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不定形な呪術騎士は『VR』を探し求める  作者: 平谷 望
第三章 汝らは螺旋の果てに何を見る
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緑天の霹靂

「うわ、マジで暗い」


「木が何重にも折り重なって日光を遮断してるのね」


「でも、鳥の鳴き声とかしてワクワクするよ! ……ぶへっ」


「あぁ、シエラ。足元を良く見ないと……ぶへっ」


「何やってんだ……」


 緑天の大淵林に入った第一の感想。暗い、暑い、歩きづらい。前に進むだけでエネルギーを使う。盾を構えて悠々と乗り込んだ俺だったが、前が良く見えず、体幹強化……現『不動』が無ければ木の根っこに躓いてコケていた。


 恐らく赤土の地面は熱帯に降るスコールの影響で地面の表面が削られ、ひどく滑りやすい。確かラトソルと言うんだったか。期末考査にチェルノーゼムやレグール等の地質が出て晴人が『全部土だろ!?』と絶叫していた記憶がある。返ってきた晴人の解答用紙を見たら解答欄に『赤い土』『黒い土』『黒い土』と書いてあって爆笑してしまった。


 あいつは基本暗記系の問題出たら発狂して死んでいる印象があるが……覚えること自体は得意な筈なのに、覚える気が全く無いのがたまに傷だ。


 太い木は何十メートルも上で幾重にも折り重なり、日光は殆ど降ってこない。薄暗い全体像、滑りやすく躓きやすい地面。死角まみれで、不死者の俺達でなければ辛いであろうじめじめとした暑さ。その上高レベルの敵が出てくるとあれば、糞フィールド待ったなしだろう。

 ……だが、攻略スレによると、このフィールドにはダンジョンや遺跡が非常に多く、指輪等のアクセサリー枠、装備や武器、まだ見つかっていない魔法のスクロールなどが見つかることから、かなりホットな場所らしい。


 しかし、森の中だから松明なんぞ使えんし探索は面倒だろう。火属性魔法は絶対に使えないだろうしな……いや、生木は燃えにくいからセーフか? 火属性魔法はレオニダスのものしか見たことが無いが、もしここであれを撃った場合、水気とか関係無しに普通に火力の高さで木が燃える気がする。


「ここ設計した人性格悪いよぉ……」


「スキルで曲芸と体幹強化を取って良かったわ……」


「俺も後で体幹強化取ろう……あっぶない……はぁ」


「なんか体幹強化流行ってんな」


 便利だからな。仕方ない。取り敢えず俺たちは真っ直ぐ道を進んでいるが、地図もない状況で前に進むのはあまりよろしくない。いざとなれば金を払って帰れるとはいえ、あれだけ感動の別れを告げたのだ。あ、すまん、道に迷った。何て言って帰れるわけがない。ロードなら苦笑いで受け止めてくれるだろうが、俺が受け止めきれない。


 時たま動く影や野生の鹿などを見るが、まだモンスターとはエンカウントしていない。今のうちに我らがパーティー『コープスパーティー』の動きを確認しよう。


「おーい、みんな。動きを今のうちに確認しよう。取り敢えず俺は前線でタンクをしながらデバフ撒きつつサポートするぜ」


「私はライチに任せて特攻ね。DPSは稼ぐけれど、一発でも受けたらダウンするからよろしくお願いするわ」


「えーっと、でぃーぴーえす? でばふ? が何のことだか良くわからないのですが……」


「コスタ、簡単に言うと火力と妨害だよ!」


「あぁ、成る程」


 コスタが納得したように手を打って、コケかけた。意外にもコスタよりシエラの方がこういった用語をよく知っているらしい。よくネットサーフィンをしているとか言っていたし、その影響かもしれないな。


