最強の女戦士の放浪記
ファンタジーを初めて書きました。
楽しんで行って下さい!
それでは本編をどうぞ!
9月18日午前9時よりこちらの短編を原作に新しく連載する事にしました。気になる方は下のURLからアクセスして下さい!
作品名も変わりましたのでURL先のタイトルが違っていても安心して読んで下さい!
https://ncode.syosetu.com/n2602hf/
「良い天気ねー」
草原に1人の女性が寝っ転がっていた。
透き通る様な白い肌、長くて綺麗な金髪、そして青い目をしていた女性がいた。
名前はクラリス。かつてこの世界を救った女戦士で、英雄だ。だけどその代償に不老不死なった。かつての仲間は皆逝ってしまった。彼女1人が魔王の呪いを一身に受けて仲間を守ったのだ。そして彼女はずっと見てきたのだ死という終わりを…約500年もの間…
「んー…そろそろ行こうかなー」
そんな彼女は今旅をしている。止まり木を探して…
「次の街はどんな出会いがあるかなー?」
陽気に鼻歌を歌いながら歩いていく。次の街へと…
「うーん…街に着いたのは良いけど…どういう状況?」
その街には誰も居なかった。日はまだ高く店じまいするには早すぎる時間帯だ。
(とにかく街を探索してみましょう。)
物音すらしない。窓から家の中を見てみると中は廃墟同然に散らかっていた。椅子やテーブルがひっくり返り、壊されていた。
「ありゃりゃー…何かあったのは間違いなさそそうね…」
クラリスは更に街を見て回る。
…
……
………
(誰かに見られてる?)
クラリスは辺りを見回したが誰も居ない…
(でも…)
「いるんでしょー!隠れてないで出てきなさい!」
…
すると微かな光が私の前に集まりだした。
「…こっち…」
声というより音に近い言葉が耳に届いた。
(音の魔法かしら…珍しい魔法ね…)
私は微かな光に案内される様に付いていく。案内された場所は広場だった。かつては噴水だったのだろう。今は枯れているが…
「…ごめんなさい…今は貴女の前には姿を現す事が出来ません…それでも貴女は悪い方ではなさそうなので声をかけさせて頂きました。」
「いいわよ、私はただ黙って見られてるのが嫌だっただけだから。」
「そうですか…この街は見ての通り誰も居ません。そして、夜になると魔物が根城にしています。だから日の高い内に逃げてください。」
「うーん…そうしたいけどなーこの近くの村も潰れてるんだよねーその魔物によって…」
ここに来るまでに3つの村を通った。その全てが皆殺しに遭っていた…クラリスは全ての村にお墓を作ってきた。悲しいがこの世界で生きてる以上死とは隣合わせなのだ。
「でも…このままだと、貴女は殺されちゃう。だから…私が貴女を逃します!」
「逃すって!そんな事したらあなたが消えちゃうわよ!」
「大丈夫です…私はこの街の守り神だから…この街に居れば回復出来ます。」
「あなたはそうやって街の人を逃がしたのね…」
「ええ、私の力は風や水、流れる物を自在に操るのです。この力を使えば音を操る事も出来ます。そして流れる物の中に人を浸透させて、遠くへ逃す事も…」
「流石神様だけあるわね。でも、もうそんなに力も残ってないでしょ?」
「……分かっちゃうんですね…」
表情などないが、今この神様は寂しい顔をしてるだろう
「分かりますよ、本来力のある神は気配を認識した者には話しかけたり、姿を現すから。そして、あなたからは弱々しい力しか感じ取れない、私を遠くへ運べばそのまま消える可能性もあるのよ!」
「それで良いんです。私は多くの村人を守れなかった。私の力不足で…私に出来る事は残りの魔力で人を守ること…それは旅人の貴女も同じです。だから…」
微かな光が強く光った。その瞬間私は強い風に飲み込まれた。
「逃げなさい人の子よ。後は風が貴女を遠くの人のいる村へ運んでくれます。」
(嘘!これ、風の中⁉︎弱っていてもやっぱり神さまかーって感心していられない!)
