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3:勇者とナビの正体!?

 突然現れた親友の姿に俺は言葉を無くした。


 だってこいつはあの地震で瓦礫に押し潰されて死んだはずだ。


 なのに今目の前でいつものマヌケ面を晒し、キョロキョロと辺りを見回している。


「なあ、ヒビキ。ここどこだ?劇のセットにしてはリアルだし。」


 言うことまで間が抜けている。


「ところで、地震はどうなったんだ?」


 急に景色が変わり戸惑う裕太を俺は思わず抱きしめた。無言で力一杯抱きしめた。


「え?おい、ヒビキどうした?なんだ、泣いてるのか?」


 急に抱きしめられ驚く裕太だったが、俺の顔を覗き込み笑った。


「違うよ。目から汗が出たんだ。」


 裕太から離れ言い訳をする。


 187cmの男を172cmの男が抱きしめている......絵面的に気持ち悪い。


 自分たちの姿を客観的に想像してその気持ち悪さに苦笑いする。


 俺は近くにあった岩に腰を下ろしあの地震の後の事を説明した。


 古井戸に落ちた事、管理世界とそこで神様に会った事、この世界が地球とは全く違う異世界である事、魔物がいて魔法が使える世界である事、異能ギフトによって裕太が現れた事、恐らく地球で裕太は瓦礫に押し潰され死んでいただろう事。


 ゆっくりと順番に話していく。


「そ....そうか。あまりにぶっ飛んだ内容で、まるでテレビや小説みたいな話だけど。

 この見慣れない景色にヒビキの話......なんとなくだけど、それは本当の事なんだなぁと思えるよ。

 確かに、地震の時落ちてくる瓦礫に押し潰されたような、痛みと言うか記憶と言うか......思い出したくないけど、あれは事実だったんだな。」


 ブルっと身を震わせ、俺の話を一通り聞いた裕太は少し顔をこわばらせながら言った。


「でも、俺はそこで死んだんだよな?じゃあなんで、ヒビキの異能ギフトとやらで召喚されたんだろう?

 死人を呼び出す能力なのか?------え?俺ゾンビなのかな?!」


 冗談なのか本気なのか、裕太は自分の身体をペタペタ触って確認した。


 俺は困ったように首を横に振った。


「今のお前がゾンビなら、俺は迷わず次の生ゴミの日に出すことにするよ。

 俺にもわからないんだ。突然ユウタが現れてすごく驚いた。

 初めての召喚だし、どういった能力なのか自分でもわかっていないんだ。


 ......そういえば、一緒にナビも召喚したんだけど......。」


「ナビ?」


「ああ。見習いの女神様に貰った異能ギフトと関係があると思って召喚してみたんだけど。

 ユウタが現れた魔法陣とは別に、リュックに魔法陣が現れて。あれ、どうなったんだ?」


 思い出したように地面に置きっぱなしのリュックを見た。


 雄太が現れたのですっかり忘れていたようだ。


 すると、地面の上のリュックが小刻みに振動していた。



 --------ブーーーッ、ブーーーッ、ブーーーッ、ブーーーッ。


 なんだこの振動?


 ......もしや、スマホ?


 リュックの中身を思い出しながら考えた。手を入れて振動する物体を手に取る。


「え?なに?電話が掛かってきてるの?」


 雄太が俺の手元を覗き込んで甲高い声を出した。


 俺も驚いた。

 電話など掛かってくるはずがない。だってここは異世界だ。


 しかし、スマホに表示されているのは着信の画面。そこには着信者の名前が表示されている。


 -----女神見習い、と。


「なんで女神さまから電話が掛かってくるんだ?管理世界から掛けてるのか?って言うか普通に通話が出来るのか?」


 困惑して画面の表示を見つめる。

 スマホは暫く振動を続けていたが......。


「あ、切れた。」


 着信は切れ、画面には着信履歴のメッセージ。

 やっぱり女神見習いと表示されている。


「出なくて良かったのか?」


「...異世界で女神さまからの着信っていう、ツッコミ所の多さに固まって、思わず出忘れてたよ。」


 裕太にそう返したところで、再びスマホが振動を開始した。



 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ........



 さっきより振動が忙しない。


 出てみる事にしよう。


「もしもし?」


 俺のなんの捻りもないオーソドックスな電話口の挨拶に、スマホから女神の叫び声が大音量で響いた。





「なんでマナーモードにしてるんですかぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」





 あまりの音量に、耳がキーーンとしてスマホを耳から遠ざける。




「気付いてもらおうと、一生懸命にアピールしても声が出ないし。ブーブー振動するだけだし。ずっと振動しているのも疲れるし。やっと手に取ってくれたと思ったら全然出てくれないし。一瞬諦めちゃいました。でも、またアピールしたら漸く出てくれて。もーーぅ、疲れましたぁ......。」




