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笑わない少女と勇者と信頼……

6月14日(火)の投稿となります。

次の日スバルは、少なくとも表面上は昨日の事を引きずってないように見えた。


「おはようマキナ」

ぎこちなさの取れた笑顔で朝の挨拶をしてくる。

「おはよう」

私も挨拶をし返して朝食を取りに一階の食堂へ。


朝食時、昨日のようにスバルが色々話を振り、私がそれに答えるといった感じで進む。

昨日のことは振っ切れたのだろうか?


それとも無理をしている?


……それとも昨日のは私を油断させる演技?


それはないか……


疑心暗鬼にとらわれ過ぎているな。


気持ちを切り替えよう。


思い悩み過ぎてもどうにもならないのだ。 最悪敵対しなければどうでもいいのだ。そう思おう。






さて、再びギルドで不機嫌そうに仕事をしているデスデモーナに依頼を処理してもらう。


豚亜人オークの討伐依頼、あと5件でランクアップ」

デスデモーナがスバルにそう言っていた。

……珍しいわね。 めんどくさがりの、必要最低限の事しか言わない彼女があんな事言うなんて。


彼女に礼を言ってカウンターから離れたスバルにそれとなく尋ねてみた。

「うーん。 特に何かしたわけじゃないけどね。 ただなんか他人のような気がしないというか」


要領を得ない答えだったが、これ以上は分からないようだし重要な事でもなし、気にしない事にする。



豚亜人オークの討伐依頼は、3匹討伐で一件達成となる。

とはいえ、毎回同じ数の討伐という訳ではないし、依頼料も状況によって変わる。

今回は討伐数が少なく、また依頼料も普段より少な目である。


これは、豚亜人オークの数が現在少ない事を意味している。


先だって倒した食人鬼用心棒(オーガバウンサー)のせいであろうか。

なら食人鬼用心棒(オーガバウンサー)を倒した今、また豚亜人オークが増える可能性があるわね。

逃げていた豚亜人オークの動向を調べてギルドに提出すれば、結構な功績ポイントが貰えるだろう。


今回はもっと森の奥まで足をの延ばしてみるべきか?


私の索敵スキルでは魔物モンスターの種類までは分からないので、スバルに頼る事になるが。


「よしそれでいこう! 名誉挽回だ!」


……それでまた子供の魔物に手だし出来なくなるの? そんな言葉が口に出そうになるがなんとか飲み込んだ。


調子が狂う。

これでは足を引っ張るのは私の方になりそうだ。

軽く頭を振り意識を戻す。


豚亜人オークは見つけ次第倒す。 調査はそれからね」

「りょーかい!」

スバルは、よし! と気合いを入れ先頭に立つ。

まるで私を守るかのように。


頼りになるのかならないのか判断に苦しむ人ね……




スバルのサーチを使いつつ豚亜人オークを片づけていると、前を歩いていたスバルが立ち止まる。


私の索敵でも反応がある。 たぶんこの反応に気付いて止まったのだろう。


「マキナ。 冒険者らしい反応が4つに、豚亜人オークの反応が20だ。 さらにもう少しいった所に50ほどの反応がある」


その50のほうは私の索敵範囲から外れていたようね。

「冒険者はどんな感じなの?」


「ゆっくりとその20の豚亜人オークの方から離れているね」


ふむ…… 


「このままだとその冒険者達と接触するけど、どうする?」

「そうね。 では合流して情報を得ましょうか」

「おk!…… じゃないわかった」

 

とりあえず、この場でこちらに来る冒険者を待つことに決め、念のため武器を構えておくように忠告する。

嫌がるかと思ったが素直に応じたスバルに肩透かしを食らう。


「PKは怖いからね」

と呟くスバル。


一応敵意のない事を示すため武器は地面に向けて降ろしておく。

そのうちその冒険者達が姿を見せる。


途中で向こうもこちらに気付いたようだが、そのままこちらにやってきた。

その冒険者は……


「おう、マキナの嬢ちゃんか」

そう言って手を上げて姿を見せたのは、スタッドの街の冒険者達の顔役でもあるシルバーランク冒険者のアルベルとそのパーティーだった。


「アルベル、あなただったの」


アルベル、赤茶けたボサボサの頭に何時もニヤけた表情の軽戦士フェンサーだ。

年齢は見た目でいえば30も後半といった所か?

「なあオッサン、後ろのヤツ、ケガしてるんでは?」

スバルがアルベルの後ろのパーティーメンバーを見てそう尋ねた。


「だれがオッサンだ! まだギリ20代だ。お兄さんと呼びな!」


……20代らしい。 


それはともかく、アルベルのパーティーメンバーであろう斥候(スカウト)らしき男が左脚を庇って歩いていてひどく痛そうにしている。

そのズボンは傷口が見えるほど大きく切り裂かれている。


「ダンナ! そんなことより早く逃げないと!! お前らもここは危ないぞ!?」


ケガをした男を庇って肩を貸している男、大きな盾を背中に背負った盾職タンカーが焦ったように、それでも小声で叫ぶという器用な真似で注意を呼び掛けてくる。


「そうだ、お嬢さん方。 ここは危険だ」

最期の一人、魔法使い(スペルキャスター)の男がそれに追従する。


「そうだな。 嬢ちゃん。まだ狩りの途中かもしれんが付いてきな。ここはあぶねえ」


「それはこの先にある豚亜人オークの集落に関係してる?」


そうスバルが言うと、アルベルが感心したような顔をする。


「ほう分かるか? なら話がはええ」

そう言って、付いてくるようにそのニヤけた顔で示すと先頭に立って進みだす。


「どうする?」

「とりあえずついていきましょう」

スバルと小声でやり取りしてアルベル達の後を付いていく。



ケガした男がいるせいであまり速度が出ないが、それでも素早く街まで足を進める一行。


そういえば、回復職がいないのね。


私は魔法が使えるといっても回復系は使えない。 スバルはそもそも魔法が使えない職だし。


「あーポーション要ります?」

スバルがそう言って懐から取り出したかのようにストレージからポーションを取り出す。


……器用ね。

アルベル達はその事に気付かなかったようでポーションを手渡すスバルに感謝した。


「助かる! あいにく切らしちまっててな」


アルベルはそう言ってスバルに代金を渡し、男に飲ませる。


すると……


「うおおお! 傷が治っていく!?」

ケガをしている部分が、ズボンが破れてそのケガが見えていた所がみるみる傷が塞がっていく。


「お、おいボウズ! こいつはエリクサーか!?」

魔法使い(スペルキャスター)の男が興奮したようにスバルに詰め寄る。


「落ち着け! まずが街についてからだ」

アルベルが男を押さえつけスバルから引き離す。


「あれー? ただの初級ポーションなのに」


スバルがなんでだと首を捻っていたが……面倒な事を。



私は知らず大きなため息をついていた。


おk は打ち間違いではないのでご注意を。

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