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第零話
ぬるい風に木々がざわめく。
疲れ果て、乳酸が溜まった足に鞭打ち動かし続ける。
ガサガサと茂みをかき分ける。
手足には小さな擦り傷と、草か虫によるかぶれが出来ている。
それでもかまわず走り続ける。
後ろから迫り来る男たち。
息が切れ、目眩がしてくる。
(足を止めるな、逃げろ、逃げろ……)
◆
気が付くと、暗くじめじめとした場所にうずくまっていた。
恐らく捕まってしまったのだろう。
私以外にも何人か生気のない顔をした人々が、同じように縛られて転がされている。
(ごめんマナちゃん。お姉ちゃん、もう無理かも。まだ何もしてないのに……)
心の中で妹に謝る。
返事は、やはりない。