魔法
この物語は全て創作です。モデルはありません。
『もう一回聞くけど、織子先生は、その明さんって人の何が好きなの?顔』
土曜の昼下がり、古びた品のいいカフェで、私はモカ、民生はジンジャーティを飲みながら別れ話と言うか、今後の話をしている。
この前、ハワイ旅行に一緒に行った先で、民生は私にプロポーズしてくれるつもりだったと言ってくれた。
私もそうだろうと思って、民生について行く決心は付いていたのだ。
私が明にハワイ行きをうっかり喋ったのが間違いだったが、まさか阻止して来るなんて思わなかったし、あの時、明に付いて行かないで成田行きのバスに乗る事は出来た筈なのだ。
全て、私の明への執着心が招いた事なのだ。
『どうしても辞めろとは言わないよ。でも、離婚した僕が言うセリフじゃないかもなんだけど、織子先生の話聞いて、どうしてもその人が織子先生を幸せにしてくれるとは思えないんだ。』
分かってる。民生は嫉妬だけで言ってるんじゃ無い。私の事を心配してるし、明の幼稚さに呆れているのだ。
『明さんって、織子先生が他の男、つまり僕に走ったから子供みたいに取り返しに来たんでしょ?まさか結婚するつもりなんだよね?』
私は黙ってコーヒーを飲む。
『もし、また、自分の脇に織子先生侍らせて自分は他の女と付き合うんだったら、悪いけど明さん、刺しに行くよ?僕の初恋の織子先生なんだから』
私は民生のドラマチックなセリフにまた泣いた。
どうも、明と民生の狭間で、私は贅沢にも女の涙を流せるようになったようだ。
余裕かましてる場合じゃ無いんだけど。
民生は明と決着付くまで待つと言ってくれた。織子先生と僕の方が絶対に上手く行くよ?っと。
でも、私は民生に言った。
待たないで欲しいと。
貴方はいい人だから私みたいなバカでブスで年上の女に振り回されないで....と。本心だった。
だって、私は分かっている。
別にあれからだって明は、結婚しようどころか、私に恋人になれと言ってくれた訳でも、抱いてくれたわけでも無いのだ。
でも、私は明の魔法から覚めれ無い。
民生とのハワイ行きを阻止しに来たあの日、明はアゥデイの助手席で、泣いている私にまたキスした。
頰の涙を長い指で拭って、額と唇と....初めて首筋に。
私は電流が走り、そして再び明の魔法にかかったのだ。
きっともう溶けない。
せっかく民生って言う王子が私を悪魔のような男から救いに来てくれたのに。
私はそのままフラフラと明のマンションについて行き、またいつもように、1人で明のマンションの空き部屋で寝たのだった。
でも、久しぶりに熟睡してしまった。まるで古巣に戻って来たように安心し、馬鹿な私は眠りについたのだった。
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別な男から引き離した癖に織子に手を出して来ない明。生かさず殺さずってつもりじゃないんでしょうね?