「風さん!私を元の場所へ戻して!」
「そうはいかないよ!私も命令で動いてるんだから、魔力が切れるまで乗ってなさい。」
「…いいから…戻しなさい…」
私は風に魔力を流し込んで指導権の乗っ取りを図るのであった。
(あの旅人さんは無事に人に会えたかしら…)
あれから少し眠ってしまい時間が過ぎて夕暮れを迎えていた。微かな光が徐々に人の形をしていく。
透き通る白い肌、白銀の髪にウェーブがかかっている。瞳の色は青かった。
(もう残りの魔力も少ない…今夜、勝負に出ましょう…例え負けても数を減らせばしばらくは他の村への襲撃は出来ないはず…)
そうして、少女は再び光に戻って街へと散らばった。最後の戦いに向かう為に…
その頃クラリスは…
「急いで!もうすぐ夜になるわよ!」
「分かってるわよ!全くあの子もだけどアンタも風使いが荒いわね!」
「私は緊急時以外はそこまで荒くないわよ!今回は命の恩人が死ぬかもしれないの!だから急いでるの!」
「命の恩人って!あの子の気持ちを無下にする行為をアンタはしてるって分かってるの⁉︎」
「分かってる!でも、初めてなの!」
「何が⁉︎」
「守ってもらった事が!」
「はぁ?」
「私は今までずっと守ってきた!子供の頃は守って貰ってたけど、大人になってからはずっと守る側だった…誰かに守ってもらう事なんて無かったの!だから!初めて守ってくれた人をこのまま殺されちゃうのは見たくないの!」
「あの子は神様であって、人じゃないし、このまま行かなければ殺される所も見なくて済むのよ。」
「うるさい!黙ってスピード出しなさい!」
クラリスは涙目になりながらも風に指示を出した。
「全く…私があの子を守ろうとしてたのに、このままじゃ魔力切れよ!いい?スピード上げるから絶対あの子を助けてよ!」
「えっ?うわっ!」
クラリスは猛スピードでさっきの街へ戻っていた。
(日が沈む…間に合うかな…もぉー降りた所に魔物が居なければもっと早く着けたのに!)
街に宵闇がかかる。すると、どこからともなく魔物が現れる。
あちらこちらで己の武勇伝を語っていた。
「今日はこの前食い逃した人間を食ってやったぞ!」
「はっ!俺は一山向こうの村を滅ぼしたぞ!」
「お前らは小さいのーワシなんぞ冒険者とその使い魔まで食ってやったぞ!がーっはっはっ!」
聞くに耐えない言葉に守り神の少女はウンザリする。
「頭を打とう。そうすれば烏合の衆となる、散り散りになれば後は人の子達でもなんとかなるだろう…」
守り神の少女は姿を戻し、魔物の群れに突っ込んだ!
「なんだ?この子娘は?」
「誰かの土産か?気が利くじゃないか!」
「あなたたち…ここから出ていきなさい!アイスアロー!」
守り神の少女は氷の矢を作り出し一斉射撃した。
「な、なんだ!こいつは⁉︎」
「氷の矢だと?舐めやがって!」
「殺してやる!どこ行きやがった⁉︎」
(撹乱成功!このスキに奥に座ってる奴の頭と心臓に氷の矢を刺せば…)
少女は再び光の粒になり奥へ奥へと向かっていく。
「お前ら落ち着け!」
指示をしてる奴の後ろまで来て姿を戻して氷の矢を作る。
「探してる奴なら…ここにいるだろうがよ!」
(えっ⁉︎)
守り神の少女はいきなり腕を掴まれた。
「なんで…?」
「フンッ」
「あうっ!」
広場に少女は放り出された。
「簡単だ。貴様の気配がわかりやすかったからだ。」
「えっ?」
「考えてもみろよ、こんだけの魔族がいて異質の魔力がある。最初から分かってたさ、この街にお前がいるのがな!そして、お前にもう力がない事もな。だからお前を戦いに仕向ける為に街の人間を殺したのさ、それなのにお前は出てこなかった。だから、じっくり痛ぶる事にした。いつでもお前を誘き出す為に。まぁ結局誰も居なくなっちまったがな!」
