笑わない少女と勇者と再会と……
その再会は唐突であった……いや必然だったのだろう。
愚かにも罪の重さに耐えきれず、逃げ出した私への断罪の剣がすぐそこまで迫っていた。
ギルドの一階まで降りた私達は、今日の所は解散にしようと私が皆に声を掛けようとした時、入口から騒がしく人が入って来たのに気付いた。
ギルドの大きな扉を開け、入って来たのは少女だった。
奇妙なのは一人で入って来たのに、誰かと会話しているようなのだ。
……独り言ではない。少女と思われる声と金属質な少々甲高いが男性と思われる声がやり取りしているのが聞こえる。
「もーここに来るまでにひどい目にあったわよ!」
これは少女の声だ。 それに答えてどこからともなく声がする。
『ギャハハ! まあそういうなって。結構レベルも上がってよかったじゃねえか。』
なんとも下品な感じの声だがその姿は見えない. 建物の外にいるのだろうか?
「とりあえず探し人の依頼をここでしま……」
そこでその少女と目が合った。
彼女は……私の記憶の中の彼女とは若干の差異があった。
栗色の髪は金髪に、長かった髪はショートに切りそろえられていた。
「リティ……シャ?」
呆然とその名を呟くと、リティシャは大きく見開いた目でこちらを見つめること数秒、大声で叫ぶ。
「見つけた!? マキナ!!」
私に近づいてくるリティシャ。
ーーー 頭が痛い ーーー
ーーー 逃げなきゃ ---
内なる声に促されるまま私は転移を……
「ダメ! 逃がさないわよ!」
リティシャが一足飛びで近づくと抱き着いてきた。
イヤッ!
半ば狂乱状態になりながら、彼女を振りほどこうとする
しかし、頭痛のためか振りほどけない。 ますます彼女の拘束が強くなる。
「逃げないでよマキナ…… やっと会えたのに。」
その優し気な声に私は身体の力が抜け彼女に身を預けてしまった。
「なんで? リティシャ……」
私がそう呟くと、リティシャは少し拘束を緩めて私の背中をさするようにする。
「マキナ、あんたの罪は私が許すよ。 私にそんな資格はないけれど、そんな事は関係ない」
その言葉に知らず涙があふれ出す。
見ればリティシャも泣いていた。
ギルドの中二人の少女が抱き合って泣いている光景はさぞ不可思議なものだったろう。
「えーと…… 何事?」
スバルの呆然とした声だけが辺りに響いた。
『感動の再会のとこワリィんだが、俺様の事忘れてないか?』
リティシャの背中から聞こえる懐かしい声に目を向けた。
ああ……そうだった。彼は。
「久しぶりねカリヴァーン。」
そう言って彼女の背中に背負った剣に向けて声を掛けた。
『やれやれ、難儀な旅だったんだぜ?』
心なしかカリヴァーンの声も優し気に聞こえる。
「えーとお取込みのとこ悪いんだけど……場所変えない?」
恐る恐るといった声でスバルがそう提案してきた。
周りを見るとかなりの注目を集めていた。
「……そうね場所を変えましょうか」
そう言って、私は皆を先導し宿に向かう。
幾重にも張っていた暗示は殆ど剥がれ落ちていた。
私の罪が追って来たのだ。 愚かにも忘れようとあがいた私をあざ笑う様に……