前世-2-
ブックマークありがとうございます。
1週間に1回はあげようと思っております。
書き方などなっていませんがよろしくお願いします。
私は杉野百合という名前の28歳、普通の会社員だった。小中は公立、高大はまあまあ頭いいんじゃない?みたいな偏差値の学校を特に目立って虐められるということもなく無難に楽しく過ごし、会社の部署も外事や営業などのドラマに出るような花形ではなく、逆にお荷物とされている部署の女性たちが会社のトラブルにしゃしゃり出て、ずばっと解決する人気ドラマの舞台でもなく無難に無難な経理部だった。容姿は多くの人に『よくよく見たら整っているような…?』ぐらいの感じである。
ただ、私には普通ではないところが一つあった。
『視えた』のだ、霊が。いや、詳しく言うと霊だけではない、妖怪や生霊や人のとても強い感情ののこりまでも。実家が神社だからなのか、前世のナントカカントカだからなのか視えてしまった。
赤ちゃんの頃は父の顔ではなく何もない空を見て笑い、幼児の頃はよく何もないところに手招きし『きつねさんもいっしょにごはんたべよ』等といい、食卓を混乱させた。幼稚園にはいるころに私が視えていると悟った父はみんなには視えていないことと、誰彼構わず言ってしまうとよくないことが起こると教えてくれた。どこかの主人公なら『なんで行っちゃいけないの?わたしはおかしなこなの?』と自問自答などし、多くのトラブルに巻き込まれたり、それを解決したりなんやりするだろうが、幼いころはことさら素直で聞き分けがよかった私は忠実に守り、私のこの体質を知っているのは家族と赤ちゃんの頃からの付き合いである幼馴染の松本菫だけである。もしこの体質を言いふらすような真似をしていたら無難な学生生活は過ごせていなかっただろう。
しかし自ら言いふらさなくても、いきなり空を見て声を上げて笑ったり話しかけたりしていればふしぎちゃんと思われてしまう。また厄介なことに人の強い感情の残存が視えるため、人が強いコンプレックスに思っていることやだれが誰のことを猛烈に好きまでもわかってしまう。なので色々とやり過ごさなくてはならない。そんな私のやり過ごし方はいたって簡単で極力視界に入れなければというものだった。またもっと言うとスマートフォンを触っていればいいのである。へたに直筆の文章や誰かの手に渡ってきたものだと人の念がついていることがあるのだがスマホなどの電子だとついていなくて安心だ。またこのご時世、電子機器を持つのが当たり前となっており、おかしいと思われなくていい。
ただ、今回はそれがあだになった。
あの日、いつものように2時間の残業で退社し、スマホを眺めながら、自宅に向かっていた。青になった信号を渡っていると横からいきなり強いライトに照らされた。スマホから顔を上げると車が向かってきていた。あっ、と思うと同時に跳ね飛ばされ、体が宙に浮く。景色が変わるのがなぜかスローモーションに見える。体が地面にたたきつけられ、意識が遠のく寸前に見た感情は強い後悔だった。
こうして私、杉野百合は死んだ。