前座
世界中が突然敵となって襲い来る様を想像したことはあるだろうか?
その時は不意に訪れる。あなたの想像した以上に残酷で、それも執拗なものだ。
日に日に歪さを増し、やがて多くを巻き添えにふっと消える。相応の代償のみを残して。
そして最も厄介なことに、種は私たちがまいている。
自身の埋めた未熟で青い種子は、「幸せ」「希望」「夢」といった言の葉をまとい、
鹿の子に似て震える足を立たせ芽生えるが、重い瞼のように双子葉は開かぬままとうとう腐リ落ちる。
初めこそ誕生の喜びを唄うように震えたその足も今にくたびれ、
老いぼれた肉が痙攣を起こすのみとなる。
開かない葉を後からピンセットで優しく解剖してみれば、
土や風、水、光といったあらゆる触媒からどうやら毒素を蓄えているのだ。
これらは「嫉妬」「苦悩」「揶揄」といったもので互いに吸い寄せ離れようとはしない性質である。
種は足と芽を生み育まぬまま、毒素を吸って死に生きる地雷と化し、
いずれ花も実もなく摘まれ、摘まれた同胞もろとも爆発四散する。
マインスリーパー。地雷埋め立て屋。
人間は生きた地雷を心の奥底に埋めては摘み、埋めては摘んで手に集める。
やがて同類同志巻き込んで華々しくも禍々しく散れるように。
連載小説になります。日夜投稿していきます。
1週間に1度ぐらいのペースで更新予定。