第一部 公現祭篇 その二
すべてがお終いのように見えるときでも、
まだまだ新しい力が湧き出てくる。
それこそ、お前が生きている証なのだ。
もし、そういう力が湧いてこないなら、
そのときは、すべてお終いだ。
もうこれまで。
フランツ・カフカ
2 姫と魔女「三十五名」
アントピウス聖皇国。
白い小石を敷き詰めたような鱗雲の下、昼を告げる鐘が、弔うように鳴る。
「そうでしたか。永津真天様が……なんという痛ましいことでしょう」
聖都アスクレピオスの主城レミエル。すなわちオファニエル聖皇の御所。
「皆様のために犠牲となった彼の者に神の祝福がありますことを。そして生き延びた皆様にも神の祝福を」
大理石と象牙で造られた玉座の間にオファニエル聖皇がいる。彼は珍しく立ち上がり、目に涙を浮かべて召喚者たちの報告を受けている。
オファニエル聖皇の前にいる召喚者は全部で八名。
風属性の支援魔法を扱う踊り子の永津朱莉。
光属性の回復魔法を扱う薬師の赤荻晴音。
火属性の攻撃魔法を扱う剣術士の竹越沙友磨。
土属性の攻撃魔法を扱う拳闘士の大羽剛。
闇属性の支援魔法を扱う盗賊の宮良翔平。
火属性の攻撃魔法を扱う弓術士の古舘華。
水属性の回復魔法と支援魔法を扱う魔法使いの浅野田結芽。
光属性の攻撃魔法を扱う槍術士の奥宮櫂成。
八人とも命からがらアルビジョワ迷宮を脱出したものの、迷宮を出てまもなくシータルの森の中で一斉に気を失っている。
原因は吹き矢による毒攻撃で、犯行に及んだのは迷宮の入口そばで隠れて待機していた森の部族にしてマソラの捕虜を演じた例の十六名だった。
十六人の亜人族と人間族は眠らせた召喚者八名をシータル大森林から運び出し、自分たちから外した疑殺の枷と〝贈り物〟をつけて神聖都市ウーリャオの肉屋の裏に捨てた。
八人の召喚者はウーリャオ村の目撃者にそのことを教えられた。
召喚者たちはその後ウーリャオ村から転移魔法によってアントピウス聖皇国に戻り治療を受け、どうにか一命をとりとめた。
ちなみにその時、宮廷治癒士たちは彼らの腹部の肉に異物が埋め込まれていることに気づく。
抜糸し切開して取り出してみるとそれはブタの骨片で、骨には「弱き者よ。ブタのように永遠に生きろ」とアントピウスの言葉で彫られていた。森の民の嘆きと怒りがたっぷり詰まった贈り物を渡された八人は何も言えなかった。
その八人が今、聖皇の前で、ことのあらましを報告した。
もちろんモンスターハウスでのやりとりはあやふやにしている。
「永津真天が俺たちのために残ってくれた」
と竹越が声を詰まらせながら言った途端、赤荻晴音は身も世もなく慟哭し、永津朱莉も顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくった。あとの五人は沈鬱な表情で、竹越の真実のような嘘を黙って受け入れた。
オファニエル聖皇は八人の傍に近づいていき、彼らの肩に手をのせ、幸運値を一時的に上げる秘跡魔法を一人一人に掛けつつ、ねぎらいの言葉を繰り返しかける。
その慈悲深い様子に赤荻と朱莉以外の六人も涙ぐむ。
「しばしの間、この地で心身の傷を癒してくださいませ。しかる後、新たな聖務に皆様が携わってくださることを期待しております」
徹頭徹尾丁寧に八人に接した後、オファニエル聖皇は召喚者たちを玉座の間から下がらせ、彼ら八人の拠点であるゼデギエル城に戻す。
「やはり、この聖務()せいむには無理がありますね」
八人の召喚者が去ったあと、象牙の玉座に戻ったオファニエル聖皇は玉座の傍にずっと控えて立っているマリク・ブロイニング枢機卿に声をかけた。
マリク・ブロイニングLv51(人間族)
生命力:510/510 魔力:3500/3500
攻撃力:50 防御力:60 敏捷性:20 幸運値:30
魔法攻撃力:4800 魔法防御力:5700 耐性:火属性
特殊スキル:?????????
