割と小動物には好かれる方です
保護した、何もおかしいことはない。
第一異世界人との遭遇である。パット見すごくかわいい女の子、黒と銀の混じったふわふわした髪の中からいぬ耳がモフモフ自己主張している。さっきまで必死で走っていたからだろう、汗と汚れ、転んだりしたのだろうか、スカートから覗く膝小僧には擦りむいたあとも見える。
「マスター、何処を見ているのでしょうかー?」
「!?いや見てない!違う!そのほら、怪我とかしてないかとか生のケモ耳だとかスカートがとか違う、心配してるのもある、ちゃんと!」
だんだんと冷たくなっていくキーの視線に動揺しながらも、無事かどうかは心配している。目の前で女の子がはぁはぁしているんだからそりゃあちょっと、うん。ごめんなさい。
やりとりを聞いていたのかいないのか、落ち着いてきたのかいぬ耳女の子が恐る恐ると言った様子で聞いてくる。
「…あの、どうして、ここは?」
「あ、大丈夫だ。怪しいものじゃあない。とりあえず、ほら、お茶飲んで落ち着いて」
「どう考えても怪しい人ですよね、セリフも行動も」
後ろで何かいっている小さい何かは放っておいて、創造したコンビニペットボトルのお茶をキャップを開けて渡す。一瞬戸惑ったようだが、ごくごくと飲み干す。どれだけ走っていたのか、喉も乾くだろう。
「はぁー。あ、ありがとうございます。すごく美味しい飲み物です」
深々と頭を下げるいぬ耳ちゃん、いぬ耳がこんにちはしている。
「変わった水筒ですね、すごく美味しかったですし高いものなのでは。あ、その、ごめんなさい。全部飲んでしまって、私」
多感な年頃なのだろうか、コロコロと変わる表情は見ていて飽きないが、あまり恐縮させてしまっても悪いだろう。
「あぁほら、大丈夫だいじょうぶ、よっと。
ほら、安もんだしいくらでもつくれるから、気にしないで。ほら遠慮しないで、もう一本いる?」
手を振りながらお茶を再度創造する。ついでにチョコレート味のカロリーパワーメイトバーも。キャップや包装紙は食べやすいようにあけてあげる、紳士な俺である。
おずおずと手を伸ばしてくるいぬみみっこ。可愛い。
「とりあえず食べて、落ち着いたらおうちまで送るから。あ、名乗ってなかったな。えーっとこう言うのって名字ない方が良いんだっけ?
文化が解らんのがあれだがまぁ良いか。
俺はヒロシ、若しくはお兄さんとでも呼んでくれな」
「あ、助けていただいて、このように良くしてくれてありがとうございます!私はコロナです、よろしくお願いします、お兄さん」
素直な良い子のようである、お兄さん心配になるくらいの疑わなさである。もしも俺が悪いやつだったらどうするんだ、でも嬉しい。
甘い栄養食品を実に美味しそうに食べるコロナを生暖かく見守りながら、しばしゆっくりとした時間を過ごすのであった。