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俺の特級指定魔法は三日間エフェクトが止まらない

掲載日:2026/08/04

あの、異世界の魔法の派手な演出。


そうそう。あの、カッコいいやつ。


でも……あの、演出が魔法発動後三日間続くとしたら?




「はぁ!」


ぎゅぃーーん


俺は全身を光らせ、周りに魔法陣を出し、いかにも力を溜め込んでいる感じの音を出しながら魔物を撃退した。


ぎゅぃーーん


「ありがとうございます!ぜひお名前を……」


「名乗るほどの……」


話す間に俺は、ちょっと前に手に入れた瞬間移動魔法で逃げる。


何故なら魔法陣と体のピカピカと、ぎゅぃーーんみたいな音が止まらないから。


あれれ?みたいな顔されるのが嫌だ。


ここでひとつ豆知識を。


実は、魔法陣にはちょっとだけ当たり判定がある。


当たり判定と言っても軽い反発みたいなものだ。


この知識はほとんど誰も知らないと見ている。


だって……


ぎゅぃーーんばいんばらばらばらばら


「うわあああぁ、机の上のもん全部落ちちゃった……」


魔法陣って、普通はすぐ消えるから。




ぎゅぃーーんちゃぷーん


俺は体(と魔法陣)を光らせながら風呂に入っていた。


ここはキュルキュルキュリーン大国。


蔓延した魔物を倒す為に、勇者が大国に一人在住中……。


その勇者が俺である。


これは、俺が特級指定魔法(必殺技のイメージでいいよ)使用の際に、三日間出し続けてしまう派手なエフェクトを隠して隠して隠して隠して……世界を救ってるって話だ。


まぁもう魔王を倒したので、雑務MAX残りカスみたいな勇者業だが。


ぎゅぃーーん


「わーい、灯り消してお風呂入ったら、ナイトプールみたーい。体もなんか浮き輪なしでも浮いてるし、すごーい……」


……まぁ、それは一旦置いといて、もう食料がない。


キュルキュルキュルキュルリーン大国は魔物が蔓延しており、休む暇がない。


しかし、俺は一度特級指定魔法を使うと三日間こそこそしなければならない。


そんな中買い物になんて行けるわけがない。

想像してみて欲しい。


街中で、当たり判定的に自分の体積が二倍、体と魔法陣が光ってて、何か発動しそうな音がずーっと鳴りっぱなし。


居た堪れない。泣く。


……こーゆー時は可愛い動物の動画でも見よう。


「わー可愛いリペンキース〜」


リペンキースは手のひらサイズの小動物だ。

見た目だけじゃなくて、鳴き声も可愛いとうら若き乙女たちに大人気。


ぎゅぃーんぎゅぃーんキャン!


そうそうこんな声の……え?


ヤバい、エフェクトになんか動物を巻き込んだか?!


……待てよ?そもそも風呂になんで動物が?


そして、こちらを見つめるリペンキース。


「……しまった、間違えてリペンキース召喚しちゃった」


俺の今の状態は魔法展開待機状態。

いつでも魔法を使えるという事。

言わば、常に魔法出せるぜ状態。


「気抜いちゃった……あーあ」


「こゅっう!」


「どうしよう……」


キュレギュレーション大国……アレ?

キュルキュル大国だったっけ?


まぁいっか、とりあえずここの法律は召喚魔法に厳しい。


まず、野良を召喚する時は、その野良が生きれる環境下かというものを確認してからじゃないとダメだ。


リペンキースはペットに飼ってる人も多いので多分大丈夫だ。


もう一つ。

野良は必ず元の住んでいたところに戻さないといけない。


元々住んでいたところ以外逃してはいけないし、逃がさないなら飼わないといけない。


「あ゛ーーーー」


とりあえず寝よう、おやすみ。


ぎゅぃーーんキャウンキャウキャウ!


あああああまぶしい!うるさい!




二日目。


ぎゅぃーーんキャンキャアン!


俺は昨日の記憶が夢ではないことを実感した。


「こゅう!」


俺はこの子を誘拐したようなものだから元に戻す義務がある。


しかし、俺は今ピカピカのぎゅぃーーんぎゅぃーーんだ。


このまま街に出たら警備隊に取り押さえられるかもしれない。


新聞の一面を飾ってしまう。


『勇者!召喚魔法法及び迷惑魔法防止条例違反!晩節を汚す!』


だ。


しかし、無意識だったせいでどこから召喚したのか分からない。


他のやつの手を借りたいが……召喚元の特定なんて器用なことができるのはあいつだけだろう。


圧倒的な美貌を持ち、千年に一人の魔法使いともてはやされているあいつだけ。


ただ、魔王討伐後の勇者パーティ会計監査で、彼女が……俺も密かに想いを寄せていたその魔法使いが、勇者パーティの金を横領していたことが発覚!


ドン引きした。結局金か。

後処理をもうひとりのパーティメンバーに丸投げした。

そっからふたりには会っていない。

てか魔法使いには会いたくない。


ぎゅぃーーんキャウ!


