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転生したら命を狙われたので最弱スキル「創作」を使って抗おうと思います  作者: かつどんの端っこ
2.グレンと怪しげな学院
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6.弱者の決意


彼女は自分の動かない足に戸惑い必死に動かそうとしたが、足は地面と一体化したかのように動かなかった。


そしてとあることに気づく。色白の男は笑っているのだ。死のリスクがあるこの戦いは普通なら相手を倒すことに必死で、笑っている場合ではないはずである。


だがこの男はずっと笑っている。つまり彼には笑えるほどの余裕があるということだ。


彼女の実力と彼の実力では雲泥の差なのだ。


「これはタイムマジックというスキル。文字通り時間を自由自在に操ることができる。」


彼のその能力は異常である。時間を止める、そんなものは聞いたことがなかった。それもそのはずである。彼の魔法の能力は客観的に見ても非凡である。

このスキルの対処法を知らない以上、時間が止まっている状態で魔法がつかえない彼女には何もできない。



「ここで、終わるのか…。こんなところで終わるわけにはいかないのに…。」

唇を噛む。

だが、彼女の声は誰にも届くことはない。

男は少し不満そうな顔で言った。

「お前でも所詮はこの程度というわけか。期待していたが、少し残念だよ。」


沈黙を否定するかのように男は続けて言う。

「さて、お前を失うのは惜しいが、これで終わりにしよう。さようなら、2号くん。」


男は2号に向かって手を振りかざす。もうだめだと感じ諦めた、


その時。


(なんだ?急に視界が…身体が嘘みたいに軽くなって…)


「なにぼーっとしてるんだ!早く避けろ。」


一号の声を聞きはっとした彼女は男の攻撃を間一髪で避けることができた。


「なんとか間に合ったか。」


「1号といったか。お前は素晴らしいよ、このスキルをとくのは凡人には到底できない。お前の顔、覚えておこう。まあ少し限りの命だがな。


「お前のスキルも攻略され、2対1というこの状況でまだそんな態度が取れるとでも?」


彼女にはわかっていた。1号の発言はもっともなことだが、彼は自分たちのような半人前では足元にも及ばないほど強いというのが戦ってみた感想だった。戦おうとするのは無謀だ。


「ああ取れるとも。それは君が一番わかっているんじゃないかな、2号くん。」


「ええそうね。でもその舐めた口、今すぐ塞いでやるわ。」


(この男が話し合いに応じるとは思えない。) 

一見すると落ち着いているようだが、あの眼鏡越しの赤い瞳から感じ取れる心の奥底には狂気に満ちた感情が渦巻いているように感じられることは一号には分からなくても彼女には分かった。

だから勝てないと分かっていても彼女はこのような方法をとるほかなかった。


「頼もしいことを行ってくれるじゃないか。見直したよ。じゃあこれは止めることができるかな!」


男はそういって、白く弾丸よりも少し大きなものを一号へと放つ。あまりの速さだったのでフォローに回ることができなかった。無詠唱を扱うぐらいではもはや驚かなかった。


「一号、避けて!じゃないと死んじゃう!お願い。」


どかん!という大きな爆発音とともに煙が舞う。一号が被弾しているかしていないかは視認していなかったが、結果は悲惨なものであるということは彼女にはわかっていた。


「一・・・号?」


ボロボロと涙が溢れてきた。傷だらけの一号、もう取り戻すことができないのか?あのとき、呆然と突っ立っていたことを彼女は後悔する。


男は依然として冷淡な態度で2号のへ一瞬のうちに接近し、こう呟いた。


「どうだ?戦友を汚された気持ちは。」


「…。」


「ああそうそう、テレパシーは結界によって封じていたから、連絡しようとしても無駄だよ。」


「…。」


「そうだその顔だ。その絶望に満ち溢れた表情が私は大好きなんだ!私はいま気分がとても良い。どうだすこし話をしないか?」


「・・・。」


「無言は肯定とみなす。さて私の本当の姿を君は知っているかな。私の名前はエドワード。エドワード・アンドレス」


彼は自分語りに熱中しているが、彼女にとっては彼自身のことなどどうでもよかった。彼女の脳内に溢れているのは怒りさえ湧いてこないほどの殺意と悲しみ、ただそれだけだった。


でも彼は倒せない。その事実は変わらない。だからこのどうしようもない殺意と悲しみの向かう矛先があの男だとしても、放つことはできない。無力な自分が悔しかった。


血だらけでもうろくに動けそうにない一号がこちらに向かって一生懸命手でバツをつくり、合図をしている。


撤退しろ、でなければ死んでしまう。バツにはそのような意味が含まれている。


仲間をおいて逃げる。これがどんなに冷酷で、無情なものかは明白だ。

けれどもそれが彼女の最善の選択である。全力で逃げて、グレンに報告し今後の策を練る。生存率が、ゼロから50に上がるのだ。ありもしない可能性を追い求めるよりもずっといい。 


実際彼女も最善な選択をするか、正義を貫くかで揺らいでいた。


(この男の話のネタももうすぐ尽きる。時間がない。早く決断しないと最悪の事態になる。)


(…やっぱり逃げよう。一号が救ってくれた命を無駄にするわけにはいかない。)


そう考えた。


「スキル、テレポートを発動!」


スキルの発動直前、男はあきれた様子で言った。


「仲間を置いて自分だけ逃げるような臆病者には興味ないね。今回はお前のことは見逃してあげるから二度と私の前に現れないでくれ。」


テレポートした先は真っ暗な部屋だった。

ここがどこなのかを確認するために、茶色の長い髪をかきあげ、目を凝らして見た。


驚くべきことに、この場所は彼女がテレポート先に設定した、フィルフェール学院校門前とは全く違った場所だった。


(おかしい、なぜテレポートが失敗した。これもあの男が介入しているのか?)


