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皇帝への謁見と、、

前回に引き続き今回はレオンの緊張の一日。どうぞお楽しみください

しばらくして朝の光が差し込むヴァルモンド家の屋敷。


レオンは鏡の前に立ち、整えられた衣を身にまとっていた。

この国では皇帝への謁見には紫色のものを身につける決まりがあるそうだ。レオンの明るい金髪と藍色の瞳によく映える。


義兄アレクシスが肩を軽く叩く。

「緊張しているかい?」

「……少しだけ。まさか王家の方々に謁見する日が来るとは思っておらず。」

レオンは少し苦笑いしながら答えた。

「でも、父上が僕にくれたチャンスだとも思っているんです。今の僕を見てもらおうと思います。」

その答えにアレクシスは微笑み、

「よし、準備もできたみたいだな。父上のもとへ行こうか。」


と使用人たちにふたりとも礼を告げ歩いていく。


この対応はエルンストから、いやもっと昔から

――自分に関わる人は大事にしなさい。

という教育のもと育ったからである。

レオンは悲しい過去を経て周りの人に対してのやさしさを持つような隙もなかったはずなのに、アレクシスを見習いエルンストの言うことをしっかりと聞いてしっかりと周りを見られるヴァルモンド家次男に育っていたので、 使用人からの人気も高いらしい。



レオンたちがエルンストの執務室へ行こうとすると、もう父は外の馬車の前で待っていた。

「おまたせしてしまい申し訳ありません。というか、父上もいかれるのですか?」

「なに豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしているのだ、、。

仲間では入れないが連れて行くくらいさせてくれ。心配なんだ。」

エルンストは新しい服が似合っているレオンを見ながら満足そうに微笑んでいた。


馬車に乗り込むと、エルンストは静かに言葉を投げる。

「今日の謁見は、ただの形式ではない。皇帝陛下はお前を見定めようとしているのだ。心を隠すな、誠実に答えよ。」

レオンは深く頷いた。



門の前に着き、エルンストがなにか紙を示すと門番は深く礼をし、王宮の門を開いた。

入ってすぐのところに待機していた使用人に案内された。

白い石造りの大広間は、天井が高く、光が差し込む窓には重厚な紋章が刻まれていた。

兵士たちは壁際に控え、空気は張り詰めている。レオンは一歩進むごとに体重が重くなっていくように感じた。


玉座に座すのは、ヴァルティアス帝国皇帝セラフィオン・ヴァルティアス・アルセリオン。

その隣には皇弟アレリオ。そしてそれぞれの側近のみが並んでいる。

信用できるもの以外は人払いをしているらしい。


「ヴァルモンド家が次男。レオン・ヴァルモンドでございます。

本日はこのような場を設けてくださり至極光栄にございます。」

レオンは膝をつき頭を下げ、十六とは思えぬ落ち着いた声で、雰囲気に飲まれることなく挨拶を口にした。



「レオンよ。よく来た。エルンストにはいつも世話になっておる。よろしく伝えてくれ。」

「しかと、受け止めました。」


(これが皇帝か、、声が重い。しっかりとしなければ。)

レオンは深く礼をし、静かに答える。


形式的な挨拶が終わると、場は移された。

広間の奥、陽光が差し込む小部屋。3人は円卓に座り、食事を前にして言葉を交わす。


皇帝セラフィオンが本題にはいる。

「さて、本題であるがその前にレオン。お前の過去はエルンストから聞いている。よく希望を失わずにいられたものだ。」

レオンは一瞬だけ目を伏せ、そして真っ直ぐに答えた。

「外から聞こえるかすかな声で状況を把握していたのです。きっかけがあるのかいつあるのかはわかりませんでしたが、きっと大丈夫だと言い聞かせておりました。」


その答えを聞いて皇弟アレリオは

「かすかな声で状況把握か。エルンストは君が多大な力を秘める子だと言っていたのだ。いまはアレクシスとともに学問や剣術に励んでいるそうではないか。」

と、問いかけた。


「はい、だんだん兄さんに追いつけるようになって、いまはほぼ同じ内容を学ばせていただいております。家庭教師をつけてくれた父上には感謝しかありません。」


皇帝もアレリオも目の前にいる、2つ上の、それもアレクシスでさえ他の同学年より全てにおいて秀でているという兄と同じ内容を学んでいると平然と応える才能の塊に驚き笑うしかなかった。


