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笑わない少女と勇者と集落……

6月15日(水)の投稿になります。

「……豚亜人オークの動きはどうなってる?」


「一番近くにいた20匹のオークは50ほどの集団の方に戻っていったみたいだ」

私の問いかけに、スバルはサーチを掛けながら答えた。


「それが本当ならなんとか撒けたようだな」

アルベル達はほっと息を吐いて緊張を解いたようだ。


「で、なにがあったの?」


「ああ、俺達は豚亜人オーク討伐に来たんだが、なかなか見つからなくてな。 それでもうちょっと奥まで進んでみようってことになったんだが」

街へと戻る道すがら、アルベルから聞き出したことは。



森の奥まで分け入り、ようやく豚亜人オークを見つけた。

最初は5匹ほどの集団で、これは問題なく倒せたらしい。

5匹ではキリが悪いということで最低もう1匹は倒そうとさらに探索を続けた。


討伐依頼は3匹で依頼達成だから、もう1匹倒して2件達成を狙うのは考え方としてはおかしなとこはないわね。


しかし問題が発生した。

森のさらに奥、そこに豚亜人オークの集落を発見したのだ。


魔物モンスターの巣、または集落は発見次第ギルドに報告する義務がある。

もちろんアルベル達もその例にもれず報告のために詳しく調べることにした。


斥候スカウトの、ゼオと言った、が近くまで忍び寄りその規模などを調べようとした時、集落の周りにあった罠に掛かった(・・・・・・)のだという。

その罠で足を負傷した所で集落から出て来た豚亜人オークの集団に襲われた。

アルベル達はゼオを回収し、怪我人を抱えての戦闘は不利と判断して逃げ出した。


その追手は最終的に20匹くらいの数となったが、なんとか撒いて私達に会った。


この話の中でおかしな点があるのだけれど……

私はチラリとアルベルを見やる。

アルベルも、私が何が言いたいかわかったようで。


「あー言いたい事は分かる。 俺も他人から聞いたら一笑に付すかもしれんが……」


「俺が掛かった罠は、カラクリ式の罠だったんだ」

ゼオが悔しそうにそう言う。

斥候スカウトである自分が罠に掛かった事が悔しいのだろう。 しかし……


「はー、オークも罠とか使うんだなあ」

「そんな訳ないでしょ」

頓珍漢とんちんかんな事を言うスバルの言葉を私はぶった切る。


アルベル達も頷き。

「ああ、ありえねえ。 豚亜人オークが、と言うか魔物モンスターが罠を、自然の物を利用したんならともかく、カラクリ仕掛けの罠なんて使わねえ」

「じゃあ、その罠は人間が?」

そうスバルが問いかけるとアルベルは少し悩んだ後、否定した。


「いやその線も考えたが、あの集落の規模といい、統率された動きといい……」


「支配種が現れた」

アルベルの言葉を継いでやる。 アルベルもその意見に賛成のようで否定しなかった。


「ああ、あの規模なら最低でも豚亜人司令官オークコマンダークラスは確実「あ、いたオークキング」……なん、だと!?」


その話を聞いた後、サーチで集落の辺りを調べていたスバルが声を上げた。

豚亜人王オークキングの名に4人は顔を引きつらせる。


「おい小僧! 本当か? もし冗談だったら……」

盾職タンカーの男、ランセルクと名乗った。はスバルに詰め寄る。


「本当ですって! 証明しろって言われても困るけど」

強面の大男に詰め寄られてスバルはタジタジになっていた。


「おいゼオ、足はもういいんだな? なら速度を上げるぞ!」

もし豚亜人王オークキングの事が本当なら一大事だろう。



豚亜人王オークキング。 本来はゴールドランク以上がレイドパーティーを組んで(レイドパーティーとは、6人パーティーが4組以上組んだ物)討伐に向かう物だ。


支配種、 豚亜人王オークキングは強さもさることながら、その統率力によって豚亜人オーク達をまとめ上げ、さらにその知性すら引き上げる物もいるらしい。

豚亜人王オークキングに率いられた集団は一国の軍にも相当する。


その後は一言も発することなく、街へたどり着いた。








「大問題だ!!」


私達がギルドへと戻りそのまま通された一室、この街の冒険者ギルドを取り纏めるギルド長の執務室。


そこにアルベルの報告を聞いていたギルド長、イシュカ・ベンソンが椅子を蹴倒しながら叫ぶ。


およそ、荒くれ揃いの冒険者を纏める長。というよりは領主の側で文官をしている方が似合う。

そんな感じの神経質そうな痩せた男だった。


ベンソンは大声を出し慣れてないのか、せき込みながら蹴倒した椅子を元に戻し座りなおす。


「げほっ それは本当の事なのかね? 豚亜人王オークキングが出たなどと」

「キングの確証はねえ。 だがかなりの規模の集落はあったぜ」


アルベルの言葉に、しばし考え込んでいたベンソンだったが俯かせていた顔を上げると側にいた秘書らしい女性に命令した。


「ただちにアイアン以上の冒険者を招集しろ!」

普段とは違うだろうギルド長の鬼気迫る様子に、秘書の女性は慌てて執務室から飛び出した。


「アルベル、お前も勿論参加してもらうぞ?」


「ああ分かってる。 まずはキングの事が正しいか偵察部隊を編成するんだな?」


「勿論だ。 情報は多い方がいい」

そして私に顔を向けベンソンは言った。


「マキナくんと言ったか。 きみも参加してもらいたい。 それとそこの、スバルくんだったかな? 君は青銅ブロンズだが参加して欲しい。 聞けばかなりの索敵能力があるそうだね?」


「はい、わかりました」

スバルは迷う事なくそう返事をした。


「よろしい、緊急時特例により君は今日からアイアンランクとする」


集合は1時間後と言われ、私達は執務室から退室した。


スバルはと見れば、ヨシ! などと嬉しそうにしている。



ヤレヤレ……



私は面倒な事態に肩をすくめるのだった。



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