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望まれない英雄  作者: 夢猫狐
第1章:運命の従者~he seek the simple reason~
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第7話:第一の決断~first turning point~

「やあ、ちゃんと来てくれたんだね」


 場所は領主の館。その応接間。無駄に煌びやかな装飾を施された椅子に座り微笑を浮かべるフリードリヒ。


「正直、来てくれないんじゃないかとも思ったよ。まあ、座りたまえ」


 同じく豪華な装飾を施された正面の椅子を指示し座ることを勧める。それに応じたのはシャルル、イズーナ、アスタルテの3人。残りの二人、ユリアとカレンは先日のようにシャルルたちの後ろに立ち控える。


「それにしても随分早く来てくれたものだね」


「早くこっちに来ないと出店でなけなしの金を全部使われそうだったんでな」


 この場所にくるまでに出店を周りにまわり色々なものを食べていた。定番のものからこの地域では珍しいものを遠方から売りに来ている店まで。

 そのため必要最低限しか持ってきていなかった、というか持ち合わせていなかったシャルルの財布は破綻寸前であった。


「はは、随分楽しんでくれたみたいだね。領主としても嬉しい限りだよ」


「領主としてって、今回の祭りは商業ギルドの協賛であんたはゲストだろ」


「おや、知っていたのかい。だから私も最初から最後までいなくていいんだけどね」


 この領地では珍しく領主が主催でない祭が数多く開催されている。それはいいのだがその分警備は通常通りなのでカバーしきれない分もあり先ほどみたいないざこざも発生する。


「そうそう、君たちが捕まえてくれた人さらいもどきなんだけどね。彼らはこの前話してた件とは関係ないようだよ。まだ詳しくは調べてないがね。あぁ、ユリア君。驚かなくてもただの警備兵である彼らが掴められるわけないだろうに。少し強く聞いたらちゃんと話してくれたよ」


 驚きに声をあげようとしたユリアに先んじてフリードリヒの種明かし。


「あー、一応聞いとくけど……まあいいや」


「なんだい? ちょっと痛い目に遭ってもらっただけだよ。彼ら、最近少し勘違いしてたみたいで私に意見するんだよ。それが一考に値するものであればいいのだが、中身なんて何にもない自分たちの利権しか考えてなくてね。そんなことより私は早く罪人の尋問に行きたいのだけどね。悲鳴なんてどうでもいいが人体実験できるのはいいね。新しい魔法も試してみたいんだよ。彼らは人格などなくなろうと生きてさえいれば別に私が咎人となることはないのでね」


 恍惚と、そんなことを言ってのけるフリードリヒ。

 サディスとなのかマゾヒストなのかイマイチわからないし理解もしたくない男である。


「ということで本題に入らせてもらうよ。まあここに直接来てもらったのなら答えは嬉しいものでしょうがね」


「ああ、癪だがアンナ様のためだからな。受けてやるよその依頼」


 本当にしょうがなくというような渋面で答えるシャルル。


「嬉しい答えですね。ならば、ユリア君とカレン君もシャルルさんたちについて行ってもらいましょう」


「え……しかし」


 驚いた声でカレン。


「さきほどの人さらいを捕まえた褒賞として、でいかがでしょう。それとも命令の方が行きやすいですか?」


 こうまで言われると言い返せない。ユリア、カレンはただ頭を下げ、受け入れる。二人にとっても悪い話ではない、むしろ喜ぶ話であるのだし。


「では話もまとまったところで、お願いしますよ。シャルルさん」


「ちょっと待て。2,3あんたに頼みたいことがあるんだ。まず通行許可書。複数の領土を行き来できなければ何にもならない。その点あんたの許可なら大抵のとこへは行けるだろうしな。もうひとつは金だ。今はそのくらいかな」


「ふむ、それくらいなら何とかしましょう。と言ってもお金は最低限しか出せませんがね」


「2週間くらい持てばいいさ。それからはなんとかする」


「あぁ、もう一つ。件の噂の出所と……どうせあんたみたいに選帝侯に怨み買ってる奴もいるんだろうし選帝侯たちをきらってるのもいるんだろ?そいつら教えてくれよ」


「はは……抜け目ないですねぇ」


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 シャルルたち5人が出て行った応接室。ひとりフリードリヒが残っていた。


「彼らには教えられることは教えましたしそこに嘘もありません。が、彼らは信じてくれるでしょうかね。しかし、今後も情報の共有を約束されました。なんとも……そこら辺の諸侯よりも頭が回るものですね。やはり懇意にしておいてよかったでしょう?エルナ」


 そこには、今の今までフリードリヒ一人であったはずの応接室には甲冑姿の女性が一人、騎士剣を腰に携え、フリードリヒの目の前に立っていた。


「あまり気配を殺さないでくれますかね。私にも恐怖と言うものがあるのですよ」


 エルナと呼ばれたはずの女は答えない。微動だにせず立ったままだ。


「まあいいですよ。それよりこちらも準備を始めましょう。シャルルさんたちは必ずたどり着きますよ。それに合わせて準備をしなければなりません。手始めに、隣国のティマイオへ接触を図りましょう」


 エルナは口を開かない。ましてや何の動作もしていないが二人には会話が成り立っているらしい。


「シャルルさんたちの監視はいいですよ。シャルルさん、解答には至ってませんでしたが気付いてますよ。さすがですね。先にティマイオとの接触を急ぎましょう」


 フリードリヒが今一度、注意を目の前に戻すとエルナは消えていた。

(はてさて……これからどうなるんでしょうねぇ)


 フリードリヒは、今後の、訪れるであろう大変革を一人思いふけった。


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「何やら、騒がしい旅になりそうじゃの」


 アスタルテがため息を吐きつつ言った。


「まあまあ、楽しい方がいいじゃないですか」


「そうそう! イズーナの言うとおりだよ。人数が多い方が楽しいじゃん?」


 ユリアが調子よく答える。

 実際、アスタルテを戦力として数えられないのでユリアとカレンがいてくれた方が安心ではあったのだ。


「それで、とりあえずこれからどうしますか?もう頼んだものはまるでわかってたように準備してありましたし」


「とりあえず話にあって、一番に登場した街にでもいってみるか。被害も一番多いみたいだしな。なんでそこに集中して被害があるのか調べてみたら行動指針もたつだろうよ」


「じゃあ目指すは森の都。イリィ=ポリスだね!」


 元気よくユリアが目的地を宣言。



「ところでどうやって行くのじゃ?地図で見たらけっこうあるぞ?」


 アスタルテの疑問に4人の視線がシャルルの元に集まる。


「どうやって行こうか……ハハ」


 いきなり難問にぶち当たる5人であった。

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