「レオン。お前はこの国のことをどれほど知っている?」


レオンは少し戸惑いながら答えた。

「……正直に申し上げますと、ほとんど知りません。屋敷に来るまで、世間のことを学ぶ機会がありませんでした。」


皇帝は頷き、ゆっくりと語り始めた。

「この帝国は、長い歴史の上に成り立っている。北方の鉱山が我らに鉄を与え、南方の港が交易を広げ、西方の農地が民を養ってきた。

だが、豊かさの裏には必ず影がある。交易の利を狙う者、権力を奪おうとする者……そうした者たちが常に国を揺らしてきた。」


皇弟アレリオが笑みを浮かべて補足した。

「だからこそ、我らは民の声を聞き、時に厳しく、時に柔らかく治めねばならない。君もいずれ社交界に出れば、そうした声を耳にするだろう。」


皇帝はさらに続けた。

「エルンストは誠実な男だ。彼が支えるヴァルモンド家は、この国の秩序を守る柱の一つだ。

だが、柱は一本では足りぬ。新しい力が必要だ。レオン、お前はその一つになれるかもしれない。」


レオンは真剣な面持ちで頷いた。

「……陛下のお言葉、胸に刻みます。たくさん学び、支える力になりたいと思います。」


皇弟アレリオは軽く杯を掲げながら言う。

「君が誠実な人間であることはよくわかった。」

レオンは少し肩の力を抜き、微笑んだ。

「ですが、昔のこと捨て、ただ安穏とヴァルモンド家で生きていくわけには行きません。」

セラフィオンは下を向いてそう答えたレオンを見て姿勢を正した。


「そうだな、私もまだ全容を掴めていない。わたしたちは君を国のために利用することになる。それでもいいのか。」

「私は安全のため、そして自分の復讐のためにこうして国のトップである王家の方々を利用しようとしているのです。構いません。」


そういうと二人は

「きみは強いな。そうか。分かった。基本エルンストを通して君と意思疎通を図ることもあるだろうが私達は君がどんな人物かはっきりとこの目で見たのだ。これから君が社交界でどう生きていこうとしているかも聞いた。サポートしよう。」

「また味方を増やすにあたり信用できるものを紹介しよう。自分で探しても構わない。ただ君の行動がこちらに筒抜けになるのは覚悟してくれ」

穏やかなほほ笑みを浮かべながら答えた。


レオンは深く礼をし、その場をあとにした。

こうして、王族との初めての謁見は幕を閉じた。

レオンの瞳には、次なる舞台――社交界への覚悟が静かに燃えていた。

ここからはじまるのだと、改めてそう感じた。



王宮での謁見を終え、レオンはヴァルモンド家の馬車に揺られて屋敷へ戻った。

屋敷の門をくぐると、使用人たちが一斉に頭を下げた。

「お帰りなさいませ、レオン様。」

その声にレオンは少し照れながらも頷いた。

もうこの家の一員なのだ。


玄関にはすでにアレクシスが待っていて、弟の姿を見つけると駆け寄った。


「レオン!おかえりなさい!どうだったんだい?

