表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The strange dragon fruits  作者: RK
南方より来る異邦の風
8/8

8

 マリアリアがギルドの救護室に運ばれて行ってから幾ばくかの時間が経過した。

 アイギナは一人でギルドマスターの部屋に来ていた。

 ジークとアレックスの対面に座るアイギナとの間には彼女がウィクトーリアから持ってきた『竜杖』が置かれている。


「さて、依頼書には具体的には書かれていなかったが研究に関して詳しく聞きたい」

「わかりました」



 アイギナが持ってきた竜杖。これはDg資源と呼ばれるものを用いた武器だと説明した。

 Dg素材。それはアーヴェイロンからもたらされた竜の素材のことを指している。



「こんなんでぶったたいたらすぐにぶっ壊れそうだなあ」

「狩人が使う得物は頑強さが大事なのはアイギナ嬢もわかっていると思う。それに見たところ複雑な構造をしている上に刃もついていない。重量もないこれが武器というのはにわかに信じられないな」

「ええ、そう思われるのも無理はないですわ。これは物理的になにかをするためのものではないのですから」

「どういうこった?」



 ジークもアレックスもアイギナの言うことを飲みこめていない表情を浮かべる。

 アイギナはそれを当然だという様子で受け入れる。



「言葉で説明するよりも、実際に見ていただいたほうがわかりやすいと思います」



 アイギナは竜杖を手に持ち目をつむる。

 そして一言、呟く。



起動(目を醒ませ)



 その言葉と同時に竜杖が形を変えていく。

 先端にあった複雑な構造物はまるで花が咲いたかのように。

 展開して露出した中心部には琥珀色の石がはめ込まれており、淡い光を放っていた。



「これは……」

「……どうなってんだ?」



 その光景を見たアレックスとジークは言葉を失う。

 それもそのはずだ。花のように展開したパーツはどことも接していない。

 完全に浮遊しているのだ。



「これが竜杖の起動状態です。では少し眩しいので気を付けてください……入力(聞き届けよ)発光(輝き放て)実行(我に従え)!」



 アイギナが言葉を発するや否や竜杖は眩い光を解き放つ。

 一瞬の輝き。二人は一瞬で瞼を閉ざし身を守った。



「なるほど……これ以外にも?」

「ええ、あとは爆発する炎を放ったり、物を切断する風を放ったりできます」

「くそ、目がくらむ。ッ先に言えよな……。んで、あんたはこれを使って竜と戦いたいってことで間違ってねえか?」

「はい。この竜杖が本当に竜に有効かどうか。それを確認したいのです」



 これは確かに便利だろうとアレックスもジークも理解してる。

 弓や槍が聞かない竜という化け物。だからこそ狩人は重く頑丈な武器を使うのだ。

 鱗をはがすためのノコギリ。硬い肉を貫くための杭。

 だが、そのためには近づかなくてはならない。

 これは狩人の生存率を上げる革新的な武器であった。



「でもよ、あんたがこれをもっていかなきゃいけない理由はあんのか?」

「これを扱えるのがわたくしだけなのです」

「……アイギナ嬢にしかつかえない?」

「はい、ウィクトーリアで実験を行っていた際に起動できたのはわたくしだけなのです。その理由まではわからないのですが……」

「なるほど……」



 アイギナの話を聞いた二人は落胆した。

 ですが、とアイギナが続けた言葉に二人は希望を抱く。



「これはウィクトーリアに送られてくるDg資源で構成されているものです。おそらくですが、アーヴェイロンから送られてくる資源の質はよくないでしょう? こちらにある良質なDg資源を用いれば出力も上がるでしょうしわたくし以外にも利用できるかもしれません」

「……アイギナ嬢は俺たちが出し惜しみをしているといいたいのか?」



 少しだけ視線を鋭くしたアレックスにアイギナは首を横に振って否定する。



「いいえ、そのようなことは言いません。わたくしが見たところ、先ほどジークが使っていたあの武器。あれはこの竜杖よりも上質なDg資源を用いて作られているでしょう? 資金繰りとはいえ安全地帯であるウィクトーリアの研究のためにそのようなものを送るとは到底思えません」

「……勘ぐったことを言うのはあやまろう」

「わたくしこそ誤解を招くことを言って申し訳ありません。ですが、この試作品を試してその力を実証すればわたくしが先ほど申し上げた可能性に賭けてくれるでしょう?」

「あんたが言っていることが実現できれば助かる。だったらその実験は早いほうがいいよな?」



 ジークが急かすようにたずねる。

 その瞳の輝きは期待に満ちている。それはアレックスも同様だ。



「ええ、わたくしはそのためにここに来たのです」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