褒美
「リズ公爵令嬢、褒美として望むものは何かあるか?」
咄嗟に何も思いつかない。あわあわをする私を見て、父親が代わりに答えてくれる。
「陛下、ありがたき御言葉です。ただ急なことですので、リズも何が望みか分からないようで……。少しお時間をいただければ」
「よい、よい。それで問題ない。……メレディスはどうだ? 今回の遠征と橋爆破の謎解きの褒美として何か……」
そこでメレディス王太子が答える前に、国王陛下のはちみつ色の瞳がキラキラと輝いた。そしてこんなことを言い出す。
「そういえばメレディスは、グレーマン討伐に追われ、婚約者がまだいないのう。……ハリス公爵は、リズ公爵令嬢の婚約者を募集しているとか」
まさか!と思う私に対し、父親は背筋をシャキーンと伸ばし「そうでございます、陛下!」と返事をしている。
「ならばどうだろうか。メレディスとリズ公爵令嬢が婚約するのは?」
◇
当時十五歳の私にとって、その経験からとても二十歳に見えない貫禄を持つメレディス王太子は、父親と同じ「大人」だった。異性というより、年上のものすごく有能でカッコいい王太子様だったのに。
まさかあの国王陛下の思い付きのような言葉通りに、婚約してしまうなんて……!
婚約したものの、メレディスは婚約契約書にサインをすると、私の頭にぽすっと手をのせた。そして「リズ、君はまだまだ子供だ。十五歳だろう? わたしはしばらくまたグレーマンを追い、国をあける。君が大人になった頃にもう一度会おう。成長した君が、わたしを異性として認識できるようなら、そこから始めよう」と言うと、あっさり出発してしまったのだ!
これにはビックリだった。
ビックリだったが、婚約契約書は締結され、私は王太子の婚約者になっている。そこからは王宮に住み込みとなり、王太子妃教育に追われ、メレディス王太子が支援している活動を手伝うようになった。
メレディス王太子が支援している活動、それはグレーマンの自立支援プログラムだ。
捕えたグレーマンには刑が科され、監獄に収監される。そこで労働に従事することになるが、刑期を終え、模範囚だった場合、国内で仕事も得ることができるようになっていた。定住でき、職を得ることで、もうかつてのように強奪をすることもなく、一般市民としてこの国で暮らす元グレーマンは、何人もいた。
この仕組みを考案したのも、メレディス王太子だった。
グレーマンがこの国で善き市民として生きて行くために。彼らの必要とする教育の機会を与え、労働の場を紹介し、悩みに耳を傾ける活動。これに王太子妃教育がない日には、参加するようにしていた。
その結果。
もはやヒロインともその攻略対象ともノータッチで済んでいる。忙しすぎて、ヒロインをいじめる暇などないのだ。でもヒロインのように目立つ女子に文句をつけたくなる令嬢はいるようで。リズが悪役令嬢にならずとも、どこぞやかの令嬢が暗躍してくれていた。
そのおかげもあり、私はメレディス王太子の婚約者として忙しいが、ゲームの進行とは無縁な日々を送ることができていた。


















