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12:達成報告

 

 ギルドへ向かい、受付で依頼達成の報告をする。

 薬草採取はリネラとポポフはそれぞれ10束ずつ、クリネオは8束を提出。魔物討伐はランクFのゴブリン(戦士)1匹、ランクEのフェザータートル1匹、ホーンラビット10匹、ゴブリン(ウィザード)1匹、ファイヤーウルフ3匹、ランクDのオーク2匹と依頼内容以上の成果だった。

 受付で依頼達成の報告をしてから買い取りカウンターで魔石を出し、そのまま裏の解体場まで魔物の死体を置きに来ていた。


「すごい数ですね。本当に3人だけで倒したんですか?」


 マキノが並べられた魔物の数を見て驚きの声を上げた。

 ファイヤーウルフとゴブリンは使える素材がないので魔石のみしか持ち帰っていないが、後は全て死体ごと持ち帰った。

 フェザータートルの甲羅は防具の素材に、毛は装飾品の素材に、ホーンラビットの角は武器や装飾品の素材に、オークとホーンラビットの肉は食用になる。


 俺達は受付に戻り、クエスト達成報酬と素材の買取報酬を受け取る。


 内訳は、ファイヤーウルフの魔石 銀貨5枚×3、ゴブリン(戦士)の魔石 銀貨5枚、フェザータートルの魔石 銀貨8枚、ホーンラビットの魔石 銀貨8枚×10、ゴブリン(ウィザード)の魔石 銀貨8枚、オークの魔石 金貨1枚×2、フェザータートルの甲羅 金貨2枚、毛 銀貨5枚、ホーンラビットの角 金貨1枚×10、ホーンラビットの肉 金貨2枚×10、オークの肉 金貨3枚×3。

 薬草採取報酬。リネラ 10束 銀貨1枚×10、ポポフ 10束 銀貨1枚×10、クリネオ 8束 銀貨1枚と銅貨5枚×8。

 魔物討伐報酬。ランクF1体 銀貨5枚。ランクE15体 金貨1枚×15、ランクD2体 金貨5枚×2。

 全部で、金貨70枚。


 マキノから金貨の入った麻袋を渡されリュックに入れる。


「クエスト2回分の報酬としては凄い額ね。ベテランの冒険者でも、一度にそこまで稼げないわよ。しかも、クエスト自体はランクFの依頼だし。

 とりあえず、文句なしでランクアップよ。3人共ランクEになるわ。

 一度全員分のギルドカードを提出してくれる?ランクを更新するから。」


 呆れ顔のマキノに言われた通り3人分のギルドカードを提出する。マキノはカードを持って奥へと入って行く。


「ランクアップと言うのは本来レベルの低い駆け出しの冒険者が依頼数をこなしていく過程でレベルアップしていく事で次のランクに進むことを許されるんだが、お前達は最初から規格外だな。」


 解体場から戻ってきたマディスもジト目で見てくる。驚きを通り越して呆れ顔だ。


「本来5~6人でパーティを組んで、冒険者個人のレベルがランクFならパーティ全員の力を合わせてランクEの魔物が漸く倒せるレベルなんだが。君たちは3人でランクDのオークまで倒してしまっているしね...。実力としては個人レベルでランクDに近いのかもしれないけど......。」


 バアムも驚きを隠せない様子で呟く。


「実際に戦闘を見たわけじゃないが、魔物の死体の傷も少なすぎる。少ない手数で相手を倒している。ランクDの実力はあるだろうな。......しかし、依頼達成数としてはまだ少ないから今回はレベルE止まりだな。」


「そうだね。でもランクDに上がるのはそう遠くないね。」


「実に期待できる新人達だわ。」

 戻ってきたマキノにギルドカードを渡された。


「お前達、この町にはいつまで居るんだ?」


 俺と裕太は顔を見合わせる。


「そうですね。今日はもう1泊宿に泊まる予定ですが、明日には次の町へ出発しようと思っています。田舎者なので色々な町や大陸を見てみたいんですよ。」


「そうか。腕の立つ新人だからずっとこの町に居て欲しいと思ったが、仕方がないな......。」


「まあ、田舎に里帰りする時にはまた寄ってよ。」


 マディスとバアムは残念そうにそう言ってくれた。


「はい、そうします。」


「次の町へ行くなら出発前にクエストを受けて行くと良いわ。その町限定のクエストもあれば、どこのギルドでも達成報告が出来るクエストもあるから。」


 依頼主が町の住人であれば基本はその町限定のクエストとなるが、ギルドからの依頼や大きな街の商会からの依頼など広範囲で依頼を出す場合もあり、その多くはどこのギルドでも達成報告が出来たり、報告ギルドが複数指定されている場合もありその範囲内であれば移動中に条件を達成クリアし近くの町で達成報告をすれば良い。


