(今は記念館だけでお酒は作っていないかもですが)。あの幕末の寺田屋事件の寺田屋もこの近くに現存していますので、歴史好きには鼻血もののエリアです。是非一度脚を運んでみてください。ちなみに今たっている伏見城は某アトラクションランドのモニュメントとして割と近年近鉄が建てた物で、建っている場所も微妙に違いますので、念の為ご注意。とはいえ、かなり立派な物らしいので、雰囲気を楽しむと言う意味ではとっても良いと思います。実は私もまだみた事が無いので、一度行って見たいと思ってます。

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