「可もなく不可もない召喚者集団の使命はかねてよりアルビジョワ迷宮の探索と決まっております。彼らはその全生涯をかけて迷宮の調査と最下層への到達を目指す天命を持ち合わせている分、他の召喚者たちよりも恵まれていると思います」
「恵まれていると言うのなら、なぜ最初から召喚者たちへその真実をあなたは伝えないのですか?」
「それは……」
「私はこれでも聖皇です。たとえ歴代の聖人が決めたこととはいえ惨い慣習は私の代で破棄いたします。嫌だと申すならあなたが残りの生涯をかけてアルビジョワへ一人潜りなさい」
静かな怒気を前にマリク枢機卿は低頭する。長い沈黙がある。
(誤算であった。まさかいきなり二十六階層を目指して進むほど浅はかとは。普通であれば一階層降るたびに己のレベルの低さと魔物のステータスの高さ、それに物資の不足で仲間ともども引き返す思案を巡らせるはず。それなのに……聖皇様の言うように、最初から真実を告げた方があるいは良かったのかもしれない。一生をかけて穴へ潜り続けろと。そうすれば無理無謀に及ばなかったかもしれぬ。それにしても度し難いほど浅はかであった。魔法素質と身体的素質が並大抵より優れているだけの、所詮は子どもだった)
長い沈黙の間、マリク枢機卿はあれこれ自分の言い分を考えてみたが、「召喚者は使い物になるまではこちらが手取足取り面倒を見なければダメらしい」という結論に至り、考えるのをやめた。
「とはいえ、二十一階層から八人も戻ってこられるとは、やはり奇跡は続いているのかもしれません」
オファニエル聖皇の声で、マリク枢機卿は我に返る。
「そういえば確かにそうです。召喚者の血を引く者たちで構成する聖シャルム騎士団も聖アルタヤ騎士団も二十年ほど前、百人規模で迷宮に挑みましたが十五階層で壊滅の憂き目を見ております。また、召喚者とのつながりはありませんが、聖鸛騎士団の戦士長バルテ・ヨシャファトが単独で二十六階層まで行って戻って来た記録が二百年ほど前にあります。しかし彼の場合、迷宮から戻ってきた際は五体満足ではなく、ほどなく亡くなられたとのことです」
「確かに、そのような記述が書庫にありましたね。もっとも、その書に魔物の巣があることは記載がなかったように思われますが」
「ええ。間違いなく新たな発見です。これで死んだ召喚者も少しは報われるでしょう」
「ナガツ、マソラでしたか。どのような召喚者だったのですか?」
「土属性の支援魔法、とくに収納魔法を心得る者でした。他の召喚者と異なり、捉えどころのない青年で、戦闘は得意ではなく、出発時のレベルは5。収納魔法の取得者がほかにおらず、あくまで物資の運搬係として、先ほどの八人の編成に加えました」
そこまで言って、自分の言葉に不意を打たれるマリク枢機卿。
(待て……レベル5?他の召喚者のレベルはここを出発する時点で15近くあったはず。ということは同行者設定による経験値共有すら仲間に拒まれていたというのか……なぜもっと早く気づいてやれなかったのだ、私は)
かつて無能な上官の犠牲になって戦死した一人息子を思い出してしまった枢機卿の目頭が急に熱くなる。
「そうでしたか。気の毒なことをしました」
「戦闘面では弱者ではありましたが、それでも最後まで責務を全うしたと言えるでしょう。彼の者の名誉のためにもう少し付け加えることがあるとすれば、この度の召喚者たちで編成する四つの班のうち、ドロップアイテムと魔物の素材の回収率及びアイテム換金率が一番高かったのは永津真天の所属する班です。収納魔法が使えたという点はもちろんありますが、素材に関しては職人ギルドが目を見張るほど加工状態が良かったようです」
感情の抑揚をできるだけ殺してきた枢機卿が、言葉を強める。
「思うに永津真天は職人としてのスキルもあるいは持ち合わせていたのかもしれません。能力で人を計るのは神に仕える者として憚られますが、やはりそれでも、惜しいことをしましたと聖皇様に申し上げておきたいです」
マリク枢機卿は弔辞を述べる。
「そうですね。……そして彼のような存在の上に、聖皇国は成り立っています」
「はい。奇跡たる召喚者の代償の上に」
二人は玉座の間に描かれている壁画を眺める。
数千年に及ぶこの世界の歴史を記した壁画。
そこには歴代の聖皇が異世界から人間を召喚している様子も描かれている。
そしてその召喚者たちが様々な武器を手に魔物と戦う様子も。
「このたび、三十六名も同時に召喚できたこと自体が、奇跡でございます」