陛下と直接言葉を交わすなんて緊張しただろう?」

「はい……でも、思ったよりも温かい場でした。陛下も皇弟殿下も、僕を見てくださいました。」


その答えにアレクシスは安堵の笑みを浮かべ、肩を軽く叩いた。 父エルンストも玄関に姿を現し、満足そうに頷いて家へ招き入れた。


「よくやったな、レオン。お前の誠実さが伝わったのだろう。これで社交界に出る準備も一歩進んだ。」


その夜は食卓で、エルンストとアレクシスが次々に質問を投げかけた。

「僕は第一皇太子殿下と同級生だから顔を合わせたことはあるけれど皇帝陛下と話したことはないんだ。18歳になったときの成人の謁見くらいだ。どんな方なのか教えてくれないかい?」


「謁見の場の挨拶のときは声に重厚感があって、これが皇帝というものかと少し気が引けましたが、、その後話しているうちに僕をちゃんと見て話してくださっていることに気づいて、そこからはしっかりと僕の思っていることを口に出せました」


「私も初めて前皇帝陛下にお会いしたときは声の重厚感に驚いたのだ。現皇帝陛下も今の子供から見ればそんな皇帝になったのだな。」

エルンストがそう言うと、エルンストとアレクシスは安心したように飲み物を飲んでいた。

あまりに同時だったのでみんなで笑ってしまった。



その後レオンは真剣な顔になり、

「今日皇帝陛下は僕が世間のことを全くしらなかったこれまでのこの国のことを色々と教えてくださいました。それも踏まえてこれからどう動くか決めていきたいと思っています。」

と決意を言葉にした。

「あぁ。相談に乗ろう。」

「僕もだ。レオン。この国をもっとより良い国にしよう。それが皇帝を支える我々貴族のつとめだ。」

レオンは緊張した面持ちで頷いた。


その後いつも通り寝る準備を整え、寝た。

だが慌ただしい出来事はこの一日では終わらなかった。そしてこの出来事はあとのレオンの復習に大きく関わることになる。



翌朝。まだ陽が昇りきらぬうちに、アレクシスがレオンを揺り起こした。 「レオン、早く!起きて!」

「えっ……?まだ日も登っていないのに、」

「とりあえず準備!!!皆さんよろしくお願いします!」

アレクシスは寝ぼけたレオンを起こすだけ起こし使用人たちに声をかけ出ていった。


慌てて身支度を整えるレオンの周りで、他の使用人たちも走り回っているようだった。 廊下には新しい花が飾られ、食堂には朝食の準備が急ピッチで進められている。

――屋敷全体が、なにかを心待ちにしているように感じた。


アレクシスは準備を終えたレオンを伴い、父エルンストの執務室へ向かった。

エルンストは机に向かいながらも、どこか落ち着かない様子で言った。


「エリアーナが領地から戻る。アレクシスの母、そして君の義母だ。療養を終え、ようやく屋敷に帰ってくるのだ。」

レオンは深く頷いた。

「母上にお会いするのは初めてですね。」

「そうだ。……母上には、君を我が家に迎え入れたことと、実子として社交界に出すつもりだということだけを伝えてある。君の出自はしらないのだ。」

「ということは、こうして家にいる間も気が抜けないということですか。兄上と学問に励むこともできなくなってしまいます。」

レオンは慌てて心配そうに言った。

エルンストが

「心配はいらん。またしばらくすれば領地に戻ると言っていたし、王都にいる間はいろいろ街を回ると言っていたからこの屋敷にはそんなにいないだろう。お前は堂々としていればよい。それに、あったらわかると思うが、、優しい人だ。」

