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少女はずっと泣き続けていたがようやく泣き止み、さてどうしよう、とココは思う。多分さっきの男達はマフィアかなにかだろう。その位の迫力はあった。迷子の保護でさえココの身には余ることなのにあんな連中が絡んでいるとなるといよいよどうしようもない。

「警察に行くか」

まあ、当然の判断だろう。このままこの娘を連れ回すわけにもいかない。しかし、あの男達に見つからないように細心の注意を払わなければならない。地図で場所を確認して言った方が賢明だろう。

「よし、行くか。ついておいで」

と少女に言いつつ、立ち上がる。少女は何事かという目でこちらを見るので、おいでおいでと手招きすると、ココの意図が伝わったのか、立ち上がった。

よし、とうなずき、匿われていたテントもどきから出る。ホームレス達が近付いてきたのでとりあえずジェスチャーで感謝の意を示す。案の定伝わらなかったらしかったが、少女が補ってくれたようだ。ホームレス達は各々の独自のジェスチャーで返してくれた。多分、がんばれよ、とか、元気で、とかそんな感じだろう。それに応え、この広場を後にする。

幸い交番まではそう遠くない。歩いて五分位か。

地図を見つつ、おそるおそる道を歩き、曲がり角では連中の影に気を付け進んでいく。正直ココはとても弱い。まあ、よくて普通程度だ。とても本職のケンカ屋さんとやり合うなんて不可能だ。

それにしてもどういう訳でこんな十歳位の女の子が強面の男達に追われるはめにあったのだろうか。正直、どこにでもいる普通の女の子にしか見えないが。

そんな栓のないことを考えていると交番に着いた。気を張りながら歩いてきたので非常に長く感じた。とりあえず物陰に隠れて誰もいないかを確認する。・・・・・・まるで泥棒だ。

交番に着いたら、警官にどういう風にして「この娘は迷子なんです」と伝えるかはまだ考えてない。言葉の壁はこの娘がなんとかしてくれるだろう。多分。

声を掛けられた。振り向くとおそらく目の前の交番の警官であろう男が立っていた。見廻りでもしていたのだろうか。その腰に下げている拳銃はココの国の警官の持つ小さな銃などよりよほど大きい。そういう物が必要な国だということか。

「この子は迷子なんです。保護してもらえますか?」

ダメもとで聞いてみる。もちろん英語ではない。それはココの英会話力を越えている。警官がけげんそうな顔をする。そりゃそうだ。

「マフィアカラニゲテルンデス」

女の子が言った。意味は分からないが。

すると警官は女の子と目線を合わせるため少し腰をかがめて話を聞き始めた。女の子はその警官に何か言う度徐々に安心していくようだった。さっきまで蒼い顔をしていたが顔色がだんだんと戻っていくのが見て分かった。

やっぱり警察は頼りになる、来て良かった、とココが思っていると男が一人歩いてきた。スーツ姿でいかにも紳士って感じの老人だ。彼は警官に用があるらしい。道でも聞きに来たのだろうか。

彼は懐から写真らしき紙を取り出して警官に見せた。

「コイツダナ」

警官が写真を見たまま何か言った。それを聞いて女の子の顔が少しずつ歪んでいく。

「アア、コイツダ。ウンガヨカッタナ。オモッタヨリ、ハヤクミツカッタヨ」

紳士が女の子を見ながら言う。その目には何の感情もない。

警官が女の子とココを見た。その目には悪意さえ感じられた。

「マッタク、ニゲタトキイタトキハドウナルカトオモッタゼ。シナモノノカンリハチャントシロヨナ」


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