出来ることを確認しよう
マイカーが召喚された。
異世界生活一日目の朝は、一杯のコーヒーから始まる。
とりあえず、その日はシートを倒して置いていた毛布を使って寝ることにした。異世界に来て初日は車中泊となった。後部座席はキーが占領していた、手の平サイズなのに。荷物のなかにあった布で目隠しを作り、自分のスペースを宣言していた。面倒だったので、特に反抗もせずに寝た。
ゲームも漫画もラノベとかもそれなりに好きだから、こういうパターンでの完全な野宿とかいきなり奴隷コースとかではないため、まだましな方なのかなと自分を騙して、とりあえず寝た。
起きた、我が愛車の寝心地はそこそこ良い方である。それでも目を覚ましてシラナイテンジョウダとかボケようにも寝返りをうつスペースは流石に無い。
知らない土地なので、食料をどうするか、コミュニケーションをとれる何かは居るのか、これからどうやっていくか、取り急ぎ考えたりしなければならないことは多い。周りは見渡す限り荒野。果物は無いだろうし、動物もいるのか不明。
「ご飯についてですが、昨日食べたお菓子とかは魔力で出すことが出来ます」
どや顔でキーが起き抜けに言ってきた。
この世界のルールとして、創造、召喚したものはある程度自動で作り主、呼び主に登録され、再度コストを払うことで登録時点に回帰するらしい。
更に俺の場合、余分にコストを払うことで強化や修復といったオプションをつけれるらしく。
「昨日の時点では空だった缶コーヒーも、こうして新品となっていると」
朝は一杯のコーヒーから始まる。横ではまたもお菓子を食われている。
「美味しいんですけど、おんなじ味ばっかりだと飽きちゃいそうですねー」
こめかみをグリグリしておいた。
「ともかくこれで、食料と水分は最低限確保としましょう。また、マスターがいる限りこの車は動けます。魔物に体当たりされようがパンクしようが、魔力があれば即座に回復出来ますから」
朝のグリグリ以降キーの態度が少し柔らかくなった。マスターと呼ばれるようになり、こちらを主として行動するようである。
うっかりで消滅しそうになったばかりだし、半分は俺の意識が材料になっているようだし、間違いなくかわいい部類に入っているし、マスターと呼ばれることに嫌な感じは無い。
「今後マスターが成長されてスキルや色々な熟練度とかが高まれば、私の権能も復活するかもですし。今は手の平サイズですが、将来性はあるってものですよー」
こいつはきちんとしたしゃべり方をすることも出来るが、駄女神モードの時は語尾が延びるようである。
「まぁ期待はしないでおくけど。とりあえずばっかりだけど、ここにいてもよくわからんことばかりだしな。メンテも要らずガソリンも心配しないですむみたいだし、とりあえずどっかしら動いてみることにするか。キーの知識もあてにならないようだし、出来ることもちょいちょい確認して、出来れば菓子以外のものを食べれるようになるのが当面の目標だな」
こうして不安だらけの異世界生活がスタートした。出来ればイージーモードでありますように。