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炎の画家と寝室

 目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋ではなかった。

 いつもより柔らかいマットレスのに肌触りの良い掛け布団。

 白いベールのついた天蓋ベッド。


 ふと横を向く。


 すると華奢な手が自分の右手をそっと握っていた。

 イスに腰掛けたままベッドの上に突っ伏して眠っている。


「胡十子」


 学が手握る少女の肩に手かけ、揺り起こす。

 胡十子はゆっくりと目を開けたかと、思うと、勢いよく体を起こした。


  「学!」


  今度は胡十子が学の両肩をがっちり掴む。胡十子の目が潤んでいるのに気づき、学は思わず、目を逸らす。

 その態度に胡十子は思いつめたように短く息を呑む。


  「具合が悪いの?トモちゃんはケガもして無いし、健康状態に問題は無いって言ってたけど……」


 胡十子の目がますます涙で潤む。


「大丈夫、平気だ。もう頭痛も治まったし、めまいもしない」


  「本当?」


  「ああ、本当だ。それどころか、頭も体もスッキリしている」


 それは本当だった。

 眠ったおかげか、気分が悪かったのも、頭痛もすっかり消え失せていた。

 そう桐谷龍二の生家で奴の能力で生み出された植物の実の汁が顔にかかったせいで……。

 今までのことが鮮明に蘇り、学は胡十子の両肩をがっしりと掴む。


  「桐谷龍二はどうなった!捕まえたのか!」


  胡十子はじっと学の目を見つめ、ゆっくりと首を横に振った。

 ショックなどという言葉で表現出来ないほど学は落胆した。

 すぐ目の前にいたのに取り逃がしてしまった。

 あまりに悔しくて、情け無くて、悲しい。

 学は布団を握り締める。


 その手に胡十子がそっと手を重ねる。


「桐谷龍二は田口君が一生懸命、捜したんだけど見つからなかったの。おそらく見つかった時のために用意してたルートから逃げたんだろうって、田口君が言ってた。学はね。桐谷龍二の隠し部屋の通路で気を失って旭君がおんぶして田口君の車まで運んでくれたんだって。すぐに応援を呼んで捜索したけど、逃げられた後だったみたい」


  一気に話し終えた胡十子は暗い顔で目を伏せる。


「あのね。学。桐谷龍二が学に手紙を残していったの。今、応接間にある」


 それを聞いた学は急いでベッドから抜け出ると、すぐさま応接間に向かう。


  「待って!学!」


  胡十子の制止も聞かず、学は応接間の扉を荒々しく開けた。田口は立ったまま、カウンターにもたれ、西島智子は相変わらずいつもの定位置であるソファの後ろに立っており、その向かいのソファに旭が腰掛けている。皆一同にこちらを見ている。


「青崎君、気がついたようで良かった」


  田口が心底、ホッとしたかのような声で言った。学は無言でつかつかと歩いて田口の元まで向かう。

 田口の真正面に立った丁度のタイミングで胡十子が部屋に入って来た。

 しかし学は胡十子の方を振り向きもせず、田口に鋭い眼差しを向けている。


「桐谷龍二の書き置きは?」


 学ははっきりとした声で言った。

 田口が上着の内ポケットから折りたたまれた白い紙を学に手渡す。


「原物は本部の鑑識だ。これは俺が写真に撮ったものをコピーしたヤツだ。許可は貰ってある。君にやろう」


 学は田口から受けると、手紙を広げ、読み始める。

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