表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

0:プロローグ

初投稿作品。

不定期投稿。

 

 

  秋晴れの空。


 今日は待ちに待った学園祭だ。


 我が校は私立大学の附属高校で、初等部から高等部まであり敷地も順に隣り合っている。

 その為学園祭も全校合同である。

 俺は高等部の一年だ。


  初等部は主に夏休みの自由課題の展示をしており、中等部は各クラス別の研究発表や輪投げ・水風船つりなどを各教室で行なっている。


  高等部は各教室でお化け屋敷やメイド喫茶を出店したり、屋外にたこ焼きや焼きそば・クレープなど屋台を出店したりしている。


  俺のクラス1年C組は、飲食店ではなく体育館の舞台で劇を発表する。

  他にもアイドルのダンスをクラス全員で踊ったり、自作映画を上映するクラスもある。

 俺たちの出番は午後の部の2番目であるため、午前中は体育館の裏に集まって大道具や背景・衣装の最終チェックである。


  演目は、『ロミ男とジュリ恵』......。


  ......皆まで言うな。言いたいことはわかる。


  俺、黒鐘(クロガネ) (ヒビキ)は大道具係の為、背景に不具合がないか・どの順番で運び込むのかをチェックしている。


「ヒビキ君。こっちに衣装箱、紛れ込んでないかな?」


 後ろから声を掛けられ振り向くと、クラスメイトの松前(マツマエ) 静香(シズカ)が立っていた。


「ヒビキ!俺の衣装知らないか〜?」


 その隣には中等部からの俺の親友、鳥越(トリゴエ) 裕太(ユウタ)が居た。


 松前は、152cmとやや小柄。

 その身体に不似合いな大きなバストの持ち主である。

 しかし、美人と言うよりは美少女という表現が相応しく、大きな目と長いまつげ、化粧をしているわけではないのにほんのりと薄いピンクの頬に艶やかな唇、少し茶髪でゆるくクセのある髪を肩の上で揺らしている。

 その外見とイタズラっぽく相手をからかうような口調や笑い方から『小悪魔』と呼ばれている。


 裕太は、背が高く187cm。

 初等部からずっと剣道を続けており、中等部では個人で県大会優勝。全国大会では惜しくも2位の成績で3年の時には主将を務めていた。

 普段から熱心に稽古を続けており、体操服(ジャージ)の上からでも上腕筋や胸筋の盛り上がりがよくわかる。短く刈った髪はスポーツマンらしく、女子の人気も高い。


 俺は172cmあるが、細身で筋肉がつきにくい体質だ。

 中等部からずっとアーチェリー部で練習を続けているが、一向に腕は細いままである。

 ちなみに中等部では県ベスト4止まりだ。


 裕太は人懐っこい性格で、中学で転校してきた極度の人見知りの俺にも積極的に声を掛けてくれた。

 どこを気に入られたのか、事あるごとに絡んでくるので一緒にいることが多くなり、今では『親友』と呼べる程度の仲である。


 先ほども言ったが、俺は極度の人見知りである。初対面の人は確実に睨んでしまう。

 よって、親しいと言える友人は多くない。断じてボッチではないが(爆)。

 裕太ほど積極的に絡んでこなければ『親友』と呼べる関係にはなっていなかっただろう。


 本当にいい奴だ。


 ただ少し天然なところがあり、普段からよく物をなくす。


「衣装箱?この辺には置いてないみたいだけど。ユウタの衣装を探しているのか?」


「それが......。教室から衣装を運び出す時に、主役のロミ男とジュリ恵の衣装が入った箱をユウタ君に渡して運んでもらったんだけど。その箱だけが見当たらなくて......。」


 ちなみに主役のロミ男は裕太が、ジュリ恵は松前がやる事になっている。

 主役用の衣装がないため、裕太は体操服ジャージ、松前はセーラー服の上に薄いカーディガンを羽織った姿のままだ。


「どうしてそんな大事な物をユウタに持たせたんだ......。ユウタはなくし物の天才だぞ!!」


「そんな、天才だなんて。」


「「褒めてないから!!」」


 デカイ身体をクネクネとさせながら、照れ笑いをした裕太に俺と松前のツッコミがハモる。


「午後の部2番目だから、昼食前までには見つけなきゃいけないの。ヒビキ君も一緒に探してくれない?」


 困った顔でため息をつきながら俺を見上げる松前。


 俺と松前の身長差が20cmあるので必然的に上目遣いになってしまうのだが、『小悪魔』と称される彼女の仕草に一瞬やられ、苦笑いしながら申し出を受け入れる。


 俺は少し離れた所にいる大道具係の三沢ミツザワ 友也トモヤに声を掛けた。


「あ~......ミツザワ。主役の衣装箱が見つからないらしい。少し探すのを手伝って来るよ......。大道具の移動までまだ時間があるしちょっと離れるけどいいか?」