聖皇の執り行う召喚の儀の図を見つめながら、マリク枢機卿がつぶやく。
「あなたもそう思いますか」
魔物と必死に戦う召喚者たちの絵を見ながらオファニエル聖皇が返す。
「日に三度。そして千度呼び招いて、無事に召喚できるのは一人ほど。それが召喚の儀でございます。それが一度に三十六名も呼び招いたのです。奇跡でなくて何でありましょう」
「ええ、そうですね。まさに奇跡でしょう。これでしばし召喚の儀を行わずに済みます」
「……」
オファニエル聖皇の目は魔物の絵から離れない。
異世界からの召喚に失敗した者のなれの果てから、離れない。
「無事に召喚できなかった者たちの堕ちるところが……」
「聖皇様。どうかそのことはおっしゃられますな」
「私は、罪深き罪人です」
「そのようにご自分を責められてはなりません。これは必要なことなのです」
「魔物がいるからそれを葬るべく召喚者を招く。召喚者を招くから魔物が生まれる。むごい因果。むごい必要悪です」
「……雨が降り始めたようです」
マリク枢機卿は窓の外へと目を向ける。言われて聖皇も窓の方を見る。
「永津真天のために、浮かばれない召喚者たちのために天が泣いているのでしょうか」
「大地を潤し、新たな命を芽吹かせるためでしょう。この恵みの雨を東の砂漠地イラクビルにも分けてやりたいものです」
話題をどうにか逸らすため、マリク枢機卿はアントピウス聖皇国に東隣するイラクビル王国の近況報告を始める。
イラクビル王国はその東の国境を魔王領であるバルティア帝国と接している。
国境地帯では紛争が絶えず、異世界からの召喚者の多くがそこに派遣される。
近況報告はその話題に加えて、魔王軍が放ったイナゴの大群に及ぶ。
農作物を食い荒らすイナゴの駆除に大量の兵士が駆り立てられている。しかし普通の人間族では手が足りず、亜人族と召喚者の手をこれまた借りているという報告だった。ただその話を聞いているときも、オファニエル聖皇の目はぼんやりとしている。
魔物と召喚の因果から心が戻ってきていないことに気づいたマリク枢機卿は仕方なく、話題を戻す。
「このたびの召喚は奇跡が重なりましたゆえ、しばらく召喚は控えましょう」
枢機卿は聖皇が先に言った提案を呑んだ。
「マリク枢機卿」
「なんでございますか?」
「なぜこのたびの召喚はこれほど成功したのでしょう?」
窓の外で音もなく降る雨の糸を見るともなく見ながら聖皇は改めて尋ねる。
「ひとえにオファニエル聖皇様の尊きお力と深き信仰心に対する神からの賜物でございましょう」
「私はいつもと同じように儀式を行いました。それこそ日に三度の聖餐と同じように」
「……」
確かにマリク枢機卿は奇跡の起きた儀式の場に立ち会っている。
その召喚の儀はいつも通り行われた。
結果的に、三十六人の召喚者と三百人近い魂の転生する光を見た。
やがて魔物になる転生者が放つ光の少なさ、そして三十六人もの召喚者にひたすら驚愕し、神へ感謝の祈りを捧げ続けたのをマリク枢機卿はまざまざと思い出す。
「このたびの転生者たちはシュウガクリョコウなる行事で移動している最中だったそうですね」
「はい。シンカンセンという筐体の中に三百七十名近くが一緒にいたとのことです」
「そしてその際、我々が執り行った召喚の儀によってこの世界に来られた……」
「ええ。シュウガクリョコウという行事やシンカンセンという筐体にあるいは何か原因があるのかもしれません」
「それは当然最初に疑いましたので、あなた方に繰り返し聴取させたはずです」
「はい」
「ほかにまだ、何か私に言っていないことはありませんか?」
オファニエル聖皇の目が鋭くなる。
「申し上げていないこと……」
マリク枢機卿はあれこれ悩んだ末、とうとう重い口を開く。
「実は、一つだけ不思議なことがございました。当初は些末なことだと思いお耳に入れなかったのですが」
「どのようなことであれ、召喚者に関することは報告してほしいとしつこく伝えておいたと思いますが」
聖皇の声が、低くなる。
「申し訳ございません」
「ふう……もうよろしいです。とにかくその〝些末なこと〟を聞かせてください」
「はい」
マリク枢機卿はオファニエル聖皇の前に移動し、跪き説明を始める。
外では雨脚が強くなり、遠雷が轟き始める。
「三十五名?」
「はい。確かに三十六名全員の検査を行ったのですが、彼らの魔法適性を測定した魔道具には三十五名分しか記録が残されていなかったのです」
能力検査。