「私が早く出てきていれば…」
「あーお前が逃した人間もしっかり食っといたぜ!魔力がだだ漏れで何処の村に送ったかもすぐに分かったからな!じゃあー絶望したところで俺の血肉になってもらおうか!神の力を手にすれば今度こそ俺が魔王になれるからな!」
「…もう…好きにして下さい…私はもう…存在する価値すらない…」
「そぉーか!だが、お前の力は俺の中で生き続ける。価値は俺が見出してやるよ!」
魔族が少女を食おうとした瞬間、それは飛んできた。
「うおりゃーーーー!その子から離れろおーー!」
空から金髪の少女が剣を振り下ろしながら落ちてきた。物凄い轟音が響き渡り辺りには砂埃が舞う。
「助けに来たよ!神様!」
砂埃が治るとそこには金髪の女戦士が剣を構えて立っていた。
「貴女…なんで…」
「お礼を返しに来たの!あなたとそこの魔物達にね!」
クラリスは目の前の魔物を睨みつけた。
「お前さんは…確か昼間そこの間抜け神が逃した人間か?おかしいな、お前も殺す為に精鋭を5体も送ったのだがな。」
「そいつらってこれのこと?」
クラリスは5体の魔物の首を見せつけた。
「お前さん1人でやったのか?」
「他に誰がやるのよ!」
「ほほぉーこいつは面白い!おいっ!テメーら!この人間を殺した奴、もしくは食った奴には報奨金をやろう!さぁー今日のパーティーは血祭りだー!」
「あらあら、血の気の多いこと…」
片目を瞑って余裕綽々のクラリスであった。
「守り神さん、名前教えて!」
「えっ?フロール…」
「フロールね!私はクラリス!じゃあフロール、しっかり捕まっててね!」
「えっ?わっ!」
クラリスは向かってくる魔物の群れにいきなり飛び込み愛剣で3体切り裂いた。次にその魔物が持っていた剣を取って迫り来る魔物の一体へ投げつけた!
(は、速い…)
次に剣を仕舞い今度は倒れた魔物の槍を奪って倒していく。奪った槍が折れた時点クラリスで既に20体の魔物を倒していた。
「おのれ…貴様ら!各個で戦うな!一点集中に切り替えろ!奴らを仕留めろ!」
「ほらほら、どうしたの?私を殺したら報奨金出るんでしょー?もっと本気で来なさーい!」
(笑いながら戦ってる…ちょっと怖い…)
そしてクラリスは1人で50体もの魔物を倒していた。
「はぁ…はぁ…」
「あ、あの…私が魔法でサポートします。だから…無理しないでください!」
「はぁ…はぁ…だ、大丈夫よ!少し息が上がってるだけだから!あなたは…しっかり…私から…離れないように…してて!」
息が上がりながらもクラリスはフロールに心配は無いと伝えるのであった。
「おいおい、もう息上がってるじゃねーか!俺に届く事は無さそうだな!あーはっはっ!」
「うるさい奴ね!そういうアンタは弱った相手しか相手にしない雑魚じゃない?馬鹿っツラをさげてね!」
「フンッ!負け犬の遠吠えにしか聞こえぬわ!」
「そうね…じゃあそろそろ本腰入れるわよ!」
「なに?」
「クラスチェンジ!」
クラリスの言葉に光が集まり衣装を変える。
「ここからは魔道士として戦うわ!」
先程の剣から魔法の杖に切り替わり目の色は青から黒へと変わる。服装も黒を基調にした物へと変わる。
「いっくよー!ファイヤーボール!」
「なっ⁉︎」
出てきたファイヤーボールの大きさに魔物達は驚いた。そしてファイヤーボールが通った道が抉られる様な形になっていく。
「な、なんだ、あの大きさは!」
「ふざけるな!こんなのに勝てる訳ねぇー俺は逃げるぞ!」
「俺も!」「俺もだ!」
魔族達は散り散りに逃げていく。だがクラリスはそれを許さなかった。
「逃がさないわよ!ウィンディ!」
クラリスはフロールを抱えたまま風魔法を利用して空へ飛ぶ、そして…
「アイスシャワー!」
