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長い指  作者: naomitiara-tica
12/15

流産

この物語は全て創作です。モデルはありません。

明との生活もすっかり夫婦然として来たある日、由美が訪ねて来た。



由美はその後、明と別れてから、羽振りの良い男を捕まえ今やすっかりプチセレブ的生活をしていた。



由美はいたって単純なので、織子が原因で明と別れた訳だが、元々織子とも友達だったので、昔の事など綺麗サッパリ忘れて、織子に連絡して来る。



織子にしても、明との不思議な関係と、苦しかった葛藤を話せる、貴重な友人の1人だった。



織子の明との今までの正確な経緯と成り行きを知ってるのは、この由美と、元彼の民生だけだった。



民生とはその後も、ちょこちょこお互いの相談をラインで話してる。



『織ちゃん、赤ちゃんはまだ?ってか籍はいつ入れるのよ?』



『明が独立するって言ってるから落ち着いてからね。そもそも一緒に暮らしてるだけって感じよ?今もって』



さすがに元カノの由美に、明が朝に晩に織子を離さないのとは言えまい....



しかし、

『そんな事言ってると赤ちゃん出来なくなるからかもだから、早くしなさいよ、私も子作りするから一緒に妊婦さんになろ‼︎』

と、珍しくしつこい。



織子はちょっと引っかかった。



由美は決して利口者とは言い難いが、人のプライバシーに口を挟む性格では無く、昔から人様の諸事情に無頓着だったからた。



『由美ちゃん、何か話あるんじゃ無いの?私に』

由美のお持たせのティラミスを前に押しやりながらさり気なく水を向ける。




由美は言い渋っていたが、やがて話し始めた。



由美の旦那は地方テレビのプロデューサーをしており、まぁ、ぼちぼち、あちこちに知り合いがいる。



由美が三流モデル時代に由美の美貌に一目ボレして猛アタックした素直な人柄だ。



その旦那が、仕事でたまたま、明の実家の弟のカメラマンと話す機会があった。



世の中は狭い。



すると、明の実家では、明が女と暮らしている事は分かってない。



それどころか明が独立するにあたり、母親同士が幼馴染みの資産家の娘を縁談に準備しておりもうすっかり両家はそのつもりでいる。



相手の女性、明と同じ干支、23歳だそうだ。



この前実家に立ち寄った時、明が、好きな女がいるからお見合いは無理だと言ったら、母親がそれならその縁談の相手より何もかもヒケを取らないなら認めよう。

まずは連れて来いと吠えたらしい。



『だから、由美ちゃん、気を悪くしないでね。明さん、ちょっとお母さんと織ちゃんの間で板挟みなって、参ってるんじゃないかって、うちのが』



それはそうだろう。



どこの親も、心配してるわけだから。自分の子供は誰よりも幸せになって欲しいと思ってるのだから。



まして、会社を独立するとなったら、やはり嫁の実家が裕福であるに越した事は無いだろう。



自分が仕事柄、彼方此方回っているから昔から出来の良い自慢の兄貴の明に何かと期待が大きいんだよね?と。



織子は黙って聞いていた。



前々からそんな気はしていた。



昔、明から聞いた事がある。



実家のお母さんが、とにかく明を手放そうとしなかった事。学歴も容姿も弟も負けないのに、とにかく母親の明への愛情は異常だった事。



家族の優先順位は、明、父親、弟、母親だった事。



母親ならず、家族中が明を溺愛してお殿様扱いした事。



そんな家族、とくに母親から逃げたかった事。男だから美人は勿論大好きだが、相手が母親みたいに明を縛り出しと、途端に逃げ出していた事。



そして....恥ずかしい事も良く言った。



織子の中に入っていくと、ふんわりと包まれて何もかもに安心してしまう事。



織子のぽちゃぽちゃした贅肉が自分のお腹にプリンプリンと当たるのが大好きな事。



しかし、いざ現実となった時、気難しい母親が織子を気に入らないのは考えるまでもないのだろう。



現に、織子は深い関係になってからも、実家に紹介された事は無い。



最も織子も実家に明を連れて行った事はない。



今思うとお互い、心の何処かで、いずれ迎える別れを予測していたのだろうか?



そんな時、織子は流産した。



気を付けていたのだが、たった1日ピルを飲み忘れたのだ。



産婦人科の病室で、麻酔が覚めてぼうっとして気づくと、明が泣いていた。



『織子、本当に本当にゴメン、俺が不甲斐ないから。織子に負担ばかりかけるから....』



いつまでたっても少年の明は、織子の手を握ってさめざめと泣いていた。

悶々と生活しているうちに、うっかり妊娠、流産してしまった織子。明はどうする?

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