異世界からの召喚に成功した召喚者には、精密な能力検査が実施される。
今回もアントピウス聖皇国ではそれが実施された。むしろ三十六名もの召喚成功など過去に例がなかったため、検査は念入りに行われた。
その検査項目の中に、魔力値と魔法属性を測るものがある。
使用する魔道具は召喚者たちの魔力値と魔法属性を測れるが、そこに個人の名前や検査の順番などは残らない。残るのは検査を行った回数のみで、検査者は魔道具で測定された個人情報を紙に記録するだけだった。
三十六名の検査を行ったにもかかわらず、検査回数は三十五回――。
つまり一人分、検査記録がない。
そしてそれが誰なのかをたどるすべがない。
「程度の差こそあれ、召喚者三十六名は全員魔法を使えます。魔道具の中にどの属性を何人測定したのかが残せれば測定できなかった者を絞れるのですが、それは現時点の技術では行えません。よって検査記録がない者が誰なのかがわからないのです」
「魔道具が故障していたという可能性はないのですか?」
「測定前に何度も動作確認を行いましたので、その可能性は低いと思われます」
「では……偶然でしょうか?」
「わかりません。ただひょっとすると、今回の奇跡と関係があるのかもしれません」
「検査にあたった者たちの証言を中心に、もう一度調べなおしていただけませんか?」
「それなのですが……」
窓の外が落雷で光る。少し遅れて轟音が玉座の間を襲う。
「三十六名の検査に立ち会った者全員が、検査当日の記憶が曖昧なのです」
玉座の間で空気とならねばならない親衛隊たちが、鳥肌を立てる。
「マリク枢機卿。……それのどこが〝些細なこと〟なのですか?」
オファニエル聖皇はマリク枢機卿に苛立ちの眼差しを向ける。
マキディエル・オファニエル Lv模糊(聖皇継承者)
生命力:逡巡 魔力:須臾
攻撃力:瞬息 防御力:弾指 敏捷性:刹那 幸運値:六徳
魔法攻撃力:虚空 魔法防御力:清浄 耐性:第十四正典
特殊スキル:多婆羅
事の深刻さを途中から痛感し始めていたマリク枢機卿は汗を浮かべ、すでに地面に頭をこすりつけている。
「偶然がそのように重なることはあり得ません。……召喚者の中に異質の魔法使いが混じっている。しかもその者は高い能力を秘めていると思って間違いないでしょう」
「はい!」
「それはひょっとしたら今回のアルビジョワ迷宮で亡くなった永津真天様かもしれません。しかしそうでない可能性の方が明らかに高いと私は思います。残された三十五名の召喚者の方々を以後、注意深く監視してください」
「承知いたしました!」
「ど、どうしよう……すごいこと、聞いちゃった」
アーキア大陸北東端、ティオティ王国。
アントピウス聖皇国と複数の転移魔法陣を経由してつながる神聖都市ベネショフ。
都市の上空はアントピウスとは打って変わり、抜けるようにどこまでも青い。
(永津君死んじゃったとか、すごい魔法使いがウチらの中に隠れてるとか……どうしよう……どうしよう……)
オファニエル聖皇のいる玉座の間に詰める近衛隊の兵士一人の甲冑に、闇市で買った盗聴魔法具を仕掛けた田久保日葵は青ざめた表情でうろたえる。
好奇心が抑えられない元高校生のラクロス部部長は大陸最大の宗教団体の総本山の盗聴という禁忌を犯し、元同級生の死を知った。
「ねえ黛さん黛さん!」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと聞いて聞いて!」
秘密を一人で抱えることのできない田久保は同じくティオティ王国に派遣されている黛明日香に盗み聞いたことをさっそく全部話してしまう。
「盗聴魔道具!?そんなの仕掛けてることばれたら大変なことになるからやめなよ!」
刻みたくあんとマヨネーズの入ったコッペパンをボリボリ食べていた黛は口にマヨネーズを付けながら慌てて言う。
「う、うん。もうこんなことしない。なんか怖くなってきちゃった。あとでどっかに捨てる!」
黛はあきれながらため息をつく。
「それにしても、永津君……」
黛の表情が曇る。
「うん……アルビジョワ迷宮で、みんなの犠牲になったって……」
同じくしんみりとする田久保。
それを見ていた黛が優しく声をかける。
「くよくよしても仕方ないよ。永津君のことはすごく悲しいけれど、永津君の分まで頑張るしかない」
「うん。そうだね」
「あとはヤバい魔女とかだけど、気をつけよ」
言って、黛がコッペパンをほおばる。
「うん」
