オープニングその1
好きな乗り物を創造出来ます。自動車、バイク、バスやトラック、船や飛行機。
ル○バはのりものですよね、はい、のりものです。近所のメイドさんがお掃除ロボットに乗ってるっていうアニメ見たことあるし、あれはのりものです。
井上 洋は困惑していた。
見たことの無い景色にいきなり飛ばされた、端的に表現するとそういうことになる。
「…呑みすぎたっけ?」
独り言を呟き辺りを見渡すが、答えは無いようだった。記憶が正しいならば、つい先頃まで行き付けの食堂で月1の少しばかり贅沢として、高めのS定食とちょっとしたアルコールを楽しんでいたはずだ。それが気付いたら、それこそまばたきの間に、座っていた椅子と、肘をついていたテーブルと、食べかけの定食と共に宇宙空間に放り投げ出されていたのであった。
周囲は漆黒が広がり、足元には青い惑星。テレビで見た地球の映像とそっくりである。
「宇宙に居るのに浮いてない、やっぱり飲み過ぎて変な夢を見てるとこなのかな、明晰無ってやつか」
「残念ですがー、夢ではありません。サービスとしてほっぺたをつねって差し上げましょーう」
瞬間激痛、頬肉が千切れるんじゃないかと思えるほどの痛みが直接脳に響いた。可愛らしい声とともに、虚空から細い腕が生えて、その白魚のような指先が自分の頬をねじりあげていた。
「っ!痛い!ストップ!マジ無理まじいいいたああああっ!」
「ねー、夢じゃないでしょう?更にサービスとして痛いのを飛ばしてあげましょう。ほーら痛いの飛んでけってねー」
赤く青く黒く腫れ上がっていた頬肉が通常の肌色に戻る。
「なになになんなの!?訳がわからない場所にラチられて暴行を受けてる!可愛い声なのにえらい凶悪な何かが居るけど、居るっぽいけど、さっきちらっと腕だけ見えたけど、何これホラー!これ悪酔いで悪夢ってレベルじゃ無いよね!あと何これ、何で一瞬光ったの!?魔法的な!?ちょっとどうなってブベッ!」
「やかましいですー、今度は本当にねじりもぎ取りますよー?」
両頬に圧がかかる、あげかけた悲鳴を飲みこむ。パニックになり叫んでいたが、またも虚空から出てきた謎の手により遮られる。アイアンクローがお口にチャックである、ピンチなのはほっぺただけれども。
「説明を始めますのでー、手を離しますけど急に大声をあげたりしないでくださいねー」
解放された頬を撫でながら声が聞こえる方を向くと、そこには女の子がいた。