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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
反撃前編
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048 摂津

丹羽さん暗殺の危機?!そんな中信忠とおゆきは摂津に向かう。


信忠さんは丹羽さんに護衛の件を話し、かなり強引に納得させた。


当初丹羽さんは余り良い顔をしなかった。幾ら信忠さんの肝いりとは言え、良く知らない者を傍に置くのだ。当然といえば当然の反応である。


其処で信忠さんは当初の段取り通り主水に相槌を打つ。即座に主水が動く。常人では捉えられ無い速度で刀を抜くと、次の瞬間には丹羽さんの後ろに回りこみ刀をその喉元に当てていた。


冷や汗を流している丹羽さんに信忠さんが「な!」と声を掛けたが、丹羽さんには何が「な!」なのか理解できなかったに違いない。


「戦場なら兎も角、普段の我々は、この手の者達に意外に弱いんだ。餅は餅屋、相手が忍びなら護衛は彼らに任せた方がいい。」


そう得意げに説明する信忠さんに丹羽さんはコクコクと頷くしかなかった。なんか段々忍びの扱いが上手くなっている様な気がする信忠さんであった。


我々は主水と青海に「くれぐれも頼む」と言い残して、早速堺を発った。



堺には主水と小助の部隊(青海はまだ手の者をもって居ない)を残し、小助には畿内周辺の情報収集を任せ、主水の隊には堺の軍勢内の防諜を担当させた。もちろん主水本人は丹羽さんの傍に控え警護を行っている。元々物静かで存在感を消せる男なので、傍に控えていても回りに溶け込んで全く目立つ事が無い。


逆に目立つのは青海である。流石に僧体は異様過ぎるので、武者姿になったのだが、何故か似合っていない。それに加え小山の様な男なので目立つ事この上ない。囮としてはむしろうってつけと言うのは十蔵の言である。青海が囮となって丹羽さんを守りつつ、主水が仕留めると言う最凶シフトである。


実は二人が戦っている姿は見た事無い私だが、なんか上手く行きそうな気がする。


私は当然の様に信忠さんに付き従う(なんせ近習ですから!)が、佐助は私の護衛、十蔵は信忠さんの護衛兼連絡係と言う形とした。私は信忠さんから当面離れる気は無いのだが、万が一離れ離れになってしまった時に備えてのシフトだ。


もちろん彼らの手勢が影に日向に周辺を固めているのは言うまでも無い。


一通り情報かく乱の仕事を追えた甚八は、相互の部隊間の連絡係に戻っている。必要な時は大体何処からか、ヒョッコリ現れる便利な奴である。ちなみにお福は私の肩に戻って来ていたので、緊急な時は仮に甚八を見当たらなくても連絡は取れる様に万全の体制を整えている。


ちなみに、紅は小助の商店で静養中だ。もともと鷹狩り用の鷹さんなので、忍鳥としては使えない。信長さんの便りを届けられたのは、本当にただの幸運なのだ。


我々以外では、信澄さんが騎兵二百騎を率いて同行している。信忠さんの直卒の扱いだ。信澄さんを連れて来たのは、幾つか理由があったのだが、とりあえず堺に置いて行くと、信孝さんがギャーギャー煩いからだ(笑)


丹羽さんとしても、幾ら真田の忍軍が周りを固めているとは言え、一兵も率いず信忠さんを行かせる訳には行かないので、当然の措置である。少数の騎兵(と言っても二百騎って中々戦力だが)にしたのは勿論移動速度を重視したからである。


所で信忠さんは信澄さんを全く疑ってい無い様だが、彼の経歴だけ見ると確かに信孝さんの主張も理解できない訳では無い。ただ、石山攻めなどで何度か一緒に戦った過去から、信頼に値すると考えている様だ。一度信頼したら疑う素振りさえ見せない所は信忠さんの美点の一つだと思う。二代目の甘さみたいに受け取る人もいるかも知れないが、おゆきセンサーもグリーンランプが点灯し続けているので、信忠さんの見る目は間違っていないと思う。



そして、我々は早々に池田さんが待つ摂津の花隈城に到着する。


池田恒興さんは城門から出て信忠さんを迎えた。既に戦支度は整っている様だが、其れもその筈で、本来は、秀吉さんの援軍に向かう信長さんに従軍する予定だったからだ。


「若様、いや上様ご無事で!」


信忠さんも子供の頃から良く知る仲なので、砕けた感じで応じた。


「ところで、信長様は本当に・・。脱出されたという噂も入って来ているのですが。」


凄い聞きにくそうに質問する。信長さんとは乳兄弟。あれ義兄弟だったかな?と言う近しい関係だからそりゃ気になるよね。でもそれ甚八が巻いたかく乱情報だよ!


「俺が掴んでいる限り、本能寺を無事脱出できたと言う情報は無い。遺体が見つかってい無いと言うのだけが唯一の希望だが・・。俺の脱出後これが届けられた。」


懐から、例の信長さんの書状と印を取り出して見せる信忠さん。恒興さんはそれを食い入る様に見た後、天を仰ぐ。泣いているのかもしれない。私もちょっと貰い泣きしそうだ。


「もはや、迷いはありません。我ら摂津勢は上様を奉じ必ずや明智を葬って見せます!」


恒興さんは目を赤くしながら、そう断言したが、ふと私に視線を移す。見慣れない奴が居るという譜代さんからは良く送られる視線だ。さあ来るぞ!


「この者は信州真田安房守の・・・(以下略)」


その後の私からのフォローを含めて、一通り説明を終えると城内に場所を移した。其処には既に高山右近さんと中川清秀さんが待ち構えて居り、挨拶を交わした後、信澄さんを含め四人での会談が始まった(勿論私達も自然に同席(笑))。


高山さんと中川さんは元々摂津の国人衆だが、今は織田軍に下り従っていると言う経歴の方で、二人は従兄弟同士らしい。恒興さんとの関係も良好の様に見え、そう言う意味では恒興さんは良く摂津を纏めていると言えるだろう。


「いよいよ旗揚げですか?堺の軍とは合流ですか?それとも分進合撃?」


かなりせっかちな性格らしい。流石信長さんの乳兄弟である。


「いや、さすがに堺と摂津の軍勢だけでは、明智を屠るには心許ない。長引かせたり、取り逃がしたりすると、近江や美濃、東国で要らぬ蠢動を起こす輩が出ないとも限らないからな。決めるなら一撃で決めたい。」


信忠さんは逸る恒興さんを宥める様に説明する。もちろん恒興さんも何処かの信孝さんの様に感情だけで逸ってるわけでは無いので、成程と一旦納得し、信忠さんの続きを待つ。


「俺はこれから、備中に行き、秀吉の軍を迎えに行く」


初めて話を聞く摂津の皆さんは、少し目を見張る。


「しかし秀吉殿は今毛利と対峙中では?」


今まで静かに話を聞いていた高山さんが言葉を発する。


皆が信忠さんに注目し、その答えを待った。


恒興さん登場です。歴史的にも秀吉さんと合流し、明智さんとの戦いを迎える事になりますが、このお話でも基本はそうなりそうですね。上手くすれば次回秀吉さんが登場します。登場したらいいなぁ(笑)

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