「みんなのところに早く戻ろう」といって、食べ終えた黛が手をパッパとはらい、先に歩き出す。
「ねえ黛さん。なんで魔女ってわかるの?」
「へ?」
不思議そうな顔をする田久保が質す。
「ヤバい魔女って……魔法使いだっていうのはわかるけど、女なんて言ってないよ私」
「だいたいそういうのって女かなと思って言ったの。勘だけど、女子じゃないかな」
口についたマヨネーズに気づき、指で拭いながら黛が返す。
「あ、そっか。でもわかるわかる。なんとなくそういう悪そうなのって魔女だよねきっと!」
「でしょ?たぶんこんな感じで目が吊り上がってるから」
「あはは!そんな女子うちの学校にいないから!黛さんの変顔ウケる~っ!!もっかいやって!」
キャッキャ騒ぎながら田久保と黛は仲間の召喚者の元に戻っていく。
「おう!どこまで行ってたんだお前ら」
召喚者の一人にして同級生の小貝相登が田久保と黛に声をかける。
小貝相登 Lv19(召喚者)
生命力:1000/1000 魔力:320/320
攻撃力:900 防御力:700 敏捷性:100 幸運値:20
魔法攻撃力:70 魔法防御力:300 耐性:光属性
特殊スキル:叡砌拳
田久保日葵 Lv18(召喚者)
生命力:500/500 魔力:550/550
攻撃力:150 防御力:220 敏捷性:40 幸運値:50
魔法攻撃力:300 魔法防御力:300 耐性:風属性
特殊スキル:青南風
黛明日香 Lv14(召喚者)
生命力:580/580 魔力:430/430
攻撃力:180 防御力:180 敏捷性:70 幸運値:800
魔法攻撃力:190 魔法防御力:190 耐性:水属性
「ちょっとそこでガールズトークしてただけ!」
「嘘つけ。どうせトイレ行ったけれどウンコがでかすぎて流れなかったんだろ」
「エッチ!ヘンタイ!バカチン!そんなんじゃないし!ねえ黛さん」
「そうそう。ウンコでかすぎとか、ほんと男子はデリカシーないんだから」
「わりぃわりぃ。あっ、そうだ。ちょっとマジな話だ。落ち着いて聞けよ」
突如小貝は真剣な顔つきになって二人の顔をかわるがわる見る。
「何?どうしたの……」
不安そうな表情を浮かべる田久保。
その田久保に密着し、後ろから両肩に手をかけて同じような表情を浮かべる黛。
「ついさっき、聖皇様から使いの兵士が来てよ。ほら、永津真天っていただろ?あいつがその……死んじまったって」
「ナガツマソラ?誰それ?」
田久保がキョトンとした表情で小貝に返す。
「ひっでぇな!いくら他クラスの奴だからって一緒に召喚された仲間じゃねぇか」
「そうだっけ?ごめん。とにかく、ナガツマソラ君っていう同級生が死んじゃったの!?」
「シータル大森林のアルビジョワ迷宮に俺達みたいに九人で派遣されて、永津が魔物に襲われて死んじまったらしい。俺たちも魔物には十分気を付けようぜ」
「うん。わかった。ねえ、黛さん」
「何?」
「黛さんはナガツとかいう男子、知ってる?」
「私も他クラスの男子のことはよく知らないな。ごめんね」
「そっか。私もだよ。でもなんか、引っかかるんだよね」
「何が?」
「えっと~。うまく言えないんだけど……なんか聞いたことがある気がするんだよね。ナガツマソラって名前」
「へえ。あ、わかった。本当はヒマヒマの片想いのヒトとか?」
「違うよ!そんなんじゃなくて…………ダメ。思い出せない。そういえばさっき向こうで何の話、してたんだっけ?」
「しっかりしてよ。シカの睾丸を間違えて食べたって話をしてたでしょ?」
「あっ、そうそうそれ!あれ本当にびっくりだった!知らないで料理で出てきて食べちゃってさぁ……」
(記憶消去及び改変、終節……)
田久保の肩に手を置く黛の瞳が赤く光る。
黛明日香 Lv14(召喚者)
生命力:580/580 魔力:430/430
攻撃力:180 防御力:180 敏捷性:70 幸運値:800
魔法攻撃力:190 魔法防御力:190 耐性:水属性
特殊スキル:止血
(信号波、搬送波、変調呪式、増幅呪式、固有魔力波確認……自壊信号送信………固有魔力波の消滅を確認………睾丸だけじゃない。シカのあらゆる部位の味を人に語れるほど知り尽くし、しかも大抵の動物も魔物も即座に精密解体ができる、不眠不休の収納魔法使い。それが早々に死ぬなんて……)
瞳の赤い光を鎮めた黛は歩きつつ、田久保からこっそり掠めた盗聴魔法具を右手の中で粉々に砕くと、他の仲間のもとへと戻っていった。
clamare