スキル構築中に男が介入し、式を捻じ曲げた可能性を疑ったが、それもおかしな話だ。興味がないといった手前姑息な真似をするとも思えない。


と、あれこれ考えている最中、ふと少し先になにかがあるのを見つけた。


「…鎌?」


何なのかを確かめるためにその物体に手を伸ばしたその時、


「それに触ってはいけない。それは人のものだからだ。」


あまりにも突然のことだったので、足が鎌にあたって倒れそうになる。


「誰だお前は。返事次第では無傷では済まないぞ!」


そう言って声がした方へ向こうとしたが、謎の力によって止められてしまった。


(何だこの力は。あの男がアリに思えるほど強い。物理法則を逸脱している!)

体を捻じ曲げて必死に後ろをむこうとしたが、少しも動かなかった。


「頑固なやつだな、いいからこちらを見ずによく聞け。」


「お前は何者だ。その力をもってして、なぜ殺そうとしない。殺るならはやく殺りなよ。」


はぁ、というかすかなため息とともに声の主は言う。


「私は敵ではない。お前のことが少し気になってこの場所に呼んだ。魔法式を捻じ曲げたのも私だ。」


「今私が何をしようともどうにもならないから信じるけど、私を呼んで何をしようってわけ?仲間を見捨てた私を嘲笑おうとでも言うの?」


「見えてない状態で言うのもひどい話だが、私がそんなに性格が悪く見えるか?むしろ仲間のために逃げるのは最善の策だと思っているがね。」


「…そう。そうなのね。」


でも、と彼は続ける。


「お前の”せいで”彼女は死ぬ。」


「違う!私は彼女のために」


咄嗟に否定する。


「でも、お前が逃げて彼女が死にそうなのは事実だ。」


違う、これでよかったんだ。それが彼女のためであり、私のためなのだから。そう唱え続ける。


「お前は、自分が何もできないからと仲間を見捨て、自分だけ逃げてきた臆病者だ。」


違う。私は正しい選択をしたんだ。臆病者なんかじゃない。


「そしてお前は、正義を貫かなかった。アンドレス家の"恥"だ。」


「違う!」


2号は後ろを振り向くと同時に拳を振りかざす。けれど、彼女の攻撃は何も無い空間のなかで防がれてしまった。


「お前は本当は彼女を助けたい。違うか。」


「…。」


否定できなかった。だって彼女は大切な仲間なのだから。


「今お前は、彼女を助けたかったが自分が弱いからやむを得ず逃げた、と考えているだろう。厳しいことを言うが、そのような行動はこれから先何回もあるだろう。なにか究極的な選択を強いられたとき、お前は必ず自らを卑下し、逃げる方を選ぶだろう。そしてそれは消えない傷として一生お前の心に刻まれるだろう。後悔という形で。」


2号は膝から崩れ落ちた。床の上に水滴が落ちる。


ああ、やっぱり変わっていなかったんだ。私は依然として無能で臆病でどうしようもない人間だったんだ。


涙が止まらなかった。あんなにも自分を大切にしてくれたのに、いざその人が傷ついたら何も出来ない自分が情けなかった。


「生まれ変わりたいか?恩を返したいか?彼女を助けたいか?私はそれを問うためにここまで話を続けてきた。」


「…こんな私でも、変われるんでしょうか。」


「それはお前の気持ち次第だ。助けたいという気持ちが強ければきっと変わることができる。」


優しい声だった。背中をそっと優しく押してくれるような、そんな声だった。


「変わりたいならばいけ!立ち上がれ。弱者一人も守れないでどうする。」

         

「でも、どうやってあいつに勝てば…。」


そういった瞬間、前にあった鎌が宙に浮き上がり、彼女の目の前に来た。


「これを使え。」


「でも、これは人の所有物なんじゃ…」


「大丈夫。彼は分かっているさ、お前がこれを使うことも。」  


涙を拭う。そして彼女は眼の前にある鎌に手を伸ばした。もう決心はついていた。


「さあ、いけ!私からお前にひとつプレゼントをしてやろう。仲間を守る"勇気"を。」


そして彼は何かの魔法式?のようなものを鎌に吹き込む。


「コール、権限レベル1の許可を申請、権限レベル1を行使。死神の鎌の使用者権限レベルをレベル1に変更。装備者ステータスの成長率を大幅増加。」


「何かは分からないけど、ありがとう。」


「さあいけ、テレポートを使うのだ。」


2号は手を伸ばし魔法式を展開する。  

彼には感謝しなければいけない。そして鎌の所有者へもだ。 


「スキルテレポートを発動!」


(あの男は、必ず倒す!)

そう彼女は誓った。

















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