今度は鋭利な氷が空から落ちてくる。本来、仲間がいる状態では使えないけど敵に囲まれたこの状態なら安全に使えるのだ。
「範囲は…街全体!一体も逃がさないわよ!」
「ぐぁぁぁー」
「ぎゃあああ!」
地上のあちらこちらから断末魔が聞こえる。
断末魔が終わった後、地上へ戻る。そこには魔物の屍が大量にあった。
「大方片付いたわね!残すはあと一匹!」
クラリスの視線の先には先程のデカブツが残っていた。
「貴様!何者だ!」
「あらあら、さっきので死ななかったの?頑丈ね!」
「俺の質問に答えろ!貴様は何者だ!」
「あなた、もうすぐ死ぬのにそれ聞いてどうするの?意味ないでしょ?死んだ仲間達への冥土の土産話にでもするの?それに聞いても分からないでしょ?私の事なんて?」
「うるせぇー俺は死ぬつもりなどない!ここから生きて逃げ切ってやる!そして、今度こそ貴様を殺す為に仲間を再度集めるんだ!」
「ふぅーん。勝てないのは分かってるんだーなかなか賢いわね!あなた、もしかして、元人間?」
「ぐっ…」
「図星の様ね。」
「あの魔物、人間なのですか…?何故魔物なんかに…?」
「さぁね、本人に聞かないと教えてくれないでしょーし、教えてくれないでしょ、それに私は正直どうでも良いわ!」
「えっ?」
「私が怒ってるのは罪のない人を襲ってるって事、そして…!私を守ろうもしてくれたフロールを殺そうとした事!この二つが許せないから私は戦ってるの!」
「…私なんかの為に…ありがとう…」
フロールの瞳から涙が落ちた。それは嬉しさからなのか、それとも1人でも守れた人が居てくれた安心からなのか…フロールの涙が止まらなかった。
「フンッ!くだらねーな!たしかに今のお前は俺では殺せねぇー…だが、いずれは俺に殺されるんだよ!」
「あなた…逃げられると思ってるんだーおめでたいねー!」
「フンッ!魔法が貴様の専売特許とか思うなよ!」
デカブツの魔物は大きく息を吸い込んだ。
「スモーク!」
「これは…」
「煙幕ね!」
白い煙が広場一杯に広がる。
(これで逃げ切れる…)
魔物は霧の濃い部分を通り逃げて行く…が!
「逃がさない!風よ!煙を巻き上げよ!サイクロン!更に!土よ!水分を含み沼と化せ!マッドフィールド!」
するとレンガの地面がいきなり泥沼のように足場が悪くなる。
「ぬわっ!」
「そこね!土よ!我が剣と成れ!」
呪文と同時に土の剣が作られる。
「くらえー!」
クラリスはその土の剣を魔物目掛けてぶん投げた!
グサッ!土の剣は魔物の背中を捉えた。だが…
「フンッ…こんなものか!」
魔物は剣を自分で抜き取り砕いた。
「やっぱり、あんたの強さはその硬さの様ね!」
「そうだ!生半可な攻撃は効かん!そして、フンッ!」
魔物は地面に自分の拳を打ちつけた。
ズボッ!
………
「何も起こりませんね…」
「地面が沼地だからね、本来なら硬い地面が砕けるんだろうけど…」
「クソがー!沼地になんかしやがって!」
「まぁ、とりあえず、あの硬さは土系統の硬さでは貫けないのは分かったわ。」
「それじゃあ、クラスチェンジ!」
再び、光に包まれて戦士へと戻る。
「この剣で一気に切り裂く!」
「あのー…」
「何かな?フロール。」
「魔道士からクラスチェンジしたら飛べないのでは?」
「大丈夫よ、戦士の状態でも魔力はあるからねーだから。少しの間は風も操れるのよ!」
クラリスは少し浮いた。
「でもね…ここからあいつの所までは飛べないの。だから、フロールの風を貸して!そうすれば一撃で倒すから!」
「分かりました。それではいきます!」
フロールは手をかざして詠唱する。
「風よ我と我が友を風に乗せて運べ!リーズウインドー!」
風がクラリスとフロールを包む
「行きますよ!」
「ええ!お願い!」
一気に距離が縮まる。そして…
「終わりよ!」
一閃!
