序章
「よもやこの門をこうしてキミと笑顔でくぐる日が来ようとは、露ほども思っていなかったよーー」
例年より少し早い満開の桜をボンヤリと眺めていた私の視界を遮りながら、彼女はまぶし過ぎるほどの笑みを浮かべてこう言ったのだった。
思えばこの3年と少しは長いようで短かった。私が彼女と出会い、笑い、泣き、ともにこの学び舎で過ごした3年間。過ごしている間はなんとも思わずにいたのに、こうしてじっくり振り返ると愛おしく、かけがえのないものとして心に染み渡ってくる日々。
あのとき、まさに私にとって人生のどん底とも思えたあの日、彼女が手を差し伸べてくれなかったら私は今頃どこで何をしているのだろう、などと考えるのは野暮というものだし、第一歴史にIfは存在しない。がしかし、そう思えるほどに、彼女との出会いは私にとっての光となるものであった……。
「なにボーッとしてるの?ほら、いくよ」
いけないいけない。ただでさえ動きが鈍いのに、こう頭の中であれこれしだすと手の動きが緩んでしまう。私は「はいはい」と返事を返し、影ボウシひとつ分離れた彼女に追いつくため、車輪をぎゅっと握り直し、力を込めた。
初投稿です。拙いながらも頑張ってみますので、どうぞよろしくお願いいたします。