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乙女ゲームに浸りたい

作者: 白山月
掲載日:2026/04/25

ついに、手に入れてしまった。

「王子攻略 ロイヤル セレクト」


超美麗グラフィックス、そして聴く者を骨抜きにすると噂の豪華声優陣。

しかしその実態は、「乙女ゲームマニアの、マニアによる、マニアのための超高難易度ゲーム」だ。


一般受けなど微塵も狙っていない、知る人ぞ知る「売れない(売る気がない)」名作(迷作?)。

これさえあれば、ゴールデンウィークをガッツリ浸れる。


食料は充分。飲み物も万全。

寝落ち対策のブランケットとクッションも完備。


「――よし、準備は整った。……ポチッとな」


名前は「ドナウ」に決定。初期設定を済ませ、私は運命の幕を開けた。


第1ループ:光速の終焉


ゲーム開始直後。

画面の向こうから白馬が駆け寄り、黄金の髪をなびかせた男がこちらを見つめた。

「ああ、麗しき人よ! この腐敗した世界を救い、私の魂を導いてくれるのは貴女しかいない。どうか、私と結婚してください!」


(……っ! とんでもないイケメン!) 思わず、震える指で選択肢を選んでしまう。

> はい


♪ズンチャン♪ズンチャン♪

突如、多幸感溢れるハッピーな音楽が流れ出した。

流れるスタッフロール。背景には「思い出のシーン」として、馬の視点から見た私の姿だけが虚しくスライドショーで映し出される。

しかも好感度MAX!

……。

…………。


「はぁ!?」

1万円したゲームが、わずか数分で終わった。

じっくりやり込もうと思っていた私のゴールデンウィークが、秒で消えた。

「早すぎるでしょ! なにこれ、名前も知らない男にプロポーズされて『はい』って言っただけ?

向こうだって私の名前知らないでしょ!

あんなに悩んで設定した『ドナウ』、一度も呼ばれてないんだけど!」


行きずりの男と即婚。

それがハッピーエンドだなんて、舐めている。

「1万円あればラスベガスでギャンブル三昧の方がマシだったわよ!(行けるわけないけど!)」


怒りに任せてコントローラーを放り投げようとしたが……。

あのアレス王子のビジュアルと、耳に溶けるような甘い声が、脳裏から離れない。


「……もう一度だけ、やってやるわよ」




第2ループ:世界の半分と食欲の罠


再び、白馬が駆けてくる。

「ああ、麗しき人よ! この世界を守るために、私と結婚してください!」

> なに貴方、名前も名乗らずに求婚だなんて。私を安い女だと思っているの?


「……失礼した。あまりの美しさに理性を失っていたようだ。私はこの国の第一王子、アレス。遠乗りをしていたところ、地上の星……いや、貴女という名の奇跡に目を射抜かれたのだ。一生に一度の好機を逃すまいと焦ってしまった私を、どうか許してほしい」


(……あぁ、なるほど。これは『お断り』を積み重ねていくゲームなのね。慎重にいかないと)

「私は間もなく、この世界のすべてを統べる王となる。もし貴女が頷いてくれるなら、**世界の半分を貴女に捧げよう。**二人でこの世の頂を支配してはくれないか?」

(世界の半分! 最高じゃない!)

> はい!


♪ズンチャン♪ズンチャン♪(2回目)

「……。またやってしまった。世界の半分に目がくらんだわ……」




第3ループ以降:欲望との戦い


その後も、私の「安さ」との戦いは続いた。

カジノイベント: 「君の強運に惚れた。このチップすべてと、私の心を受け取ってくれ」 → >はい!

スポーツ大会: 「優勝の栄冠など、君の微笑みに比べれば塵に等しい。私の生涯の伴侶になってくれ」 → >はい!


救出イベント: 「……怪我はないか? 君を失う恐怖に比べれば、この傷などかすり傷だ。もう二度と離したくない。結婚しよう」 → >はい!


「だめだ私……。なんでこんなにガードが無いの……?」


次こそはすべてを拒絶してやると誓った私の前に、アレス王子が真剣な表情で現れた。

「……ドナウ。実は特別な贈り物がある。もし私との結婚を承諾してくれるなら……『チューバーイーツ』の50,000円分クーポンコードをプレゼントしよう」

(はぁ!? 1万円のゲームで5万円の還元!? 実質プラス4万じゃない!)


> はい!!!

本当にポイントがもらえてしまった。これでゴールデンウィークの食料事情はバラ色だ。

もはやゲームとしての体裁は崩壊しているが、私は確かな勝利を確信した。





最終ループ:そして真の物語へ


「……よし、今度こそ、今度こそ絶対に全断りするんだから!」

ポイントも手に入れ、顔をニヤつかせながら画面に向かう。

アレス王子が切なげに、しかし情熱的に私を見つめる。

「……私は、王子としてではなく、一人の男として君に見てほしいのだ。地位も名誉も捨て、ただの『アレス』として君を愛してもいいだろうか?」

> いいえ!


♪デンドン♪デンドン♪デンドン……

「これだ……これがバッドエンド! 始めて見たわ!」


異様な達成感が体を駆け抜ける。

拒否すればいいという単純な話ではない。

この先にある「何か」を掴まなければならないのだ。




数多の誘惑とハッピー(即死)エンドを乗り越え、すべてのイベントを完璧な選択肢でクリアしたその時――。


♪チャッチャラー♪チャッチャラー♪


軽快な音楽とともに、画面に大きく映し出されたのは……。


『OPENING:王子攻略 ロイヤル セレクト』

ようやく、本当のオープニングに到達した。

好感度も0になってる。(やる度に、下がってたもんね)

でも、ここからが本番。

ライバルキャラ、複雑な人間関係、さらに難易度の上がる選択肢。



私はクッションを抱え直し、不敵に笑った。


「さて……ゴールデンウィークは、ここからが本番よ」



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