 道具箱の上に座っていた三沢は、こちらに視線を向けるがすぐに逸らしてしまう。


「......わかった。」


 小さくそう言うと俯いてしまう。


 三沢は普段からおとなしく、あまり周囲と話をしない。

 直接目を合わせるのも苦手なようで、何か話しかけてもすぐに視線を逸らし小さな声でボソボソと返事をする。


 極度の人見知りで初対面の相手には睨んでしまい、会話も苦手な俺との相性は最悪かもしれない。

 同じクラスだが、殆ど話す機会もないので関係は一向に改善されない。


 一部の生徒から嫌がらせを受けているという噂も聞いた事があるが、実際に現場を見たわけではないので真相はわからない。


 三沢の許可を貰い、俺は裕太達と一緒に衣装箱を探す為その場を離れた。


 体育館の裏には他のクラスの大道具や背景、衣装や小道具の箱などが壁際に並べられている。

 箱には各クラスのラベルが貼られているので、ひとつひとつ確認しながら探すが、数も多くなかなか大変だ。


「きっと他のクラスの置き場に間違って置いたんじゃないかな。」


 荷物の間を覗き込みながら松前が言う。


「早く見つけて飯が食いたい。......腹減った。」


 裕太が両手で腹を押さえて唸りながら後ろを歩く。


「お前の管理ミスでなくなった衣装箱を探しているんだぞ?」


 俺は呆れてため息をつく。


「ヒビキ、リュック背負ってきたんだな。教室に置いてこなかったのか?」


 俺の皮肉を気にする様子もなく、裕太は俺が二人と一緒に来るときにリュックを背負っていたのを見て不思議そうに聞いてきた。


「ああ、今日は手前の駅で接触事故があったらしくてな、電車がいつもより遅れたんだ。学校へ着いたらみんなが校舎を出て体育館に移動しているのが見えたから直接現場に向かったんだよ。」


 俺が教室に荷物を置きに行けなかった理由を話すと裕太の目がキラリと光った。


「......と言うことは。昼飯も持ち歩いているのか?」


 期待を込めて聞いてくる裕太の顔を見て俺は苦笑いした。


「ひとつだけだぞ。」


 昼食用にコンビニで買ってきたサンドイッチをひとつ手渡す。


「やったーーーーーーーー!!」


 喜んでサンドイッチを食べ始める裕太に荷物を覗き込んでいた松前が顔を上げて呟いた。


「あなた達、探す気ある?」





 --------ズンッ!!!!





 その時急に地面が縦に突き上げる様に揺れた。


 地震!?


「きゃあ!?」 「うわぁ!?」


 そう考える間もなく再度大きく揺れ、地面が波打つように隆起する。





 --------ズズズン!!!!





 立っている事のできない激しい揺れに俺たちはヨロめき地面に這いつくばる。




 --------ビシビシ。




 何かがひび割れる様な大きな音に、微かに首を動かし頭上を確認すると、こぶし大の大きさの瓦礫が落ちてくるのが見えた。


「危ない!!」


 咄嗟に頭を庇うよう二人に声を掛けるが、まだ激しく揺れている為思うように動けない。


「建物が崩れてくるかもしれない。ここから離れよう。


 二人は俺の言葉に頷いたが、まだ真っすぐ立つのは困難で這い出るように前に進む。

 暫くすると少し揺れが治まってきた。

 漸く立ち上がり校舎の壁を背に走り出すと、背後でまた先程の嫌な音が聞こえた。




 --------ビシビシッ。ガラ、ガラ......。




 何かが崩れてくる音。

 振り向くまでもなく、恐らく校舎の壁が崩れたのだろう。


 俺たちは必死で前に進もうとするが、揺れが残っていて思うように進めない。


 遠くで、近くで、生徒達の悲鳴も聞こえるがそちらに視線を移す余裕もない。


 漸く敷地の端にあるフェンスに向かって半分ぐらい進んだ辺りで隆起した地面に足を取られ躓くと、左側に分厚いコンクリートで蓋をした古い井戸が見えた。

 使われなくなって随分経っているのか苔だらけで周りには草も生い茂っている。


 危険の無いように封鎖され、本来なら分厚いコンクリートの上に大人が乗って飛び跳ねても壊れることがない。


 しかし、激しい地震のせいで脆くなっており、コンクリートの蓋にも井戸の側面にも大きくヒビが入っていた。


 俺は躓き態勢を崩したままその井戸の蓋の上に手を突いた。


 グラ......ッ


 脆くなっていた井戸はその衝撃で分厚いコンクリートの蓋も井戸自体もガラガラと崩れていく。




 --------落ちる。




 まるでスローモーションのように。


 ああ......これが走馬灯か、と他人事のように感じている自分が居た。






 同時に、校舎から瓦礫が俺達の上に容赦なく落ちてきたのだった。
















筆は遅いです。

文才もないです。

しばらくは生温かく見守って下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