陰謀
「王国の五大軍権貴族のうち、三家を取り込むことに成功したと聞いたが?」
暖炉のそばのソファに座る一人が、部屋の奥に立つ男に問いかけた。
「はい。ですが正直なところ、彼らを説得するのは骨が折れました。へとへとに疲れてしまって」
「何を要求された?」
「三家それぞれに魔剣を三振り。そして、政変後に領地へ干渉しないこと、です」
「魔剣か…。確かに高価なものだ。彼ら自身も政変に参加することを要求したか?」
「はい。彼らも馬鹿ではありません。剣がより多くの血に浸されるほど、力が強くなることを知っていますから」
「だが、その副作用については…忠告する必要もないだろう。どうせその前に、彼らは死ぬ」
「ふふふ、見事です。さすがは、私心底感服している御方です」
「ところで、五家中の三家…ということは、二家は取り込めなかった、ということだな?」
男の顔が曇る。ソファの男は、その表情を見逃さなかった。
「誰だ?」
「そ、それが…申し訳ありません、お方。西部の軍を統括するライト公爵と、中央守備軍を統括するワイズ公爵です」
「正直なライトと忠義なるワイズ、か…」
ソファの男は少し間を置いて、この二人の重要性について考えた。
「次の指示がある」
「御意のままに」
「これをワイズに渡して説得しろ」
ソファの男は魔法で、一つの巻物を男の手に送った。
「これは…」
「ワイズ家の隠された歴史だ。これがあれば、彼らは必ず王国を裏切るだろう」
「こ…このような重要なものを…」
「構わない。私の政変には、彼の助けが必要だからだ」
「あの、一つ質問をよろしいでしょうか?」
「構わん」
「いつ行動を起こしますか?」
「それを聞く必要が?」
ソファの男は少し不機嫌そうだ。
「交渉に有利かと」
「…まあいい。第二王女殿下のことは知っているな?」
「今年十五歳になられる、あの?」
「そうだ。国王は四ヵ月後に、ライト公爵の領地を訪問した際、彼女をライト公爵の次男と婚約させるつもりだ」
「ライト公爵の次男…あの『王国一の文理の天才』ですか?」
「国王は彼を婿養子とし、政務を補佐させるつもりだ」
「なるほど」
男は笑った。
「だからあの時期を選んだのですね…。もし彼が成長すれば、将来、お方の権力を脅かすかもしれませんから」
「そうだ」
「しかし、政変ですか…。宰相殿、一つの国を導く準備はできていますか?」
「当然だ。私はヒール王国を、より良い道へと導いてみせる」




