悪ふざけもほどほどに。
「大人げないぞ、お前ら。
顔がよくてもごめん被るガキだが一応、公爵の血筋だ。
何かに役に立つかもしれないからとっとく方向で様子見なんだ。
今処分しても骨折り損ってやつだ。
おかしな真似したら俺が責任もって切り飛ばすから今は堪えてくれよ?
忘れてると思うが、まだ学祭の途中だぜ?
お前らも分刻みでバタバタしたの覚えてるだろ。午後から武闘大会もあるんだからさっさと戻るぞ。」
つかつかと入ってくるついでに倒れた公爵を蹴りどかしつつ、バルドが言う。
朗らかな口調だが、言っていることはかなり物騒だ。
しかも首を切るジェスチャー付きで、察しの悪いシンシアですら理解できる。
一瞬、殺気のこもった一瞥を受け、その場にへなへな座り込んだ。
「おー!リロイか!
でっかくなったな!相変わらずちっちゃくて可愛い顔してんな!
妹達がすまなかったな。
ああ、これ寄付な!
それとこれは差し入れ代わりの金な。これでみんなで打ち上げすると良い。
寄付とこの金は俺とボリス、妹達からの連盟だ。遠慮せず使うと良い。」
リロイを見つけると破顔して近付き、幼い子にするように撫で回しまくる。
まだ社交に出ていないリロイは、遠くからしか見たことのないはずのバルドに親しげに声を掛けられてキョトンとしている。
「リロイ様、幼小の頃…姉君が学園に入って長期休暇に帰ってこられない事態になり、泣いて騒いで私とこっそり学園に潜り込んだときに遊んでもらった方ですよ。」
「うーん…申し訳ないが思い出せない…
姉上に会えて女子寮に泊めてもらってお菓子をたくさん食べた記憶しかない…」
ゼベットの解説が入るが、リロイはいまいちピンときていない様子。
愛しの姉上に関することはしっかり覚えているが、その他はぼんやりとしてしまう安定のシスコンっぷりだ。
「学園に忍び込むって、とんでもない人やなぁ…
幼児とはいえ男子が女子寮に入れるもんなんか?」
空気と化していたカムイが呟くとすかさずヘレナも呟く。
「今も昔もものすごいセキュリティかかってるはずなのに…なぜ?!」
「こっそりはご両親に対してですね。
私は僭越ながら次席で卒業してましたし恩師に会いに来たと言えば顔パスされるくらいには知られてました。
その上リロイ様は姉君とおそろいにする、となぜかワンピースを着ておりました。
可愛らしかったですよ。」
そこでゼベットから明かされる衝撃の新事実…!
しかし、リロイが女装。
止めない従者ってどうなん?と思いつつも、いいぞ、もっとやれという気持ちにおそわれるのは何故だろうか。
リロイと女装。
今とてしっくりきそうな組み合わせなのだ。
当時はそれはそれは可愛らしかったろう。
「「「「見たかったぁ…」」」」
いくつもの小さな呟きが重なるが、リロイには幸いなことに聞こえてなかった。
エレクトラですら思わず口から漏れていたのは秘密にしといてあげようとヘレナは思った。
「まぁ、そんなわけでエレクトラ今夜は外出できるよう手配しておいたからな。
色々言いたいことはあると思うが仕事にもどれ。
ほれほれ、お忍び公妃と王太子妃も悪ふざけが過ぎるぞ。
アリサ達もカフェテリアで待つように頼んどいたから行くぞ。」
「どんなわけかさっぱりわかりませんわ、お兄様。
とりあえず外出届はありがとうございます。
そして、正直もうしましてこの後の予定が押してますの…私達も何か食べてから行動したいと思っておりまして…」
バルドの声かけで我に返ったエレクトラは、すぐさま穏便に退場を願えるよう姉達に頭を下げた。
「あら、そうですわね。ではまた会いましょう。」
「武闘大会も終われば1日目も無事終了になりますし、家で色々話しましょうね。」
「「では皆様、ご機嫌よう。」」
「激励と寄付ありがとうございました。」
キャッキャうふふと笑って恐るべき公妃と王太子妃は去っていった。
ちなみに、学園祭は2日間開催される。
1日目は販売や武闘大会がメイン。2日目は研究発表や展示がメインである。
ちなみに、リロイ父はボリスに近くにあったピッチャーの水をぶっかけられながら、揺り起こされていた。
そして「分かってますよね?」の一言でシンシアを引っ張って慌てて出ていったのだった。
現役宰相による水責め。ちょっとした拷問である。
完全に乱入者や訪問者が去ってから、一同ため息をつく。
「とりあえず、飯にしましょか?」
カムイが半笑いで言うと、リロイが頷き、それぞれ昼食を摂り始めた。
その間をゼベットが給仕して回る。
「何が起こるかわからないな…気を引きしめねば…」
「そうですわね…」
午後はこれからであるが、どっと疲れてしまったリロイとエレクトラであった。
この後、
ドキッ!筋肉だらけの武闘大会!!アマゾネスも居るよ!編
が始まるかもしれない。




