炎の画家と生家の鍵
「旭君、学をよろしくね」
胡十子は旭の方を向き、深々と頭をさげた。
「ああ、善処するよ」
そう言って、旭は軽く頷き、爽やかな笑顔を胡十子に向けた。
「そうと決まれば! トモちゃん!」
「はい。胡十子様」
「キッチンカウンターの上にある黒い箱を持って来て」
「承知いたしました」
西島は一礼し、カウンターキッチンへと向かった。
そして小さな黒い箱を持って来ると、胡十子に手渡した。
胡十子は「ありがとう」と言って受け取ると、二人からよく見えるようテーブルの上に置き、慎重に蓋を開けた。
「これが桐谷龍二の生家の鍵」
ごく普通のありふれた家の鍵だった。
胡十子は鍵を摘み上げると、旭に手渡した。
学は一瞬、うろたえたが、戦闘向きの能力者である三日月が持つのが理にかなっていると、考え、そこはぐっと堪えた。
「それでは改めまして、今回の任務は青崎学と三日月旭、両者に任命します」
凛とした胡十子の声が響く。
「おまかせください」
旭が深々と頭を下げる。
「ああ、引き受けたからには、ちゃんとやるよ」
憮然とした声で学が言った。そんな二人を故十子が嬉しそうに見つめている。だが、すぐに顔を引き締める。
「武運を祈ります。二人とも気をつけて……」
表情を保てず、悲しげに顔を歪ませ、言葉に詰まる故十子の優しさに、学は胸が締め付けられる思いがした。
「――ああ」
「ご期待に添えるよう努めます」
そう言うと二人はほぼ同時に立ち上がり、部屋を後にした。




