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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
真田の郷編
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006 旅の準備

もし真田幸村が女だったら?という発想から、筆者の果てしない妄想をつづっていくif小説です。若くして織田家に人質に出された真田幸村ことおゆきが、真田忍軍を率いて、大活躍するお気楽エンターテインメント作品です。細かい事は気にせず真田の活躍をお楽しみ下さい。


京行きは決まったものの、すぐ旅立てるわけではない。


一つは滝川一益殿の紹介状の到着待ち、もう一つは献上品の選別とそもそもの旅の準備である。


旅の準備の方は、旅なれた忍軍の者達が粛々と手配してくれている。


京行きのメンバーも決まった。


まずは私(当たり前だが)。


もう一人は先の会合で名前の出ていた高梨内記の息女きり。


きりは、年頃も近いこともあって私とは幼馴染とも言える気心の知れた仲なので、非常にあり難い。


私と同じく、一応武芸と忍び働きのさわりぐらいは仕込まれているが、本格的な訓練は受けていないので、年頃の少女にしては多少腕っ節が強いというだけの普通の武家の娘である。


後のメンバーはほぼ忍軍が占める。


佐助を筆頭に、副隊長的なポジションに小助と十蔵が選ばれている。3人とも真田忍軍を背負って立つ若手で、それぞれが十数名の配下を率いて、付き従うが、正確な人数は私も知らない。


もちろん五十名近くがぞろぞろ街道沿いを練り歩く訳では無く、実際私やきりと行動を共にするのは小助と荷運人足に扮した十名程度らしい。


何にせよ。数十名の精鋭と言えば、ちょっとした戦が出来てしまう様な軍勢であるが、後の者は先行して情報収集や露払い、または影から我々を護衛しつつ臨機応変な対応に備えるのだそうだ。


実際十蔵は先発しており、行程のルートサーベイをしつつ、先に京に入り滞在中お世話になる予定の母の実家菊亭家に母の手紙と支度金という名の寄付金を届ける段取りになっている。


そういえば、もう一人?重要な旅の同行人がいた。


お福でという鷹である。


一人というか一羽である。


彼女(雌)は忍び働きを仕込まれた珍しい鷹なのだが、雛の頃からの私と付き合いで、お福という名も私が付けた事もあり、私にも非常に慣れている。雛の頃は、毛玉の塊で、フワフワでフクフクしていたのだが、今で精悍な成鳥になっている。


今回の信長公への献上品の中に鷹狩り用に鷹匠に仕込まれた彼女の兄弟が混じっており、それを心配したのか、果ては私を心配したのか、同行を主張したのだ。っと小助が言っていた・・。どうやって主張したのだろう?色々謎である。


鷹と言っても彼女は、兄弟姉妹の中でも特に頭が良く、飛びぬけて優秀だった為、伝書鳩などを良く使う真田の忍軍の中でも珍しい鷹の忍鳥として仕込まれている。


忍鷹は、伝言役は勿論、高高度からの斥候や見張り、果ては敵方の伝書鳩の駆逐などによる防諜など、極めて頼もしいパートナーなのだが、伝書鳩ほど簡単には育成できないのが難点である。


真田には忍鳥を育てる事を得意とする者がいるのだが、それでも数羽を確保するのがやっとという事だった。中には更に珍しい梟の忍鳥もいるらしいが、私は会った事が無い。


そんな感じで、同行メンバーも決まり、いよいよ出発を控えた前の日。兄が身内での壮行会を開いてくれた。


宴会には父、母、姉、兄、父の従兄弟の頼幸、親族ではないが気心の知れた重臣の高梨内記、その息女きりが参加した。


滝川一益殿の所に人質として出されているお祖母ちゃん、領地の矢沢郷で上杉に備えている父の叔父矢沢頼綱(頼幸殿の父上)、武田氏の旧領駿河に入った徳川の動向を探っている叔父(父の弟)の信尹叔父様は不参加であったが、結構な人数が集まってくれた。


私の事を一番心配していたのは何と言っても、母と姉のまつである。


「嫌ならやめてもいいのよ」


二人してこの期に及んでまだ抵抗の構えを見せている。


それも止む得ない事で、彼女らは武田の家臣時代、新府城で人質生活を送っており、特に甲州討伐に際する新府城からの脱出時はかなり恐ろしい体験をした為、少なからずその時の事がトラウマになっているのだ。


一方父はと言うとさっぱりしたものである。


「基本的に京での差配はお主の判断に任せるが、情報収集は佐助らに任せれば良い。お主は信長公を始め、その側近や重臣どもについて、その為人しっかりと見極めて来い。お主は儂に似て直感力が強い。人の本質をきっちり見極められるだろう。ただ、信長公をやる時は、まずは儂に伺いを立てろ」


等と突然とんでもない事を言い出した。信長公殺す前提?!私を猛獣か何かと勘違いしているのではないだろうか・・。一応な・・と付け加えはしたが、相変わらずな父である。


一方兄の方は、


「さすがに鉄砲という訳には行かないが・・」


と、懐刀と思しき包みと、ちょっと洒落た装飾の施された旅用の杖を私の方に差し出した。


有難う。と受け取ろうとすると。


ふと小刀を包みから取り出し、杖の先に仕込んであるらしいカラクリを操作し、カチリっと差し込んだ。


「短槍?!」


おお!と男どもが盛り上がった。


皆、戦争馬鹿すぎるだろう・・。と思いつつ兄からそれを受け取る。


「庄八郎自らが試した十分実戦に耐える業物だが・・・まぁ、これを使わなければならない様な所には出来るだけ首を突っ込むな・・」


と最後に妹思いの本音を漏らす当たりが実に兄らしい。


迂闊にもちょっとキュンとしてしまった。



こうして、身内だけの宴会は夜中まで盛り上がり、真田の郷にひと時の貴重な団欒が訪れたのである。



そして、私はその翌日真田の郷を元気に旅立った。


ついに旅立ちました。でもきっと京には中々つきません(多分)そして次回は一旦物語から離れ、真田の郷の面々を整理します(総集編的な?W)

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