233 大坂城
きりの話が、何だかんだであまり日ノ本の動向と関係なく進んでいる裏で、大坂城への視察が行われた。引っ越しは年が明けて落ち着いてからという事だったが、とりあえず一回見に行こうという事になったのである。
私はまた女房衆に赤ちゃんズを預けて、信忠さんと一緒に視察へ向かった。
奥の院の主人(一応)として、色々確認しないとならないからだ。本当ですよ~。ただ見たいだけじゃないんですよ~。
本当は赤ちゃんズも連れて行こうとしたのだが、信忠さんから「やめとけ」と言われた。冬の時期だし、流感とか怖いので旅は避けた方がいいというのだ。
なる程確かにその通りだ。まぁ大坂ならゆっくり目で移動しても伏見桃山から一日半で往復できるからね。
そんな訳で久々に信忠さんとの旅路となったが、大坂はとんでもない事になっていた。
人!多っ!!
特に港の方はえらい賑わい様で、もはやカオスである。カオス!船も頻繁に出入りしているらしく、それの荷役やらなんやらで人がごった返しているのだ。
とりあえず、海軍総督府に顔を出して、滝川さんに挨拶に行ったのだが、留守だった。今回は新海軍が目的では無いのであらかじめ伝えて無かったのでしょうがない。留守番をしていた小西行長さんによると、兵庫港経由九州への新造艦のテスト航海に同乗しているらしい。
色々皆忙しいのね。
やはり留守番をしつつ、新米水兵の訓練をしていた雲海が、テスト航海を行っている艦とほぼ同型という艦を見せてくれた。
デカっ!
これまで知る巡行艦より遥かにデカい。鉄甲の大安宅船も大概デカかったが、おそらくそれをもしのぐ大きさだ。こんなの動くの?
「動きませんね。いや、航海は出来ますが、単艦ではとても戦えたもんじゃないかもですね。でもこれを、複数列をなして浮かべて、周辺に機動艇や突撃艇を配して守らせれば、結構有効なんじゃないかという事で、今滝川殿がそのテストもやっています。まぁ海上の要塞ってところですね。」
というのが雲海の意見だった。信忠さんが予算をバンバンつけるもんだから、滝川さんは好き放題やっている様だ(^^;A
まぁ、新造艦の開発やそれを使った戦術の研究も優先順位の高い仕事だから、まぁいいんだろうけどね。
さて、我々は港を後にして、大坂城に向かった。
大坂城デカっ!港からでもはっきり見える程の巨大さだ。
平地にあるのに、小山の様にそびえている。
以前説明した様に、大坂城は三重の堀で囲まれている。一番外側は大外堀と呼ばれ、その内側が外堀、内堀である。大外堀の内側に入ると武家屋敷が立ち並ぶ区画なので、さすがに喧騒は治まっている。まぁまだ家臣さん達も本格的には越してきてないしね。
しかし、とてもじゃないが馬なしでは移動が憂鬱になる程の大きさだ。
もし戦にでもなったら一体何人の兵が籠れるのだろう?そう信忠さんに聞いたら「まぁ十万だな。その気になれば、二十万でも三十万でも籠れるけど、そんなにどこに兵隊が居るんだろうな」と笑いながら言っていた。
単純にそれだけの兵数が城に入るというのでは無い。それだけの兵数が長期間籠れる程の兵糧その他の物資の備蓄が可能だという事だ。勿論まだそんなにはため込んでないだろうけどね。しかし、いったい誰と戦うつもりだろう(^^;A
「ハッタリだ。ハッタリ。兵糧の方は、万一の時は飢饉援助にも使えるからな。ため込めるだけため込むさ(笑)」
まぁそこまで考えているなら私がいう事は何もない。
それにしても、城の意匠は安土程ド派手でない。基本的に黒に金という色使いで、お世辞にも品がいいと言い難いが、男の子はこういう方が好きなのだろうか?
銀杏あたりに「可愛くなーい」等と言われそうだ(笑)
漸く内堀を超えて、天守閣や一の丸などのある区画に入る。基本平地にあるので、安土城の様に階段の昇り降りはそれほど無いのだが、建物がどれもデカいので移動にはそれなりの距離がある。
しかし、近づけば近づくほど、天守閣のデカさに驚かされる。そして、高い。果たしてお茶々さんは天守までたどり着けるだろうか(^^;A
本来なら、天下人の居城として、安土城に倣って「天守」ではなく「天主」とつけるところなのかもしれないが、「親父殿程は思いきれん」と信忠さんが渋ったので、とりあえず今は「天守」と呼ばれている。まぁあえて喧伝しなければ誰も気付かないと思うのでどっちでもいい気がする(笑)
とりあえず、一の丸によって、大坂所司代の松井友閑さんと、先行して大坂に入っていた丹羽さんと合流し、そのまま天守に向かった。
さすがに作った人が同じだけに、安土城に似ている。信忠さんがあまり細かい注文を出さなかったので、安土城の天守閣を踏襲しているのだそうだ。
という事で、天守閣に入るなり、巨大な吹き抜け構造になっている。
吹き抜けにする事で、天守閣自体の重量が軽くなり、これ程の巨大構造物を成立させているのだそうだ。それにしても七層ぶち抜きという恐ろしい建物だ。
落ちたら確実に死ぬ(笑)
その上は三層になっている。もちろん十層目が天守である。
内装は安土城と同じく朱塗りと金箔、狩野永徳さん筆と思われる、襖や屏風といった障壁画が彩り、かなりド派手。
そして見晴らしはすごい。大坂の町並みは勿論河内平野、摂津や四国、頑張れば伏見桃山城も見えそうだ。
これも、きっとハッタリなんでしょうね。
まずはお茶々さんが途中で休む事無くこの天守まで上がれる様鍛えるところから始めようと、心に誓った私であった(笑)
序盤から作っていた、大坂城がやっとできましたよ。結構かかったのはお城の建築を後回しにしていたからですね。史実に匹敵するとんでもない巨城として出来上がりましたが、はてさてこの城が、実戦を経験することがあるでしょうか?史実の江戸城天守閣の様に失火して終わりとか十分ありそうですね(^^;A失火と言えば、この木造吹き抜けの構造、とってもヤバいです。物語中にも書かれたように自重軽減に役立つかと思いますが、万が一火が出ると、吹き抜け部分から、一挙に火が昇りあがって、一瞬で火だるまになると思われます。某安土城建築映画でも指摘されていましたが、このお話では不幸にも誰も気づいてないようです。その内やらかしそうで怖いです。安土城天主閣も謎の失火で燃えていますしね。これが原因な気がします(;^_^A