しかし、この子をそこら辺に捨てるのは嫌だな……仕方ない。


魔法使いに会いに行くか……



ぎゅぃーーん


着いた。便利なもんだ。瞬間移動魔法とは。

特級指定魔法じゃないから、エフェクトも延長されないし。


「ぬきゅう!」


「こら威嚇すんなー」


ピンポーン


久しぶりに会った彼女は俺を少し睨むように言った。


「まっぶしいわね、何……?」


「久しぶり、ちょっとコイツの召喚元特定して欲しいんだけど」


「……え?ええ分かったわ」


どうやら罵倒でもされるんじゃないかと思っていたらしい。


ははは、俺はもうその次元を超えている。


「……この子、魔王城にいたみたい」


「え?」


そもそもリペンキースは弱い。


攻撃なんて出来ないし、威嚇も可愛らしい。


そんなんが、どうやって魔王城の魔物がウロウロしている所で暮らしてたって言うんだ。


「リペンキースが魔王城に?こんな環境変化ありえない……王様に報告しないと!」


あああああ、そういえばこいつ、責任感だけは強かったな……


「え、ちょ、待っ」


「魔王討伐報奨金で瞬間移動魔法の魔導書競り落としたんでしょ?!瞬間移動して!」


「嫌だよ!今光ってるし!無理!」


「王様の執務室に直接瞬間移動すればいいでしょ!?」


「超絶不敬!!!!!」




……ぎゅぃーん……


「まっまぶしっ!おお!?勇者殿!魔法使い殿!久しいの?!」


「王様!実は……」


「なるほどのう。ちょうどさっき戦士殿が、勇者パーティの収支報告書を提出しについでに、挨拶に来てくれたぞい。三人で少し魔王城を見てきてはくれないか?」


「りきゅう?」


「おお、リペンキースは可愛らしいのう。」


終わった。

三人でとか。

空気最悪ギッスギスだぞ。

でも確かに魔王城の確認はしないといけない。

俺ら、勇者パーティしか、行けない。


「ははははは」




三日目。

いつもの俺は光るのが終わるので三日目は凄く嬉しい。

いつもは。


「……久しいな、勇者。」


「ハイ、戦士サマ」


「…………」


……ぎゅぃーん……


「戦士サマ?サマってなんだよ。てかよ、相変わらずまぶしいな?ああ、そうそう、そこのクソ女の横領だけどな?後処理丸投げしてくれてありがとよ?おかげで随分と計算が速くなったわ。データ処理やら、法律やら、他にも色々詳しくなったぜ?バックオフィサーにでも転職しようかな、はっはっはっ」


「あ、ははは」


「…………」


……ぎゅぃーん……


「何を笑うところがある?」


「スミマセン」


「……勇者、瞬間移動して。魔王城前。」


「へぇ、瞬間移動。俺初めてだわ。Hey 勇者、魔王城まで頼むわ。」


「ハイ、ヨロコンデ」


唯一の救いは瞬間移動魔法を手に入れたおかげで、前は何年もかかった道のりが五秒で終わるところである。




……ぎゅぃーん……


「こりゅ?」


「着いたわね!楽ちん楽ちん」


「そうだな横領犯」


「……ごめんなさい、私は……」


重い。

空気が。

魔王よりしんどい。


泣く。


「ま、まぁまぁ落ち着い」


「お前に俺を落ち着かせる権利があると思っているのか?」


「スミマセン」


「…………」


「ぬきゅう」


ここは魔王城。


こんな空気のメンバーで行くところじゃない。


「……ちっ、お前が光ってるから魔物めっちゃ来るな」


「スミマセン」


本当にこのメンバーで行くところではない。




四日目。

地獄の夜を明かし、俺も光らなくなったので、本格的に探索開始だ。


しかし、光らなくなった俺をリペンキースが怖がってしまった。


「ぬきゅう!ぬきゅう!」


「落ち着いて〜大丈夫、あなたの飼い主よ〜」


「いや俺飼い主じゃないから!」


そんなこんなで魔王の王座まで隅々まで見て回ったが、特に異常は見当たらなかった。


「どうやら無駄足だったようだな?はぁ、ちっ」


「スミマセン」


「もう一回見て回ったらもしかしたら……」


「お前のその見せかけだけのいい子ちゃん、吐き気がするね」


「……私はいい子ちゃんなんて……」


「黙れ、パーティの金を横領したくせに。クソ女が」


「……」


……瞬間移動で帰りたい。


「な、なぁ俺らも金の管理がずさんだったじゃん、三人ともよくなかったよ」


「勇者……!」


「……それはそうとだな」


あれ?戦士、案外普通に引き下がって、


「そのリペンキース、本当にリペンキースなのか?」


「?」


「当たり前でしょ?……あれ?リペンキースちゃん……?」


さっきまで俺の肩の上にいたリペンキースがいない。


ぺたぺた。


小さな足音が玉座へ続く。


ぴょん。


リペンキースは当然のように玉座へ飛び乗った。


かつて何度も感じた、命が震えるような寒気。


「お前…………?」


ぎゅぃーーーーーん


咄嗟にはった特級指定防御魔法のエフェクトだけが、静かな玉座の間に輝き響く。


「……え?嘘でしょ……?」


「おい!勇者!魔法使い!戦闘体制!」


玉座に腰掛けるソイツは、まるで、




「さぁ、リターンマッチといこうか」




ぎゅぃーーーーーん


「……やっと静かになったと思ったのになぁ」

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― 新着の感想 ―
応援できればと思い来ました(^ ^) 「派手な演出が三日間続いたら」という一発アイデアの発想が秀逸で、コミカルな設定に引き込まれます。書き手として感心したのは、光り続ける迷惑エフェクトを、風呂も買い…
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