「ぐああぁぁぁ…」
魔物は切り裂かれ、街中に断末魔が響き渡った。
「フロール、大丈夫?」
「ええ…少し経てば…魔力は回復するはず…ですから…」
ドサッ…
「えっ?フロール?フロール⁉︎」
「スゥー、スゥー…」
「寝てる…良かったー!」
クラリスはフロールを抱えて、街で一番良いベッドを探して横にならせた。
「今は光に戻れないのね…ふぅー疲れたー。何年ぶりに戦闘したのかなー………まぁいいかー私も寝よ。クラスチェンジ。」
クラリスは寝巻き姿へ変わる。
「ふぅー寝る時は平民の楽な格好が一番ね。さーて寝よ!」
クラリスはフロールが寝ているベッドの隣のベッドへ横になる。
(そういえば…誰かと一緒に寝るのもいつ以来かしら…)
そんな事を考えてるうちにクラリスは眠ってしまった。
朝日が窓から差し込んだ。そして、ジュウジュウと何かを焼く音が聞こえる。
「んー…」
うっすらと目を開けるとそこには朝食を作るフロールの姿があった。
「おはよー…フロール…」
「おはようございます。クラリスさん。朝食を作ってますので顔を洗って来て下さい。」
「あ…うん…クラスチェンジ。」
クラリスは戦士の服装に戻して外の井戸へと向かう。
「あんなところにキッチンなんてあったかしら…?」
私は疑問を持ちつつ部屋へと戻った。
「おかえりなさい。朝食出来てるから食べて下さい」
「んんー⁉︎」
(さっきは椅子とテーブルなんてなかったよね!)
クラリスはたまらずフロールに質問した。
「さっきまで椅子とテーブルなんてなかったわよね?どこから持ってきたの⁉︎」
「えっ?あーそうですよね、驚きますよね、ここは私が守護してる街ですから、何処に何があるか分かるんです。そしてそれを動かす事も可能なんです。」
「めちゃくちゃ便利な能力!私も使いたい!」
「む、無理ですよ!私の街だから出来る事なのですから!」
(冗談なのにかなり慌ててる可愛いなー)
私の腹黒い部分が目覚めようとしていた。
「それじゃあ頂くわね!」
「どうぞー!簡単な物で申し訳ないけど…」
「そういえばこのお肉はどうしたの?昨日の魔物じゃないわよね?」
「そんな事しませんよ!これはですね、少し遠いけど、村に行って食料を分けて貰ったんです。」
「へぇーいつの間に…」
「クラリスさんが寝ている間に、人では耐えられない速さも精霊なら大丈夫ですから。」
「なるほど…ん?精霊?」
「ふふふ…そう精霊です。おいで!ウール」
フロールが名前を呼ぶと部屋につむじ風が起こる。すると。
「フロール呼んだ?あんまり魔力を使わないでよ、また倒れるわよー!」
「この子よ。」
目の前に現れたのは肩くらいの長さの赤髪が特徴の小柄な少女だった。
「あー!アンタ!昨日私に無理矢理魔力を流し込んで使役して街まで運ばせた奴じゃん!まだ居たの!」
「あーその節はどうも!だって、あなたが反応したから操れると思ったんだもん!多少無理でもやってもらわないと!でも、おかげでなんとか間に合ったよーありがとう!」
「ぐぬぬ…まぁ。フロールの為だったから仕方ないわ!それに、約束も守ってくれたみたいだし…たがら許してあげる!」
「ごめんねー助かったわ!」
「べ、別に怒ってる訳じゃないから!謝らないでよね!」
「この子ツンデレだね。」
「いいえ、口調がツンツンして見えるんですけど、ほとんどデレなんです。」
「そうなんだー」
「ちょっと!聴こえてるわよ!」
楽しい朝食が取れました。
朝食を食べ終わる頃にウールは帰って行った。そしてクラリスとフロールは広場にある魔物の死骸がある場所に来ていた。
「それじゃあ、この死骸を片付けるわね!」
