外国どころか異世界だけどね
転移したときは週末の仕事終わり、飲食業界は土日祝日が忙しい。
来週一週間分の用意をして、外食に出掛けたのでした。
転移初日、一週間分のお菓子や栄養食品をむさぼり食う俺のナビ様。
お腹に物が入り回復もしたのか、元気になったいぬみみっこ。コロナを家に送るため、車を走らせる。
ある程度の方角を聞き、助手席に座らせ、シートベルトをつけさせ、車が動いたときはかなり驚いていたものの、割とすぐに慣れたようだ。
「これってすごいですね!お兄さんの魔法なんですか?」
「んー、まぁそんなものだな。ところでコロナ?その、こう言う魔法は珍しいものなのかな。俺はあんまり基準がわからん。さっきお茶を出したときもえらいびっくりしていただろ?」
「私も他所の村や町に出たことがないからそんなに詳しくは解りませんが、村で食べ物を作れるのは村長くらいです。私は火を呼び出すことが少しできるくらいですし、ここまですごい魔法は初めて見ました」
コロナの村は50人ちょいの小さな村だそうで、魔法が使えるのはその半分くらい。
他の村との交流はほとんどないらしい。閉鎖的とかではなく、単純に、隣村までの距離が半端なく遠いのが問題だそうで、大人が馬に乗って移動優先で駆けて二週間以上かかるのだそうだ。しかも魔物が出る世界だから、そりゃ女子供は気軽に旅行と行くわけにもいかんよな。
軽い雑談をしながら女の子とドライブである。助手席に可愛い女の子を乗せて、愛車で、異世界をドライブである。後部座席のキーこと俺のナビ様はさっきからずーっとジト目で睨みを聞かせている。ミニサイズとは言え、あれも美少女なのになんだろう、なにか気に入らないのか無言である。とりあえず理由もわからないのでそっとしておこうと思う。
途中で落とした薬草入りの籠を拾い、森を迂回して、コロナの村に着いた。
「これはずいぶんと歓迎されてるのかね」
「私も最初に見たときは怖かったです、すごい早さで襲ってくる金属の魔物、って。私お兄さんのこと説明してきます、すみません!」
村の門には武器を構えたいわゆる戦士っぽいのが5人ほど、こちらを睨み付け今にも飛びかからんと待ち構えていた。そりゃそうだよね、見晴らし良いからすぐに発見されただろうし、エンジン音を威嚇のように捉えられたらどう考えても見たことない怪物だよなー。
助手席から飛び出して門へ走るコロナ。説明をしている間も三人ほどはこちらに警戒を続けている。五分ほどして終わったのかこちらに駆け寄るコロナ。ワンコ可愛い。
紹介してくれるとのことで車を降りて向かうことにする。薬草の籠とコンビニの袋を持って、村に入った。初の外国だなーとか我ながら呑気なことを考えながら歩く。
車のなかにいれば、魔力消費でストックが回復します。キーに食べられた分も、魔力で解決。