「なるほど。では明日出発前にクエストを受けて行く事にします。」


 俺達は冒険者ギルドを出て月灯亭に戻る。


 メリルに今夜もう1泊する事と明日の出発を告げ、一度部屋に戻って『洗浄クリーン』で綺麗にしてから食堂に下りる。

 今日のお薦めはホーンラビットの肉と野菜のごった煮だったので俺はそれを選び、裕太とノエルはオーク肉のステーキを注文した。


 うん。きっとそれを食べるだろうと思ってたよ。


「これがオーク肉のステーキ!?美味しいね!!」


「旨いだろぉ!!たくさん食えよ!!」


 二人はオーク肉のステーキを物凄いスピードでたいらげていく。

 俺はホーンラビットの肉と野菜のごった煮をゆっくりと味わう。柔らかく煮込まれていてとても美味しい。

 地球より調味料が少ないせいか、全体的に薄味であるが素材の味が生かされていて全体的に旨い。


 食べ終わるとメリルを呼び止め、明日の昼食用の弁当を頼む。メリルは快く引き受けてくれた。


 部屋に戻りベッドに入ろうとすると、またノエルが俺と一緒のベッドに寝たがりひと騒動。


「ボクはご主人様を悦ばせたいんです。」


 今夜もノエルの好意(?)を丁寧に断り、添い寝のみを許可する。

 裕太は相変わらずニヤニヤしながら眺めている。

 また抱き付かれたままの寝苦しい夜が過ぎ、朝になる。


 俺達はメリルと宿の主人夫婦に礼を言い、昼食用の弁当を受け取る。


「またこの町に来た時は~うちの宿に泊まってくださいね~。」


 メリルに見送られ俺達は月灯亭を後にする。


 町を出る前に依頼を受ける為冒険者ギルドに向かう。

 冒険者ギルドに入ると今日もギルド内は賑わっていた。


 依頼ボードでランクEの『魔物討伐』と『素材採取』を選び受付に並ぶ。


『魔物討伐』は、ランクE~Dの魔物を5匹以上討伐するという内容で、『素材採取』は指定の魔物の素材を集めて納品するという内容だ。今回の『素材採取』はランクDのリトルベアという魔物の素材採取である。

 リトルベアと言うのは地球に居る熊のような見た目で、数か所の額や胸などの急所や両手足を鱗のような装甲で覆っている。額にひし形の石があり、ルビーのような赤い石なのだそうだ。

 その鱗のような装甲と、額の石の納品が達成条件だ。

 ランクDの魔物なので討伐にはランクDの実力が必要だが、パーティで狩る場合はランクEの冒険者達でも倒せるので、クエスト的にはランクEの扱いとなっている。


 受付前には短い列が出来ていたが程なく俺達の番になった。


「おはようございます、ヒビキさん、ユウタさん、ノエルさん。」

「おはようございます、マキノさん。」


 今日も受付に座っていたマキノと挨拶を交わす。


「出発されるんですね?」


「はい。出発前に道中でのクエストを受託していこうと思います。」


 マキノは依頼書を見て少し考える仕草を見せた。


「この『素材採取』のリトルベアは、本来ならランクEの冒険者が5~6人のパーティで受ける依頼ですが......まあ、あなた達なら大丈夫でしょう。ランクDのオークも討伐出来るわけですし...。いいでしょう、すぐ処理しますね。」


 マキノは依頼書に必要事項を書き込み、受領印を押す。


「ランクD相当の実力はあると思いますが、道中にはそれ以上に強い魔物も居ます。無理はなさらずに、命を大切にしてくださいね。」


「はい、ありがとうございます。」

「「...ありがとうございます。」」


 元気よく受け答えする裕太と、後ろで小さくお辞儀をする俺とノエル。


「おお!坊主共、出発するのか!」


 奥からマディスとバアムの二人が出てくる。


「はい、今から出発するところです。」


「お前らは強くなれる。過信して命を落とさないよう注意して、腕を磨けよ!」

「里帰りの時にはこの町にも顔を出してくれよ。」


「はい、ありがとうございます。」

「「...ありがとうございます。」」


「坊主......次来る時は睨まない程度には慣れてくれよ?」


 マディスが俺を呆れ顔で眺めながら呟いた。


「......努力...します。」


 そう簡単に俺の人見知りは治らねえよ!!!


