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神罰

「人間よ、神の力を侮るな。火遊びは身を滅ぼすぞ」


帝国の頂点を極めた魔導学者たちは、目の前の光景を見て顔面蒼白になった。


本来、堅牢無比で五柱の元素神を捕獲するために設計されたコアケージ。しかし今、その中に横たわっているのは光を失った四柱の元素神だけだった。


脱走者は、五柱の元素神の中でもっとも強大な力を誇る水神――ラルス。


彼が残したメッセージは、まるで傲慢な魔導学者たちの顔を平手打ちするかのように、強烈な一撃となった。


「警戒レベル1! 計画:神核に深刻なエラーが発生。全戦闘ユニットはレベル1警戒態勢に移行…繰り返す、レベル1…」


大雨の中、警報が帝都の研究施設に鳴り響き、静寂な夜を引き裂いた。


金髪の青年は、孤独に黒い夜空を漂いながら、雨に濡れて病的に映る華やかな都市を見下ろしていた。


無数のきらびやかな魔導灯が都市の輪郭を彩っていたが、その中に充満する闇と醜さを覆い隠すことはできなかった。


「自己の利益のために、神の力を貪るなんて…」


「な…ぜ、こんなことをするんだ? 君たちは…僕はいったいどこで間違えたんだ? どうしてそんなに貪欲なんだ?」


青年は悲痛な叫びを上げ、涙が雨と混ざり合って彼の頬を伝い落ちた。


空から雷が落ち、まるで青年の叫びに呼応するかのように。


「結局…僕はまた失敗した。君たちがこの貪欲さを乗り越えられるよう、助けることができなかった」


《ラルス様…次は…》


頭の中にいる、いつも彼に寄り添い、共にこの世界を創造した彼の“妻”が語りかける。


「サラ、君も分かっているだろう。もう、時間がない」


青年は右手を見た。ケージから脱出する前に強制的に刻み込まれた魔法陣。無数の冒涜的な魔導文字が描かれ、世界の法則に反する効力を発揮していた。


これは、人類の魔導学における最高の成果「封神印」。時間と共に彼の自主意識と神力を封印し、最終的には意識を持たない、ただ魔導都市にエネルギーを供給するだけの魔力核へと変えてしまう。


――しかも、これは彼がもっとも可愛がっていた学者によって開発されたものだった。


青年の心は深く傷ついた。


彼はその学者を親友だと思っており、惜しみなくあらゆる魔導技術を伝授した。当時、学者が神力の仕組みや封印の可能性について尋ねてきた時、青年は何も疑わずに全ての原理を教えたのだ。


彼はため息をついた。


「君たちがこうなったのは…全部、僕のせいだ…僕が君たちの貪欲さを抑えられなかった…」


《ラルス様、封印はすでに15%に達しました。これ以上行動を遅らせると、魂に永続的な影響を与える恐れがあります》


「ああ、準備はできた」


青年は深く息を吸い込んだ。


「神闘武装を起動…そして…」


彼は少し躊躇したが、やはり口にした。


「…拡張機能:感情遮断を有効化」


漆黒の水流が、生き物のように四方八方から青年の体に湧き上がり、絶えず流れ、形を変え、最終的に完璧にフィットする流線型の鎧を形成した。


稲妻の光の下、鎧は冷たくて息が詰まるような光を反射する。


彼の視線が一瞬定まらなくなったが、すぐに元に戻った。その瞳には、先ほどの悲しみも迷いもなく、かといって普通な感情もなく、まるで精巧な人形のようだった。


「これより神罰を執行する」


感情のない声が青年から発せられ、その冷たさに人々は震え上がった。彼が左手をゆっくりと上げると、夜空から激しく降り注いでいた雨粒が、一瞬で空中に固定され、無数の透明な琥珀へと凝固した。その光景は不気味でありながら、美しかった。


人々は突然止まった雨と、空中に浮かぶ水滴に驚嘆し、中には好奇心から水滴を突く者もいた。


「浄化」


水滴を突いた者の指は、虚無へと消滅した。


青年が腕を振り下ろすと、大雨が激しく降り注いだ。


運悪く屋外にいた人々は、瞬く間に塵と化した。


生き残った人々は頑丈な建物に逃げ込もうとしたが、自分たちの誇る先進的な建築物が、大雨の中で急速に溶解し、崩壊していくのを恐ろしく感じた。鉄筋コンクリートが泥水となって流れ出した。


空中戦艦の金属構造は、大雨の浸食を受けて悲鳴を上げ、ゆっくりと地面に墜落した。


魔導戦機は、離陸する間もなく滑走路上で溶け落ちた。


感情を失った青年は、冷たい目でこのすべてを見つめていた。金色の髪の先端が、爆発の炎に照らされて銀色に反射していた。


雨はますます激しくなった。


そして最終的に、洪水が大陸全体を飲み込んだ。


《警告。封印度は30%に達しました。魂工智能は休眠に入ります…》


頭の中にいたサラが消えたことで、感情遮断が停止し、青年の注意を引いた。


「まずい…このままでは、僕は死ぬ」


彼は魂の痺れを感じ、抑圧されていた生存本能が湧き上がってきた。


「…水神ラルスの名において、世界の真理アカシックレコードに命じる。封神印を治療する方法を提供せよ」


青年はぶつぶつとつぶやき、世のすべての情報を司る記録から解決策を得ようとした。


《アカシックレコードへのアクセス権限はオフラインです。身分を認証してください》


機械的な声が、彼の要求を無情に拒絶した。


青年は、自分の金髪が今や銀色に覆われ、封神印が刻まれた右手も徐々に結晶化していることに気づいた。


「くそっ、封印が進行しすぎたのか?…この手を使うしかない…」


青年は、まだ雨が降り続く空を見上げた。


「水神ラルスは、神の権限をもって異世界転生を執行する」


これは、すべての神々の最終的な命綱だった。他の世界で人間として一生を過ごし、神力を回復させてから元の世界に戻るのだ。


《神力に異常を検出しました…転生後、記憶の欠損が発生します…転生を確認しますか?》


再び機械的な声が響いた。


記憶の欠損…。青年は歯を食いしばり、決意を固めた。


「水神ラルス、異世界転生を確認する!」


《了解》


彼の高らかな声と共に、青年の肉体は崩壊し始めた。


それは血肉が消え去るのではなく、無数の青い光の粒子となり、まるで突風に吹き散らされる星屑のように、彼の最後の悲哀と一筋の希望を乗せて、ゆっくりと上昇した。そして、無限の雨幕に溶け込み、彼が自ら滅ぼしたこの世界から消え去った。



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