ずるい男
この物語は全て妄想です。モデルはありません。
織子と民生は平和に付き合い始めた。
妻に裏切られた男と、初めてまともに恋愛する年上の女。
なかなか良い組み合わせであったが、そうは上手く行かないのが人生だ。
大体予想されると思うが、織子の付き合いにチャチャを入れて来たのはやはり明だった。
明は織子に、民生はどういう性格の男で、どんな仕事をしたいて、前妻とはきっちり切れてるのかとか、それはそれは細かく聞き出した。
まるで、身内のプロファイルそのものだった。
そして....
織子は、口では明に対して私の事はもうほっといてよ!と憎まれ口叩きながら、内心嬉しくて嬉しくてたまら無いのだった。
織子もそんな根性なしの自分に驚いてしまった。
だって、明とは別に何も無いのだ。明にはいつも恋人がいるのだ。私の恋人では無いのだ。
ソフトキスして酔っ払って寝て、マンションに泊まって、身体のお付き合いは無いのだ。
いつまでもいつまでも友達なのだ。
でも民生は、もうあの頃の中学生では無く、織子に初体験を頼んで来た子供では無く、離婚はしたけど、大人の男として私の前に現れたのだ。
それは運命だったのだ。
だから明に邪魔されたら私の女としての幸せは2度と無いのだ。
私は美しい女じゃ無いんだから....
そう、理屈では分かっていた。
なんの進展も無い明と遊び歩いていたって、楽しいだけで、織子の人生が充実する事なんて何一つ無いのだ。
でも織子はやっぱり明に戻った。戻った?明が連れ歩くだけのお付きのような女に戻った。
織子が、民生と一緒にハワイに遊びに行こうとしてた日、明が迎えに来たのだ、愛車のアウディで。
明は、織子のアパートの前で何も言わずに車のドアを開けて待っていた。
織子は黙って乗って.....
泣いた。
明が迎えに来て嬉しいのか、これで民生を失ってしまった未練なのか、自分が1人の男に飛び込めなかった不甲斐なさなのか、それとも実はホッとしたのか....
自分でも良く分からず、織子は助手席でさめざめと泣いた。
織子の恋愛を邪魔して来た明。しっかり責任取れよ?おい?