 俺達は3人に別れを告げ、冒険者ギルドを出て門へ向かう。


「やあ!もう町を出て行くのか?」


 最初に冒険者ギルドまで案内してくれた兵士のエバンが今日も門に立っていた。俺達の旅支度(....と言っても、見せかけの荷物なのだが。)を見てそう声を掛けてきた。


「はい、今から出発しようと思います。」


「おや、仲間も増えたようだね。今度はどこの町へ行くんだい?」


「フォーネに向かおうと思います。田舎から出て来たのでその先の首都ネロを目指すつもりです。」


「そうか。今朝町へ着いた冒険者達の話だと、ランクDの魔物の群れが居たらしい。数は少ないがランクCのトロールの目撃情報もある。トロールは大きいから早く発見できるし、動きが鈍いから戦闘は避けられるだろうが、十分注意してくれ。

 自分のレベルに合わない強い敵とは無理に戦わず命を大事にするんだ。」


「「「はい。」」」


 エバンと別れの挨拶をし、俺達はフォーネに向かう為南へと進んだ。


 L字型をしたこの大陸は、首都ネロの先に魔物の森と呼ばれる場所がある。

 荒野が広がるミストよりも強い魔物が森の中には居る。

 おそらくランクC~Bの魔物がうじゃうじゃ居るのだろう。

 森の中の魔物は基本森の中から出てこないが、時々変わり者と言うか森から出てきてしまう魔物もいる。

 その為、首都ネロに近付く方がより強い魔物に出会う確率が高いのだ。

 ではなぜそんな魔物の森の近くにミスト国は首都を設けたのか。

 魔物の森の先にはドワーフの国サキアスと、カスト・レーニアという国がある。その先には別の大陸へとつながるハバート大橋がある。

 他国との交易やそれにかかる移動日数を考えると、今の場所に都市を築くしかなかった。

 それだけ、このミストという国は荒れて痩せた土地が多い為他国からの物資に頼らなければいけないのだ。


 午前中は魔物に遭遇する事もなく旅は進んだ。

 太陽が高く昇ると裕太の腹の虫が盛大に騒ぎ出す。

 俺達は月灯亭を出る時に受け取った弁当を食べる事にした。

 包みを開けると、中身はベーコン風の肉と野菜が刻んで練り込まれたパン・マギのチーズ・オーク肉の干し肉・甘い香りのする蒸しパンに果物のジャムがかかっている。


「うわ、旨そう!!」

「甘い匂いがするーーー!!」


 裕太は干し肉とパンを、ノエルは蒸しパンにかぶりついた。

 俺もチーズとパンから食べ始める。

 もちろん食べる前にコピー済みだ。手に入れた食べ物はきちんと写真を保存して食のレパートリーを増やさなければ。

 俺は簡単な料理も出来るし、それなりに美味い物は作れると思うが、そんなにレパートリーが多いわけではない。裕太の料理の腕はないに等しいし、ノエルも料理の経験はないようだ。


「ご主人様を悦ばせる料理を作れるようになる!!」


 と、言ってくれてはいるがそうすぐには無理だろう。

 せっかくコピー機能があるんだし、美味しい料理をぜひ増やしていきたいものだ。


 全て食べ終わったノエルに蒸しパンをあげると喜んで食べ始めた。

 裕太は足りなかったのか、サンドイッチやおにぎりを出して食べている。


 食事が終わり再び歩き出すと、フレア様の気配察知が魔物の気配を見つけた。


「このまま南へ進んだところに魔物の気配があります。少し数が多いですね。

 ランクDのオーク(戦士)5匹。少し離れて、ランクDのオーク(戦士)1匹とランクEのゴブリン(ウィザード)3匹。少し離れて、ランクCのオーク(ウィザード)2匹とランクCのトロール1匹。」


 どうやら、この先に魔物の群れが三つもあり、最後の群れにはランクCのオークとトロールが居るようだ。このオーク(ウィザード)は火属性の"ファイヤーボール"の魔法を使うらしい。


 トロールと言うのは、3m程ある人型の巨人だ。動きは鈍く知能は低い。

 一度に三つの集団を相手にするのは避けたいので、とりあえず一つずつ潰していきたいと思う。

 まずはランクDのオーク(戦士)5匹の群れに狙いを絞る。

 幸いそれぞれの群れは少しばかり距離が離れているので個別に撃退できそうだ。


 俺達は魔物に気付かれないように距離を縮めて行った。









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