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炎の画家と夢

 学の特殊な能力、相手に幻を見せる能力だ。

 ただし、発動には条件があり、それが極めて厄介なものだった。

 まず頭の中で見せたいものを具体的にイメージし、それを絵にしなければならない。


 戦闘中など緊急時には悠長に絵など描いている暇は無いので、極めて戦闘に向かない能力だ。

 只、事前に描いて置けば時間制限も無く、いつでも能力を発動出来るので罠を張る時は有効な能力であった。

 ちなみに発動者である学は能力を発動していても本来の姿を見ることが出来る。


 一方、旭の能力は刀さえあればなんでも切断出来る能力だ。空中を切り、風を起こし、かまいたちのように相手を切る事が可能だ。実に戦闘向きの能力だった。


「無事で良かった。青崎がいつまでたっても戻って来ないから田口さんと一緒に探してたんだ。庭の草が何かを引きずったみたいに不自然に倒れているのを見つけて調べてみたら、地下への入り口を発見したという訳さ」


 旭が落ち着いた声で子どもをあやすかのように、ゆっくりとした口調で話した。


「まさか家の塀にこんな隠し扉があるなんて思わなかったよ。田口さんも盲点だったって悔しがってた。蔦に覆われてたし、パッと見では扉があるなんて分からないぐらいだった。引き戸状の扉で塀と扉の繋ぎ目が全然、分からなかった。持ち手らしき浅いへこみを田口さんが見つけてくれて、軽く引いたらあっさり開いた」


 旭が自嘲的に小さく笑う。


「で、開けた瞬間、さっきの植物の化け物が飛び出して来て、田口さんが瞬殺した。やっぱり、あの人、すごいよ」


 学から目線を外し、物思いにふけているように突き当たりの壁を見つめている。

「本当に強い」旭が独り言のように呟いた。その時だった。学の視界がぐにゃりと歪む。

 足に力が入らず、崩れる。

 どうして、また急に……。

 学は必死で意識を保とうとするが、等々、立っている事すらままならず、そのまま座り込んでしまう。「青崎!」と、自分の名を呼ぶ旭の声を耳にしたのを最後に学は気を失った。


 学は草花が生い茂る美しい庭に立っていた。まるで絵画のように美しい庭には色とりどりの草花が咲き誇っている。

 そこに白くて丸い物が落ちていた。

 ボール?丸い花瓶?なんだろうと不思議に思い、手に取る。軽い。

 反対側を見ようと、ひっくり返す。

 空虚な二つの眼窩、逆さまのハートの形に似た空洞になった鼻部分、白い歯が並ぶ下顎。

 学は思わず、手を離す。

 地面に落ちたそれが転がる。

 横向きになって停止したそれの眼窩と目が合う。暗闇を圧縮したかのような物恐ろしさに学は囚われた。

 その白い頭蓋骨は顎を大きく動かし、カチカチと歯を鳴らし始めた。

 すると上顎と下顎の歯が噛み合うたびに火のついたタバコが転がり落ちて行く。

 タバコの火が地面の草花に引火する。

 見る見るうちに燃え広がってゆく炎。

 学は身の危険を感じ、急いでその場から離れる。学はひたすら走った。

 無我夢中で走り、気がつけば、松林の中にいた。黄色みがかった枯れ草が一面に広がり、幹がよじれた松が至る所に生えている。

 鮮やかな青い幹の松も混在している。

 不思議に思いながらも、学は道無き道を草を掻き分けて進む。しばらく進むと松林を抜けた。

 目が眩むほどに黄色。


 ひまわり畑だ。


 そこには見渡すばかりのひまわり畑があった。

 当たり前だが上を見上げると、青い空が広がっていた。

 学はその事に心底、ホッとし、ゆっくりと息を吐いた。明るくて、温かい。

 学は自然と目を閉じた。

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