「えっ?クラリスさんそんな事も出来るの?もしかして…燃やすの…?」
「そんな事しないよー。まぁー見てて!クラスチェンジ」
クラリスは戦士から魔道士へと変わる。
「それじゃあ!いくよ!樹木よ、死骸と変わり果てた者を浄化せよ!ライフクリーン!」
クラリスが詠唱を終えると地面から芽が出てくる。そして、死骸にも芽が出てくる。そして、少しずつ成長していく。
「凄い…こんな魔法…私、知らないです…」
「当たり前よ!これは樹木の魔法だもの。樹木の魔法は高度だから使える人は世界でも片手で数えられる位よ。」
「凄い…そういえば…あの魔物…なんでクラリスさんの剣で切れたの?土の魔法剣は普通の剣より頑丈で切れ味も抜群のはず…なのにどうして?」
「んー…まぁいいか、特別に教えてあげる。この剣ね、対魔剣なの。だから魔物ならある程度の奴は切れるのよー」
「対魔剣…そんなのがあるなんて…」
「特注だからね!知り合いの鍛冶屋さんのね!」
フロールがクラリスの話を聞いて困惑してる間に樹木はどんどん成長する。そして、一本の大木となった。街中も草木が生い茂り、森と化していた。
「これで終わりね。よし!解除!」
クラリスの解除宣告を受けると大木は光となって消えた。草木も次々と光となって消えていく。そして街には一体の魔物の死骸は残らなかった。
「よし!私の仕事は終わりね!じゃあ街を出るわ!長居もしてられないしね!」
「えっ?」
「私は流浪の旅人なの。だから同じ場所には留まらない。」
「えっ?でも…もう行くのですか?」
「ええ、そうしないとまた厄介事が来るので…」
「そうですか…」
フロールは少し寂しげな目をしていた。だがここに居てはいずれ彼女は不幸になる…だからこれで良いのだ。
(これでまた1人の旅に戻る。それだけの話だ。)
「私も…貴女に付いていきます。」
「えっ?」
「私もクラリスさんと一緒に行きます!」
「いやいや!無理でしょ!貴女はこの街の守り神なんでしょ?」
「もう…ないんです…神の力は…」
「えっ?」
「あと残りわずかなんです。昨日の闘いで全てを出し切って消える予定でした。でも出し切る前にクラリスさんが私を助けてくれました。だから、恩返しも合わせて、クラリスさんと一緒に行きたいんです。」
「でも、どうやってこの街から出るの?守り神なら出れないでしょ?」
「それは…」
フロールは顔を赤くしてゴニョゴニョ言っている。
「ごめんなさい、聞こえなかったからもう少し大きな声で言ってくれる。」
「あの…その…外部の者との口付けをすれば解約となるので…」
…
……
………
「んー⁉︎」
「つ、つまりクラリスさんと…その…」
「ちょーーっと待ってね!」
クラリスは一旦落ち着く為に待ったをかけた。
(えっ?嘘⁉︎私のファーストキスがフロール⁉︎いや嫌いではないよ、いや、むしろ嬉しいけど、いいの?こんな子にそんな事して⁉︎)
クラリスの葛藤は数分続いた。そして…
「もし、私と外に出たとして、フロールは何日生きられるの?外の世界へ出て1週間も持ちませんなら私は断ります。」
「分かりません…ただ、魔力の枯渇で消える事は無くなります。」
「そうなの?」
「ええ、元々は宿無しの妖精でしたので、守り神から妖精に戻るだけなのです。逆に妖精から守り神になるにはその土地の神様が決めるのです。街を守る為に張っていた結界、崩落寸前の建物の維持に魔力を使っていましたが、それが無くなれば私の魔力が枯渇する事は無くなります。」
「なるほどね…じゃあ一つ条件を出します。」
「なんでしょう?」
「私と一緒が嫌になったら直ぐに別れる事!いいわね?」
「ふふふ。なんですかそれ?わかりました。元々妖精は嫌いな人間には近付きませんのでご心配なく。」
