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笑わない少女と勇者と決意と……

6月22日(水)の投稿となります。

執務室の中はさっきとは違った意味で騒然としている。


伝説にある勇者ブレイバーが今、目の前にいるのだ。

書類整理などをしていたギルド職員などは、興奮した様子で周りの職員達と話をしている。

ベンソンは一度大きく咳払いをして周りを鎮めるとスバルに話しかける。


「本当に、勇者ブレイバーなのだな?」

スバルはそれに頷くことで答えた。


アルベルはスバルの肩に手を置きギルドに帰り着いて初めて笑顔を見せた。


「暗い話ばっかりだったがようやく明るい話が出たぜ!」

「魔王を倒した勇者が再び現れた。 なら今回もどうにかなるかもしれん」


未曽有の事態で頭がマヒでもしたのだろう。 魔王を倒せる保証などどこにもないのにも関わらず、この場の空気は見事に弛緩していた。

すでに勝ったつもりなのか。


……そして、魔王を倒したのは勇者ブレイバーではなく、その後に生まれた人造勇者イミテブレイバーだということを普通の人間は知らないのだ。

それは後に復活した女神信仰が関係している。


アル=レギルス文明が滅びた後、細々と残っていた女神信仰は文明崩壊後に急速に力を付けた。

それが五大信仰の最大勢力である、ル・シャラ教である。

彼らは女神の威信を取り戻すために歴史を改ざんした。

神話時代《E2O》に、女神の力を受けた勇者ブレイバーが魔王を倒したと。

もちろん真実は違う。 女神が出来たのは魔王を封印する事だけで、勇者ブレイバーは倒すことは出来なかったのだ。


その後、アル=レギルス文明において復活した魔王を人造勇者イミテブレイバー達が滅ぼしたのだ。


とはいえ、勇者ブレイバーが魔王を倒せないとは私は思わない。

それだけの力はあるのだ。勇者ブレイバーには。

魔王を倒せなかった理由があったと思う根拠があるが、それは兎も角。


私はこのバカ騒ぎに付き合うつもりはない。

踵を返し外へ出ようと扉に手を掛ける。

と、そこに。


「待ってマキナ!」


ドアノブに手を当てた状態の私にスバルから声が掛かった。

無視してもよかったのだが立ち止まってしまった。

「……なに?」


鋭く睨みつけた私に一瞬怯んだようだが、顔を引き締めると話し出した。


「マキナも出来れば協力してほしいんだ。 君も凄い力を持っているはずだ」


私はスバルの言葉に考え込む。


はっきり言ってしまえば、この世界がどうなろうと知ったことではない。

しかし、魔王が復活してしまえば生きにくくなることは確かだろう。


……なら協力するか?

今だ魔王が復活してないならこの戦力でもやりようはある。

よしんば甦ったとしても手がないこともない。

問題は、何時目覚めるかだが……



「スバル君、たしかにマキナ君は優れた冒険者だとは思うが」

ベンソンはスバルの意見に否定的のようだ。 まあそれはそうだろう。

所詮私はアイアンランクでしかないのだから。


スバルの真似をするみたいだけど。


私は深く、深くため息をつくとステータスを可視化して皆に見せる。


全員が息を飲む。 スバルですらだ。


「こ、これはレベル999? え?」

「こいつは……」


ベンソンとアルベルが呆けたような表情をみせる。


「イミテブレイバーって、なに?」

神話時代《E2O》にはなかったであろう職にスバルは目を見張る。

僕よりよっぽどチート、などとブツブツ呟いていたが。


人造勇者イミテブレイバー、話には聞いたことがあるな」

ベンソンは何事か思案しているようだが暫くして一つ手を打つと話し出した。


「よし! レシュトーラナ王国にある冒険者ギルドへ連絡を入れる。 そこで君達はランクアップしてもらう。たぶん白銀プラチナランクにはなるはずだ。 そうすればギルドからの援助も期待できる」

「おおー!」


スバルはなにやら嬉しそうな声を上げる。

まったくお気楽なものね。


とりあえず当面の目的はできたようね。

半ば勢いで決めてしまったけれど、やるからには全力を尽くしましょう。

……死なない為の全力をね。


「マキナこれからもよろしくね」


……この善人気取りの勇者クソッタレの顔に拳を叩き込みたくなったのは秘密だ。







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