「意外ね。いつもコスタがサポートしていたように見えたから」


「ゲームについてはシエラに頭が上がりませんよ……それ以外なら良いんですが、本当にゲームだけはシエラの方に分があって……」


「ふふん、ゲームでは負けないぞー!」


 ゲームでは、と言っている時点でコスタの苦労がちらつくが、恐らく身内だろうし仕方無いだろう。取り敢えずもう一度ロールを聞き直しておく。


「それで、二人はどんな感じで行くんだ?」


「本当なら槍で中距離をやりたかったんですけど……剣しかないので前衛に出られればと……一応盾はありませんがそこそこVITはあるはずです」


「遠距離は私に任せてー! MAG極振りだから!」


「え!?」 


「シエラは極振りなんですよ……すみません」


「あら、気が合うのね」


 一応前衛三人後衛一人と、普通ではあるが、これが極振り二人と武器なしの初心者となると、かなり厳しい。まあ、前衛は全部俺が攻撃を受けきれば何も問題はない……ん? 普通に俺が全部攻撃を受けきればいいのか。なら、何も問題はなさそうだな。……どこか感覚が麻痺している気がしなくもないが、気にしないでおこう。


「えーと、メインタンク、前衛ダメージディーラー、サブタンク、後衛ダメージディーラーってことで」


「要するにいつも通りってことね。よろしくお願いするわ」

 

「お願いしまーす!」


「なんか俺の役割がフワッとしてる気がするんですが……」


 確かにメインタンクが動けない状況でのサブって、基本状況が最悪だから要らない……いや、まあ、動き次第では立ち位置はあるだろう。そう自分を納得させていると、ブーン、と低い羽音が前方から聞こえた。鋭く警戒の指示を出して盾を構える。

 羽音はゆっくりとこちらに近づき、木の幹の合間から敵影が見えた。


「一つ二つ三つ……四つか。『鑑定』」


『エル・ビー Lv13』

状態異常に対する耐性無し

火属性魔法に対する脆弱性あり

魔力反応あり


「え、状態異常効くのか」


 鑑定結果は非常に弱々しい蜂であると示唆していた。人間側からすればレベル13が4体という絶望を感じるかもしれないが、こちらは全く怖くない。月紅の時に何百体倒したのか覚えてないし、レベルの差が酷い。多分生身で攻撃受けてもほぼダメージ無いぞ?


「……『四重捕捉(クワトロロック)』『麻痺(パラライズ)』」


 試しに新しく覚えた呪術を放ってみると、四つの黄色い霧の様なものがエル・ビーに向かい、静かに衝突し……全員一気に全身麻痺を起こして地面に落ちた。


「…………弱い」


「戦う隙すらなかったわね」


「敵が見えてないよー……」


「流石です」


 一応麻痺らせただけなので恐らく地面に這いつくばっている蜂の方に行くと、4匹纏めて全身麻痺にかかって地面に寝そべっていた。鋭い顎と、四枚の繊細な羽。何より毒を持っているであろう鋭い毒針をもっているが、あと二十秒は地面とディープキスを敢行かんこうさせられるとのことだ。


「一応、倒しておくか……シエラ、コスタ、やるか?」


「うん。『ダークボール』! あれ、まだ生きてる。『ダークボール』」


「よいしょっ……硬いですね。よい、しょっ!」


「……絵面が地味ね」


 本来なら高い機動力と毒攻撃、そして見ることのなかった魔法に翻弄され、息のあったコンビネーションに苦しめられるはずなのだが……流石に相手が悪い。虫系統は確実にMAGDが低い上で耐性を持っていない。俺の敵ではないのだ。

 流石にユニーク種族の二段階目で、上位の職業についた本職の呪術を放ったわけだから、このくらいはないと可笑しいと言わざるを得ない。得ないが……流石にレベル帯が違うだろう。


 俺が相手でなくとも、カルナの拳は確実にエル・ビーを木っ端微塵にして、衝撃波で周りの木を揺らすくらいはできる。もしかしたら攻撃が当たりづらくて苦戦するかもだが、負ける要素はほぼほぼないはずだ。