「じゃあいくよ…」
クラリスがそういうとフロールは目を閉じた。
(うわーまつ毛長い!改めて見ると美少女じゃん!これ私…犯罪にならないよね⁉︎)
そんな事を考えながらもクラリスはフロールのくちびるに自分のくちびるを重ねた。
「ありがとう。クラリスさん!」
「どう…いたしまして…」
恥ずかしくてまともに顔を見れないクラリスだった。
すると途端に街が崩壊を始めた。
「な、何?敵?」
「たぶん…違うと思います。私の魔力が行き渡らなくなったから建物が壊れだしたのかと…」
「まずいよね…?」
「まずいですね…」
…
……
………
「逃げるわよ!」
「あ、それなら!ウール!」
再びつむじ風が起こってウールが現れる。
「何か用?魔力ないのに私を呼び出さないでよね!」
「ウール。私とクラリスを乗せて街の外へ!」
「はぁ?何言ってるのフロールは出られないでしょ?」
「いいから!早く!」
「もぉーどうなっても知らないわよ!」
その直後猛烈な風が2人を包み込んだ。そして…
「街を超えた!」
「やった!久しぶりに街の外へ出られたわ!」
街の外の草原にウールは下ろしてくれた。
少し遠くで建物の崩壊する音が聞こえた。
「危なかったー!危機一髪だったねー」
「ですね。」
気が抜けたのか、クラリスとフロールは草原に寝っ転がった。すると…
「「ぷっ!あははは。」」
どちらからともなく2人で笑い合っていた!
「これからどうします。クラリスさん?」
「そうねー…元々当てなく旅してたから…どこ行こうとかはないかなー?」
「そうですか…」
「そうなんです…」
「ねぇ!」
のほほんと2人で会話していると急にウールが話に入ってきた。
「どうして、フロールが外に出られてるの?もしかして貴女…」
「あのーフロールさん…ウールさんはもしかして解約の仕方を…」
「知ってますよ?私と契約してる精霊ですから。」
「貴女!よくも私のフロールのくちびるを奪ったわねーーーー!」
怒り任せにエアーカッターを使ってくるウール。
「しょ、しょうがないでしょーフロールが望んだ事よー」
「分かってる!分かってるけど!許さなーい!」
「ぎゃああー!」
その後20分くらいウールに追い回されるクラリスであった。
「はぁ、はぁ…気が済んだ?ウール」
「はぁ、はぁ…済む訳ないでしょ!いつか一太刀入れてやる…」
「2人とも、喧嘩はやめましょう。これから一緒に旅する仲間なんですから。」
「それもそうだね。改めてよろしくフロール!ウール」
「はい!」
「…よろしく…」
(フロールは街にいる時より元気になっている気がする。やはり常に魔力を使い続けていたから弱り切っていたのだろう。)
「良い!フロールに何かしたらアンタを切り刻むからね!それと!…フロールを助けてくれて…ありがとう…」
言い終わると再び突風が吹いてウールは何処かに行ってしまった。
再び2人っきりになったクラリスとフロール。
「…やっぱりツンデレだね、」
「あの子がお礼を言うのは心を許した証です。良かったですね、クラリスさん。」
満面の笑みを向けられ、クラリスは顔を赤くする。
「それよりこれからどうする?」
「そうですね…せっかくなのであの山向こうに行ってみたいです。」
「そう…じゃあ行こうか!」
クラリスはフロールに向かって手を差し出す。その手をフロールはしっかりと握る。
「さぁ!2人旅の始まりよ!」
「ええ!楽しい旅になりそうです!」
こうして女戦士と妖精の旅が始まったのでした。
連載を考えて作ってます。
まだまだ修正はすると思いますが、良かったら評価を付けて頂けると嬉しいです。