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全てがごそう

作者: 所 滝高

信号待ち。死刑執行の場所へと向かう護送車から逃走を試みた囚人の男。血眼で捜索されているであろう道中、物陰でその男の前に突如として現れた悪魔。

幻覚か現実か。刻一刻と迫っていた死に護送車からの逃走。精神的にも極限状態にいる男。

『俺の死はいったい何時だ』

悪魔に対し叫ぶ。錯乱する男に対し呆気にとられた悪魔。それに対し再び。

『なんだその小馬鹿にした顔は』

悪魔は男を宥めつつ、自分の姿が男に見えている事を嬉々と心の内が弾む。懸命の説明も、俄然として男は『何時死ぬんだ』と顔を強張らせ激昂している。『死?』

悪魔は腕を組み、目線を右上にし、思考を巡らせる。

『俺を迎えに来たんだろ?』

と、悪魔が思考を巡らせる間も不機嫌に顔を強張らせている。そこで漸く悪魔は気づく。

『貴方が言っているのは死神、私は悪魔』。

その言葉を聞いた男は、一瞬にして吊り上がった目尻が元の位置に戻り、表情のない人形のような眼になった。

『悪魔?』

男が悪魔にそう尋ねる。

『そう、私は悪魔』。

そのキザな返事に対し、困惑の表情。しかし、漸く先ほどより落ち着いた表情に戻った男を確認した悪魔。『私の事が見えるのは邪悪な心を持った人のみ。良心を持てれば自然と私の姿が消えて無くなります』

『嘘つけ』

捨て台詞を吐き悪魔の前から離れ逃げ出そうとした所を悪魔が男の腕を掴む。

『離せ』

と悪魔が掴む手を振り解いた所に配達のバイク。男は道路に飛び出した所をバイクと正面衝突。それに加え、悪魔から振り解こうとしてバランスを崩した体勢からの正面衝突で頭を強く打ち倒れた。

最後を悟った男は倒れた状態から悪魔に対し、声を振り絞るように捨て台詞。

『お前、やっぱり死神じゃないか』。


救急車が到着後、対応出来る病院に向かう筈が何かの手違いで別の救急病院へ。勘違いに気づいた救急隊員。焦りからか、向かう筈だった救急病院に近道で向かい直すもその道が渋滞で立ち往生。男は倍以上の時間を要し漸く病院に到着。懸命の手術も手遅れで翌日死亡を確認。

男の誤想による振る舞いに、救急隊員の誤送が重複。それを確認した悪魔。

『だから言ったじゃないですか、私は悪魔だって』。

『私は、邪悪な心を持った人間に近づき悪を誘発させる事は可能。貴方が邪悪な心を持ってさえいなければ私の姿も見えなかったし、こんな事にもならなかった。その証拠に、私は道路に飛び出しそうになった貴方の腕を掴み助けたじゃないですか』

悪には悪。磁石のように引き合うもの。

『私は貴方の悪を誘発させる為だけに近づいただけ。一連の出来事は貴方の誤想が招いた過ち。それと、護送車から脱走させたのは私の仕業。ルート通りに走り警備が厳重な護送車から、貴方が脱走出来る訳ないでしょ』

と、散々言いたい事を言い終えた悪魔。霊安室で眠る男の前。突如、ヒーローショーの悪役が控え室で着ぐるみを脱ぐように悪魔の着ぐるみを脱ぐと、手で煽ぎながら暑そうな仕草をする髑髏。そしてもうひと言。亡くなった貴方に言ってももう遅いですが、私が悪魔か死神かはご想像にお任せします。

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