 そうこうしているうちに、シエラとコスタは残った蜂を仕留め終わった。


「あ、レベル上がった。うわ!凄いよ、二体倒しただけで3も上がってる!」


「俺も3上がってるよ。SP貰えた……あぁ、槍を使いたいよ」


 レベルアップに喜色を浮かべてステータス振り分けをする歩く鎧と幽霊を見ながら、流石にこれからは手出しを控えようと思った。勿論カルナにもその旨を伝えると


「流石に弱いものいじめみたいなのは勘弁よ。少なくとも何度か死にかけるくらいの敵じゃなければ手を出さないわ」


 と言っていた。俺が居て何度か死にかけるとか確実にこの二人は生き残れない上、俺の疲労が尋常ではないから勘弁してほしい。もうロードは居ないのだ。火力として最高級の働きをする彼女がいないとなれば、後釜で火力を補うのは必然的にSTR極振りらしいカルナだ。とはいえ、彼女は前衛。ロードに比べて圧倒的に死にやすい。事故でプチっと死んでもおかしくないのだ。


 そのときは禁忌魔法のサクリファイスとかを使って必死に彼女を延命させなければ火力不足で俺が死ぬ。取り敢えずこの話は後にして、今はこの二人を育てることを考えよう。

 まず二人の実力を見なければ今後のプランを組めない。取り敢えず二人にレベルを聞いてみる。


「二人とも、レベルは?」


「5だよー」


「6ですね」


「……今後に期待ね」


 おいカルナ、そういうことは言うもんじゃない。全く正しいことだが、せっかくこのゲームに復帰してくれた物好きな魔物プレイヤーの心を折って減らしたらどうする。

 二人とも分かりやすく微妙な表情を浮かべてるし……シエラに至っては、これって寄生……と呟いている。確かにさっきのは完全に寄生プレイだった。だが、次からは流石に彼らに戦わせよう。


「そのレベルじゃ不安かもしれないが、確かにこのままだとキャリーだの寄生だの言われてもしょうがないからな。魔物プレイヤー恒例のレベル差を体感していただこうか」


「本当に恒例よね。今はいいけど、いやになっちゃうわ」


「うぅ、私寄生って言われないように頑張るよ!」


「俺も頑張ってみます……えーとAGIに振って……」


 取り敢えずやる気は十分そうだ。そこから少しだけ森の中を歩いていると、前から足音が聞こえてきた。恐らく敵だ。というかこの薄暗い森の中で出会うやつは大体敵だ。

 

「足音が重いな……あの影は……うげぇ、やっぱり熊か」


『ボマーグリズリーLv15』

状態異常に対する耐性無し 

火属性魔法に対する大きな耐性あり

物理攻撃に対する小さな耐性あり

魔力反応あり


 重い足音を伴って現れたのは、両腕がひどく肥大化した巨大な二足歩行熊だ。その瞳は真っ赤に充血しており、腕の先は蜂の巣のような、岩のようなものが纏わり付いていた。そこからは黒い粉が頻りに零れている……嘘だろ? あれ火薬か。


「あいつは多分殴った場所が爆発するぞ。それと同時に通った場所も爆発するな」


「面白いわね……あぁ、勿論私は手出しをしないわ」


「爆発する熊なんてアリですか!?」


「ゲームだから大体なんでもアリなんだよコスタ! さあ、来るよ!」


 火薬のせいか、それとも爆発のせいか、真っ黒な毛をした爆弾熊がこちらを視認して大きく吠えた。それと同時に俺たち二人は前線から退く。これで死んだら……まあ、俺たち二人はファストトラベルで墓地に戻って反省会を開いてやることにしよう。金は勿体ないかもしれないが、元々先に進むことは目的ではないのだ。じっくりと彼らに付き添おう。俺たちにも新たな発見があるかもしれない。


