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魔王のぼくと農民のきみと無職のあいつ  作者: 木島冴子
元魔王の家族
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元魔王の家族1



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オレの家族

スィフル・イーア




魔族には人間のような「家族」という概念はない。


両親とともに過ごすのは幼年期のわずかの間、それ以降はたいてい一人だ。


長い寿命のなかでだれかと一緒にいるということほど苦痛なものはないからだ。


とくに俺の家系は魔人種族をすべる王の一族。


力こそすべての魔族において、権力争いの果ての血ぬられた家系。


他人を信用するな、自身と民のことだけを考えろと、幼いころから次代の魔王として俺は教育されてきた。


先代の魔王が死んで正式な魔王となったのは、百十九歳のときだった。


なんの疑問もなく人間との戦争がつづくと思っていた。


それから二百年後。


五千年つづいていた人間との戦争があらたな局面をむかえた。


魔族が優勢だったはずの戦は人間に軍配があがるようになっていた。


主要都市のいくつかが陥落し人間の手に落ちた。


それらすべての戦いに若い女勇者が関わっているという噂があった。


調べてみるとたしかにその勇者が関わった戦にはすべて敗北していた。


連戦連勝をかさねる勇者に興味があった。


同時に魔族が衰退していることも感じた。


出生率の低さと子どもの病死率。これらが年をかさねるほど高くなっていた。


五千年の勝利にあぐらをかいていたツケがまわってきたのだ。


そして俺はある結論にいたった。


ちょうどその時、彼女は単身のりこんできたのだった。


老人のような白い髪、怒りのみちた青い瞳の少女は、物怖じすることなく魔王の俺に剣をつきつけた。


怒りの奥にある勇者の言葉は俺の心を惹きつけた。


両種族が生き残るためには今しかない、と。


俺は勇者に降伏を申し入れた。


敗戦魔王。


二年後の今、魔族のあいだで俺はそう呼ばれている。


不名誉な名前ではあるが仕方がない。


己の誇りよりも、民ひいては魔人種族の存続のほうが大切だ。


同族でも批判の多い俺の選択を一番に認めてくれたのは勇者だった。


宿敵が理解者だというのはなんともおかしな話だ。


協力を願うと条件付きではあるが勇者は了承した。


俺は魔王をやめ、勇者は勇者をやめた。


そして俺と元勇者、それに幼い新魔王の三人。


ひとつ屋根の下で暮らしている。


人間社会ではそれを「家族」というらしい。


三百二十一歳にして、はじめて他人と一緒に過ごしている。


居心地は悪くない。


心残りはいずれこの暮らしが終わるということだ。


俺は元勇者と契約した。


すべてが終わったらこの命をさしだす、と。


元勇者はためらいなく俺を殺すだろう。


その後、彼女は別の誰かと「家族」になる。


それを考えると、今すぐなにもかもすべてぶち壊してしまいたいと思ってしまうのだった。


「家族」というのはそういうものなのだろうか。




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