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炎の画家と本物のカギ

 大人の余裕といった雰囲気のこの男が学は苦手だった。それなのに、やけに自分を気にかけ、構うのも、その要因の一つだった。余程、自分に自信があるのだろう。でなければ、他人に構っている余裕なんてないのだから。学はそんな卑屈な思いに苛まれ、隣の同級生に目をやる。同級生は目の前にいる大人に気を取られ、自分の視線など露ほどにも気づいていない。


  「何かあったんですか?」

  真剣な面持ちで旭が田口に問う。


  「ああ、そうじゃなければ俺はここに来ない。そうだろう」


 相変わらず、勿体ぶった喋りだ。癪に触る。嫌な男だと学は改めて思った。なんだか無性に腹が立ち、さっきまで怯えて固まっていた事も忘れ、沸々と言いようのない怒りが湧きあがる。


  「なら、早く用件を言って下さい。これ以上、僕らのような末端の為に、お忙しい田口さんのお手を煩わせる訳にはいかないですから」


  苛立った学が冷たく言い放つ。

 するといつもの余裕に満ちた雰囲気が急に変わった。目はいつになく、真剣で力強く、今まで見たことが無いくらい真面目な顔をしている。「実は……」そう言って背広の内ポケットから何かを取り出し、掲げる。


  「胡十子ちゃん、鍵、間違えて渡しちゃったそうだよ」


  田口が持つ鍵から二人は目を反らせずにいた。


  「どうりで開かない訳だよ!」


 学の反応がよっぽど嬉しかったのか、田口がケラケラと笑い声をあげる。旭は何も言わず困ったような顔をして二人の様子を眺めていた。


  「まぁ、そう怒るなよ。胡十子ちゃんらしくて、可愛いじゃないか」


  「ああ。おかげで有意義な時間が過ごせたよ。あんたらの可愛い胡十子ちゃんには後で十二分に礼を言わせてもらうよ」


  「そうか。期待しておくよ。彼女は君に叱られると堪えるみたいだからな」


 そう言って、田口は不敵な笑みを浮かべた。学は田口が言った言葉の意味が分からず、思考を巡らせていた。


  (堪える?僕がちょっと、小言を言ったぐらいで反省するとは思えないけどな)


  「それじゃあ、とっとと仕事を終わらせて帰ろう。俺は忙しいし、君達だって早く帰りたいだろう」


 門の扉の前までやって来た田口は、おもむろに鍵を差し込み回した。鍵はカチャリと音と共にあっさりと開いた。


  「よかった」


 旭が安堵の声を漏らす。それを聞いた田口は軽い笑みを浮かべる。


  「さすがに二度目のボケは笑えないからな」


 田口が扉を開け、家の中に入る。旭もそれに続く。

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