表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はたらくのりもの  作者: 楪葉 悠乃(ゆずりは ゆの)
11/30

美味しいは正義

異世界で初めてのお宅訪問、こう言うときは引っ越しそばを持っていくということが人間関係を円滑にするらしい。古きよき習慣は異世界で通用するのか、車の中にはお菓子増量ちゅう。キーがお留守番だから、ちょっと不憫に思ったヒロシなのであった。

「うちのコロナがお世話になりました」


村で一番大きな建物に案内され、開口一番がこうだった。コロナの育ての親でこの村の長であるカルナさん、見た目は二十代後半の綺麗な女性。ただ、うまくは言えないが、経験を得た者のオーラと言うか威厳のようなものを感じる。


「いえその、そんな大したことをしたつもりはありません、顔をあげてください」


一方流されやすく都合の良い男でお馴染みの俺27才、会社勤めのドライバー勤務。この違いが人を従え導く存在なのか、人に使われついていくだけの存在なのかの違いなのだろうか。


「本来ならば村の者を救っていただいたお礼をしたいところなのですが、たくわえもそうなくて恐らく今年も冬を越えるのもやっとの状態でして」


「いやまぁ、本当に気にしないでください、お礼がほしくてやった訳じゃないです。多分なんかそう、運命のお導きってやつですかね?」


心から謝罪と感謝をされていると伝わるほどの熱を受け、なんとなくドライブしてたらゴブリン引き殺しちゃいましたくらいのノリでやってしまったことに、ここまでの感謝をされてしまっていることに対する罪悪感すら芽生えつつあった。

その罪から目をそらさんと、持っていたものを差し出す。


「あ、これ良かったら。コロナが集めてた薬草はもちろんですが、あー、お近づきの印に?」


差し出されたコンビニ袋を受け取ったものの、中身がよくわからないのか当惑するカルナさん。


「あ、すみません。えーっと、俺の世界の食料なんですけど」


ペットボトルのキャップを開けて、お菓子の包装紙をとりひらく。一週間分のコンビニお菓子、全部開けた。パーティー開けである。


職業は会社員、職種は酒屋の配送業、いわゆるトラックの運ちゃんである。朝早くから夜遅くまで、居酒屋やバー、個人営業のスーパー等に飲料その他を運んで回るお仕事なので、一日の大半を運転している。配達先から次のところまで距離のある場合、おにぎりや簡単に摘まめるものを食べてカロリーを補給する。途中でレストランや食堂なんかに寄れるようなお昼休憩のある勤め先なら良かったのだろうが、人手不足によりブラックすれすれどころかアウトな職場環境では、運転している時間が休憩時間なのであった。


さておき、そのような環境における一週間分のコンビニ食料なので、それなりの分量である。村長やコロナを含めて、七人の前に様々なお菓子が広げられることとなった。


「コロナはこのチョコバーをさっき食べたんだけど、どうだった?」


「すごく美味しかったです!」


水を向けた瞬間の即答だった。


「うん、その、怪しいかもしれないですがコロナのお墨付きも貰いました。良かったら皆さんで召し上がってください。」


村人の視線が村長に集まる。コロナの勢いに驚きながらも、言われたチョコバーを手に取り、恐る恐る口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