「まずは腕を潰すために肩を……腕の爆破を計算しつつ上げた腕と反対の腕にスウェーして肩を潰して……」


 なにやら妄想のボマーグリズリーと疑似戦闘を開始したカルナを置いて、向かい合う両者を見つめる。ボマーグリズリーは咆哮を上げた後に突っ込む……ということはなく、意外にも理性的に間合いを詰めつつ二人を観察している。 


 リビングアーマーであるコスタは種族的にかなりVITが高いはずだが、流石にレベルの差が酷い。一発でももろに食らったら立っていられるかどうかだろう。それに対してシエラの種族であるゴーストは物理完全無効を持っているが、相手が悪いな。ボマーグリズリーはどうやら魔法を使うようだし、爆発は恐らく火属性魔法としてカウントされる。極振りをしているシエラでは、飛んだ火の粉に当たるだけでもかなりのダメージだ。直撃なんてもっての他であろう。


 じっくりとにらみ合いを続けた末、コスタの方が先に切り出した。若干錆の見える長剣を下段に構えながら、素早くボマーグリズリーに接近した。速いな、AGIにそこそこ振っているのだろう。

 コスタに視線を移したボマーグリズリーに、シエラがダークボールを打ち込んだ。いくらレベル差があろうとMAG極振りのダークボールを受ければそうそう無傷では済まない。


 が、ボマーグリズリーは火薬庫を連想させる右腕を力強く振るうと、正面からシエラのダークボールをぶん殴った。その隙をついて畳み掛けるようにコスタが踏み込むが……あぁ、甘いな。計算が甘い。


 ボマーグリズリーの拳はダークボールを激しく殴打し、それと共に腕が爆発。その爆発で散った炎はこれまでじっくり睨み合っていたボマーグリズリーが垂らしていた地面の火薬に引火し、大爆発を起こした。足元が暗いから分かりづらく、それゆえに間合いを間違えやすい。大規模な爆発に、一瞬目を覆うような光が放たれる。


「賢い熊ね。最初に襲いかかってこなかったのは、『作っていた』のね。自分が戦いやすい火薬の海を。暗い空間を利用して、真剣な相手との心理戦を演出しつつも、地面はもう自分の陣地……面白いわ」


 熊にしては賢いな。爆発の影響でコスタが大きく吹き飛ばされ、その隙をついて、爆炎の残る中をボマーグリズリーが肉薄する。目指す先は勿論シエラ。巨体に合わない俊敏な動きでシエラに近づき、両腕を空中で組んだ。油断せず最高火力で潰す気か。

 コスタは確実にダウンしているだろうし、シエラも盲目やダークボールを撃ってどうにかなる状況ではない。

 これは詰みだな。カバーを使って助けに――


 その瞬間、ボマーグリズリーの後頭部に持ち手の無い長剣が叩きつけられる。グゥ、と流石に苦しげな声を上げたボマーグリズリー。痛みに一瞬腕の力が引いた。その隙を見逃さない幽霊が一人……。


「『ダークボール』!『ブリンク』!」


 ダークボールが緩められたボマーグリズリーの両腕にぶつかり、僅かに威力を軽減するが、熊は大きく吠えてダークボールを押し潰し、そのままの勢いでシエラを叩き潰す。……ことは出来ない。恐らくゴーストの固有スキルである『瞬間移動(ブリンク)』を使用したシエラが、既にボマーグリズリーの背後に幽霊らしく移動していたからだ。


 手応えからかシエラを倒せていないことに気づいたボマーグリズリーが振り返ると、そこにはニコニコと余裕を持って笑うシエラの姿。自身がバカにされていることを感じ取ったのか、ボマーグリズリーが大きく吠える。その咆哮の先、シエラの後ろから――ゆっくりとコスタが戻ってくる。鎧の表面は軽く焦げ、恐らく爆発を庇った籠手は歪んでいる。だが、確かな足取りでボマーグリズリーの元に歩いてゆくコスタの目は、兜の奥からでもわかるほど爛々と輝いていた。深紅の光を二つ、兜の奥で煌めかせて、体から煙をあげながら、コスタはボマーグリズリーの前に堂々と姿を表した。


