とある国王の後悔。あるいは、愚かと成り果てた元優秀な王太子のはなし。
暗めの話です。
そーゆーの嫌だわっていうかたは読み飛ばして下さいませ。
連載始める前の短編と繋がっていて、特にある王族の後悔。と逆ハーレムの終焉。にリンクします。
第二王子の年齢ちょっと変更しました。
昔は優秀な王太子様でした。
さてさて今は…?
「あにうえはすごいですね!」
キラキラとした目で私を見つめ、心からの言葉をくれた弟はもういない。
私は国王の息子として、正妃から産まれた。
弟は側室から。私達は異母兄弟であった。
父である国王は可でもなく不可でもない凡庸な国王だった。
が、女性に対してはだらしなく、他国から迎えた私達兄弟の母達だけでは飽き足らず、自国の既婚者や侍女に手をつけてはその度に大変な騒ぎになった。
他国から迎えた妻達を大事にできないということは、他国との軋轢に繋がりかねない。
そこを分かってはいても堪えきれない父は暗愚であった。
母達は父を挟み、常にいがみ合い争いあった。
父のだらしなさが原因であるのにも関わらず、やれお前が諌められないのが悪い、繋ぎ止められないのが悪いと口汚く罵り合っていた。
幸いだったのは、子ども達に興味が向かず、私達が仲良く過ごしても何も言われなかったことだろうか。
8つ年の離れた弟はとても可愛らしかった。
にいさま、にいさまとひよこのように何処に行くにもついてきた。
私が13の時、学園に通うようになると一緒に行くと毎朝泣いてすがってきたのは過ぎてみれば良い思い出ともいえた。
成長と共に、昔のような無邪気なやり取りや慕いかたはしなくなったものの、私は変わらず弟を思っていたし、弟もそうであると思っていた。
あれが唯一歯向かい、苦言を面と向かって伝えてきたのは私が妻を娶った時だった。
身分は伯爵であろうと美しく、優しい妻をなんとしても側に置きたいと願い、回りに迷惑を少々かけたが最後は皆から祝福を受けることができた。
私達の元婚約者達は国外に嫁いだり婿入りしたりしたらしいが、幸せにやっていると聞いた。
皆幸せになって良かったと私が言った時、弟は言った。
『本当にそう思うのであれば、貴方は父と同じだ。』
あの、暗愚な父と同列に扱うなど…
怒りで暫く口を利かなかった。そうこうするうちに周りが気を回し、弟と全く会えない日々が続いた。
さすがに不味いと思ったが、ダンナのおかげでなんとかまた交流できるようになった。
そんな中、起きた襲撃事件。
弟と私を繋いだダンナは還らぬ人となってしまった。
人知れず日に日に荒れていく弟にやきもきしつつも、政務に追われ、喜びの我が子誕生と成長に心踊らせるうちに、年月は過ぎていく。
もう少し落ち着いたら…
次に会ったときは…
幾度も過ぎるきっかけに、漠然とした不安を抱えたまま、しかしどうにかなるだろうという楽観的な思いを抱えたまま私はその日を迎えた。
愛する妻がもう子を身ごもれないと告げられたのだ。
側室をという声に頷くなど出来はしなかった。
子を生む前に失い、失意と絶望で涙する妻以外を娶るなど虫酸が走った。
王の血筋か大事ならば、そうだ、弟に妻を娶らせればよい。
王家の血も入ったことのある公爵家の娘は国外に嫁がせれば継承権でもめる事もないだろう。高位の貴族や王に近い血筋の人間へ嫁がせてやれば公爵家のメンツも守れる。
素晴らしい考えを弟は受け入れてはくれなかった。
公爵家の者もごねた。
色々あったがなんとか公爵家の娘達は嫁いで行ってとりあえずは解決した。
代償は大きかったが。
宰相が息子に後を任せ引退し、娘の嫁ぎ先の国へと仕官してしまったのだ。
公爵家の者との仲も冷えこんだ。
公爵家の中ですり寄ってくるのはダンナの弟夫婦のみ。
あれは側においても無意味なので無視をしたが、他の公爵家の仲をどうにかしなくては国政に関わる。
それ故、一番公爵家の中で影響力のあるエレクトラを息子の婚約者に据えたのだった。
これでうまくいく。
そう思っていた。
「兄上、あんたの息子はあんたにそっくりだ。
傑作だ…三代そろって女で国を危うくする…俺をも含めてだが…な。」
弟のディグルスは私が到着したときは辛うじて生きていた。
しかしながら、死が間近なのは分かった。
「俺は…けじめは…それなりにつけた…。
兄上、あんたはどうだかね…、ははっ」
私には何も言えなかった。
王は謝罪しない。してはいけない。
例え、過ちを理解しても。
弟の従者が泣きながら私を押しのけ弟にすがる。
本来なら近衛が止めるが、彼らは痛ましそうに従者と弟を見守るだけだった。
「後は任せていいな…?頼むぞ…」
弟は、私には一度も見せたことのない穏やかで、優しい顔を従者に向けると息を引き取った。
そうして我が子達への断罪が幕を開けた。
多少憎まれても、どうにか息子を救い上げられると思っていたにも関わらず、息子は去っていくこととなった。
涙にくれる妻をなんとか慰め、残った仕事片付けに執務室に戻ると、宰相が一人残り仕事をしていた。
「陛下、お休みになるとばかり思っておりました。」
「帰ったのではなかったのか。」
美しい顔だがおそろしく無表情の宰相がいきなりぶはっとふきだした。
そのまま腹を抱えて笑い続ける。
暫くそのままでいたが、不意にいつもの無表情に戻り淡々と答えた。
「おそれながら、全くご存じないとは思いますが、私を含めた文官はここ半年ほど週の大半を城に泊まり込みなんとか国をまとめております。
陛下が王妃様の療養に付き添い、一月ほど保養地に出向かれている間の問題を解決して下さったのは王弟殿下と第二王子でした。
その王弟殿下を失ってしまった今、猫の手を借りたいほど忙しいのです。
失礼ながら、今の陛下は動揺なさっておいでです。目を通してもらわなくてはいけない書類は民の生き死にに関わるものばかり。
一晩体をお休みになられて対応していただけますでしょうか?」
宰相の問いかけはもはや指示だった。
再び寝所に戻り、眠りについた。
何故、こんなことになってしまったというのだ。
我が身に降りかかる不幸に憂いながら私は眠りにつくのだった。
略奪&追放エンドありで結ばれた国王夫妻です☆