というと安心したようだった。


その言葉にアレクシスも頷いたが、父と同じく、心の奥には小さな緊張が残っていた。


昼前、屋敷の門が開き、馬車がゆっくりと入ってきた。

馬車の扉が開くと、陽光の中にエリアーナの姿が現れた。

降り立ったのは、気品ある女性――エリアーナ・ヴァルモンド。 長い旅路の疲れを見せながらも、明るい笑みを浮かべていた。


淡い緑の衣をまとい、旅の疲れを隠すように微笑む。

使用人の一人は思わず涙ぐみ、「奥様……」と声を漏らした。


「ただいま戻りました。」その声は屋敷全体を包み込むように響いた。


その声にアレクシスが駆け寄り、嬉しそうに抱きついた。

「母上!お帰りなさい!」

エリアーナは優しく息子の頭を撫で、

「アレクシス!元気にしていましたか。大きくなりましたね。」

「はい!もうしっかりヴァルモンド家長男として社交界に出ております!」

アレクシスはとても嬉しそうだ。


そして次にレオンへ視線を向けた。


「まあ。」

少し驚いたように言いながらも、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。

「あなたがレオンね。エルンストから話は聞いているわ。ようこそ我が家へ。」


レオンは深く礼をし、静かに答えた。

「初めまして、母上。レオンと申します。これからよろしくお願いいたします。」


エリアーナは頷き、アレクシスと並んで屋敷へと歩みを進めた。 その姿は、誰からも慕われる母そのもの。使用人たちも嬉しそうに微笑み、屋敷全体が明るさに包まれていた。


――だが、エルンストとアレクシスの胸には、まだ小さな緊張が残っていた。

レオンの過去を隠したまま、母を迎え入れたのだから。



屋敷に入ると、食堂には温かな灯りがともされていた。

「旅の疲れを癒すために、軽く食事をしよう。」

エルンストの声に、使用人たちが嬉しそうに動き出す。銀食器が並べられ、香り高い茶が注がれる。


アレクシスは母の隣に座り、屋敷の変化を語った。

「母上、庭の花も新しく植え替えられました。弟のレオンも剣術に励んでいます。」

「まあ、そうなの。立派になったわね。」

エリアーナは誇らしげに息子を見つめ、次にレオンへ微笑んだ。

「あなたも我が子同然。安心して過ごしなさい。」


レオンは深く礼をし、胸の奥が熱くなるのを感じた。

――これが母というものなのか。


その時、エリアーナはふと窓辺に目をやり、外の街灯の灯りをじっと見つめた。

「王都は……変わらないようでいて、少しずつ変わっていくものね。明日から街を見て回ろうと思うの。楽しみだわ!」

そう楽しそうに言うエリアーナをみてみんなが微笑んでいた。


食事のあと、エリアーナは使用人一人ひとりに声をかけ、労った。

「ありがとう。あなたたちがいてくれるから、この家は守られているのよ。」

使用人たちは涙ぐみ、屋敷全体が温かさに包まれた。


だが、彼女が最後に声をかけた一人の使用人にだけ、ほんの一瞬、低い声で何かを囁いた。 誰も聞き取れなかったが、使用人の顔がわずかに強張ったようだった。皆は見ていたもののなにも気に留めなかった。


夜、家族で過ごす時間は穏やかだった。

エルンストは妻の笑顔に安堵し、アレクシスは母の隣で誇らしげに笑っていた。

レオンは心の中で静かに誓った。

――この家の温かさを、害してはならない。自分はよそ者なのだ。受け入れられていることに改めて感謝しなければ。


だが、エリアーナが部屋を去る直前、机の上に置かれた書類にちらりと視線を走らせた。

誰も気づかないほどの一瞬だったが、

エルンストの執事は

――エリアーナ様はなにか手紙を待っておられるのだろうか。基本手紙はここに置くから。

だがうれしそうなアレクシスやエルンストを見て、明日確認することにした。


こうしてヴァルモンド家に母が戻り、屋敷は新たな空気に包まれた。

だが、その温かさの裏に、誰も知らぬ影がひそかに揺れていた。


――そしてもうすぐ社交界デビュー。レオンがどんな仮面を被ることになるのか。

呼んでくださりありがとうございました。感想、改善点などあればよろしくお願いします。次はとうとうデビューに近づいていきます。レオンの仮面がどう反映されるのか、そしてレオンが社交界で誰と知り合うのか、楽しみにしていてください。

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