 そして、怒気を孕んだ声で、大きく吠える。ボマーグリズリーの咆哮を霞ませるように、忘れさせるように。


「あぁもう! 鞘で戦ったほうがマシだ! この剣ホントに使いづらいんだよ!」


 隣で見ていたカルナがヒュー、と口笛を吹いた。ゾンビの体でも口笛がふけるのだな。端から見ても完全に「キレた」コスタは錆びた剣の鞘を乱雑に剣帯から引き剥がすと、上段にそれを構えた。先程まで雑魚だと思っていた相手からの思わぬ咆哮にたじろぐボマーグリズリー。それに向けて、シエラが柔らかく笑った。


「あなたに(幽霊)が見えるかな?」


 そういうのが早いか、シエラはボマーグリズリーの真後ろにブリンクした。ボマーグリズリーは流石に二度目ということで騙されず真後ろを殴ろうとしたが、そうはさせない。目の前にもう一匹の獣が牙を剥いて吠えたのだ。それからみすみす目を外して無事でいられるわけがない。


 後ろを向こうとしたボマーグリズリーの目に、回転のかかった小石がめり込んだ。痛みに大きく吠えるボマーグリズリーの顔面に、さらに剣の鞘が投擲される。荒々しくそれらを投げたのは、勿論のことコスタだ。


「やっぱりこっちのほうがマシだ!」


 ボマーグリズリーは二足歩行の足を崩して、地面に膝をついた。鑑定してみると、状態異常『気絶』となっている。完璧に入った鞘が打撃攻撃と判定されたようだ。そんな無防備なグリズリーの背中に、ダークアローが撃ち込まれる。片目を潰され、膝をついたグリズリーだったが、獣の意地というやつか、撃たれた方に無理やり体を捻って殴打を打ち込んだ。


「ダメだよ、そんなんじゃ。『ブリンク』『ダークアロー』」


 大きくボマーグリズリーが呻き、またもや撃たれた方角に拳を振るうが、空振り。当たらない、当たらない、当たらない。何度拳を振るおうと、シエラの姿は水に溶けるように消えてしまい、グリズリーは一発として攻撃を当てられない。一方的なシエラの攻撃に、やがて癇癪を起こしたようにグリズリーは、大きく拳を振り上げて地面を殴打した。あちこちに散布した火薬が一斉に火を吹く。


 爆音が轟き、樹木と葉っぱを揺らした。さやさやと音を立てて木の葉が落ちる。爆炎と黒煙の晴れた先には、誰もいない。強烈な面攻撃によって、シエラは死んでしまったのだろうか?

 ――いや、違う。


「本物の幽霊は、目に見えないんだよ」


 上だ。


 揺れる木の葉。僅かに覗く茜色の空。その空に溶けるように空中に揺蕩うシエラが、弓を引くようなジェスチャーをした。弦が限界まで振り絞られ……放たれた。


「ばーん」


 可愛らしい声と共に放たれた暗黒の鏃は、シエラを呆然と見上げるボマーグリズリーの、残ったほうの瞳を潰した。低い絶叫を上げながら、ボマーグリズリーが後ろ向きに倒れ……グサリ、と音を立てて額から剣を生やした。

 ボマーグリズリーの真後ろに居るのは剣を持ったコスタ。


「なまくらな鉄屑でも、お前の体重があればそこそこ使えるよ」


 シエラが時間を稼いでいるうちに静かに剣を拾ってスタンバイしていたのだろう。完璧な連携によってボマーグリズリーは息の根を止め、光の粒子となって消滅した。


 見事だ。完璧なコンビネーション。度胸、作戦。


「なんか……やべえやつパーティーにいれちゃったかもしれない……」


 イエーイ、と音の鳴らないハイタッチをした二人の姉弟に、底知れない畏怖を覚えた。

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