 そこまでを一気にまくし立てると、フレア様はため息をついた。


 管理世界で話した時は優しいおっとりとした丁寧な話し方だったが、今は印象が違う。


 少し可愛らしい。

 言ったら怒るだろうな。恥ずかしいから言わないけど。




「まさか異世界で電話が掛かってくると思わなくて。管理世界から電話が掛けられるんですね。

 あ、そうだ。俺も丁度聞きたい事があったんです。異能(ギフト)の能力の事で。

 主神様に頂いた"召喚"という能力を使って≪勇者≫を召喚したら、地球で死んだはずの親友が現れたんです。

 あと、≪ナビ≫というのも召喚したはずなんですが、何も現れなくて。

 あ!もしかして、このスマホの事ですか?異能(ギフト)の"ナビ"はフレア様から頂いた能力ですし、管理世界からフレア様の助言を頂けるテレフォンサービス的な能力ですか?」



 俺がそう伝えると、フレア様は「召喚?勇者?ナビの異能(ギフト)?」と何やらブツブツと考え始めた。



「まさか......ちょっとヒビキさん。ステータス画面を見せてください。ええ、そう......カメラでステータス画面を映すようにして.......。」



 言われた通りにステータス画面を開きカメラのレンズを向けた。


 通常は鑑定の技能スキル以外では他人のステータスは見えないらしいのだが、女神の力のなせる業かフレア様はカメラのレンズ越しに俺のステータスを確認している。



「ふむふむ。なるほど。おかしくなっていた文字も修復されていますね。なんですかこの種族名は......。MPも......。"豪運"?"具現化魔法"?"召喚"に"ナビ"......こんな風に能力が変質したんですね。

 もしかすると【古井戸に落ちし者】と言う称号が影響を......。」



 またブツブツ言いながら考え始めた。


「フレア様?」


 俺の声に、ハッと正気に戻ったようで電話の向こうのフレア様は咳払いをした。


 --------俺たちの事忘れてましたね?フレア様。




「あ、おっほん。失礼しました。今回の件について色々仮説を立てていたもので。

 ヒビキさんのステータスを見てだいたい理解と納得がいきました。

 まず最初に、私は管理世界からヒビキさんに話しかけているのではありません。

 私は、ヒビキさんが手にしているこの機械の中に居るのです。」



「「スマホの中に?」」



 あまりの事に俺と裕太は顔を見合わせる。



「はい。私は管理世界に居る時、ヒビキさんが異能ギフトを使う魔力の波動を感じました。

 管理世界を通り加護を与えた相手の魔力は感知しやすいのです。

 その魔力を感じる事で加護を与えた者の居場所を把握し見守っているのです。」


 加護ってセ〇ムやアル〇ックみたいな物なのか......。


 神様に見守って貰えるなんて、超安心セキュリティーだな。



「しかし、異能ギフトを使う魔力を感知した瞬間、急に身体ごと引っ張られて気が付けばこの機械の中に......。」


 え?どういう事?ナビを召喚したら、フレア様を呼び出しちゃったのかな。

 身体ごと......?


「私にも初めての出来事で、全く理解出来ない事でした。しかし、ヒビキさんのステータスを見て納得しました。

 ヒビキさんは古井戸に落ちてこの世界にやって来ました。

 この古井戸は、この世界と繋がってから誰にも気づかれず一度も使われなかった空間です。そのため、非常に密度の濃い魔素が溜まっていました。

 そこを通った事でヒビキさんのMPは異常なまでに増加し、また奇跡的にその空間に落ちた事で称号を得て非常に珍しい"豪運"を手に入れました。」



 それで俺のMPは無限を意味する記号が表示されちゃったのか。

 あと、"豪運"って珍しい物なんだね。



「そして、その異常なまでのMPのせいで種族が"元 人間ヒューマン"になってしまったと思われます。」



「......人間辞めちゃったの?俺。」



 ああ、また目から汗が大量に......。


 裕太が俺の肩を、慰めるようにポンポンと叩いた。



「そして"具現化魔法"。これは転移した事で授かる異能ギフトの中でも非常にレアな能力です。

 ここまでレアな能力は過去に見た事がありません。

 これも、"豪運"を持つがゆえ引き当てた能力でしょう。」



 すげえな。"豪運"先生。


 地球でこの異能ギフト持ってたら宝くじで7億や10億ばんばん当ててただろうな。


 来るの遅いよ、先生。もっと早く会いたかったよ。


 俺が億万長者の夢を見ている間もフレア様は構わず説明を続けていく。



「そしてこの"具現化魔法"を引き当てた事で、主神様や私に希望した異能ギフトが"召喚"・"ナビ"として形を留める事に大きく影響しました。

 まず、使い魔や神獣ではなく勇者や......見習いとは言え、女神である私を召喚するなど普通ではありえません!!!」



 非常識認定されちゃったよ。また目から汗が......。



 また裕太がポンポンと俺の肩を叩いてくれる。


 ありがとう、友よ。慰めてくれて。



「その"具現化魔法"が、ヒビキさんの希望『心を許せる友』として地球で死んでしまった親友の魂を、『旅のガイド』として"ナビ"の能力を授けた私を召喚させてしまったのです。」



 "具現化魔法"も最強だな。


 この世界で『ぼっち』の俺の為に、地球で死んでしまった裕太の魂を呼び寄せてくれたのか。



 魔法にまで、俺がこっちの世界で自力で友達作れないと思ってるとか......。



 --------悲しすぎる。



 しかも、旅のガイドが女神、って。



 --------豪華過ぎるだろ。
















ブックマークありがとうございます。

未熟な文章ですが今後皆様に読んでいただける作品になるよう精進いたします。

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