ハワイの夜
この物語は全て創作です。モデルはありません。
明に女として愛された場合
➖最高の妄想➖
単に同居人が欲しかった場合
➖最低の妄想➖
を毎日毎日繰り返し、織子は次第に病んで行った。
胃を患い、ほんの少しずつ痩せていった。
そんな時、明のハワイ行きへの提案が有ったのだ。
明は馬鹿みたいにはしゃいでいる。
あまりにも陳腐な表現であるが、決して表せない澄んだ青い海、灼熱の太陽、ハイビスカスの花、白い砂、すくえるように近い熱帯魚、ブルーハワイ....
それらに囲まれて騒ぎに騒いだ2人は、その日初めて普通の男女の夜を迎えた。
明も織子も全く自然にお互いを求めて一つになった。
今までの明への長い疑惑と苦しみは一体何だったんだろう?
この日を迎える為に、神様は私に試練を施したのだろうか?と思うぐらい、それは熱く甘く情熱的な夜だった。
2人は、何度もはて、少し眠って軽く飲み直して、また求めた。
朝、心地よいエアコンの効いた、しかし強い日差しの、高級ホテルの部屋の中で目覚めた織子は、恥ずかしながら身体の彼方此方が痛かった。
朝食だけバイキングを食べに行き、織子は疲れ過ぎて食欲も無かったが、明は旺盛にあちこちの皿を平らげた。
そして部屋に戻って、また第二弾。
旅行中、ずっとそんな生活だったので、肝心なハワイの写真がほとんど無い有様で、織子は少し怒った。
すると明は
『またすぐに来よう!今度はちゃんと見たいとこ計画して』
と、なんてことなく言った。
ハワイはなかなか来れないでしょ?と織子が反論すると、
『じゃ、サイパンとかチェジュ島でも良くない?ディズニーランドのホテルでも。USJでも。
こらからずっと一緒なんだし』
どうも、明と話してると、そもそもの話の視点がずれてると言うのか、正直過ぎるのか、考え込んだ自分が損した気がして来る。
最も長い付き合いの中で、織子はそんな明の天然ボケのような、人たらしのような掴みどころの無い所が気が楽で好きなのだが。
『ねぇ、織子ぉ。今日アサリの味噌汁飲みたいぃ。大粒のやつね?』
全くこいつは。
織子が明から離れないって分かってる。明を愛してるのか?とか聞いた事もない。もちろん織子を愛してるとも言った事も無い。
しかし、織子の指には特注で作らせたプラチナの指輪がシャなりとはめれれている。
明がハワイでいきなり織子の指を掴んではめたのだ。自分のはさっさと自分ではめていた。
今更だが、その日、明が織子にしたキスはいつものワンちゃん猫ちゃん用ソフトキスじゃ無く、噛み付くようなキスだった。
今も少し唇も痛い。
ハワイの思い出を何回も何回も反芻しながら、織子は幸せだった。
2人が交わった日から、日本に帰って来ても、明は毎日のように織子を激しく求めた。
独立すると言っていたので、まだ妊娠しない方が明のためだと思い、織子は避妊に必死だった。
だって明と来たら、所構わず織子を襲ったから^_^
そしてその甘い甘い、生活は約2年間続いた。
織子、31歳から33歳まで。
その後の孤独さとまるで引き替えのように、織子は幸せで、明は最高の理想のオトコであった。
あの日、織子1人を残して行ってしまうまでは。
やっと明と幸せになれた織子。今だけはその幸せに十分に浸って!