「人生と愛」あとがきにかえて(全文)
あとがきにかえて
朝のラッシュアワーの電車に乗る。急行や準急である。電車が駅に停車するたび、乗客が増えてくる。やがて車両の中は、人ごみでごった返す。車両の中には座席がない。いわゆる座席格納式なのである。渋谷までの混み合う電車の中で、乗客は思い思いの事をしながら“耐え忍んで”いる。ひたすら文庫本を読む人、携帯の音楽を聞きながら、目をつぶっている人、参考書を人ごみにもまれながらも読んでいる高校生、ただ何もせず目だけつぶっている男性。携帯のゲームやニュースに夢中になる人など。彼らは本当に“耐え忍んで”いるのである。座席もないから、窓側を背に立つ人、窓側に向いている人、これも様々。でも窓から景色を眺めている人などいない。
この通勤電車は多摩川を渡ると地下鉄と化すのである。もちろん、電車はよく遅れる。前の電車との間隔がつまってしまうのだろう。
のろのろ運転で、駅での停車も長くなる。
座席もなく、そこには人間性もなく、生きていることを実感できる何者もない。“耐えるのみ”である。渋谷の駅に到着する。乗客はほっとしたように、足早に電車から去る。
この“非人間的な世界”に人々は耐えているのである。
人間らしく生きたいという心は誰にでもある。こんな矛盾した生活、でもこれも人間の生き方には違いない。
一体我々は何を求めているのか、そして我々は何処に行こうとしているのか。
愛とは何か、人生とは何か、人間とは何か、考えさせられる場面はことのほか多い。
つまらない文章になってしまった。
最後に、この稚拙な作品を刊行させて頂いた鳥影社のお世話になった方々に心より感謝申し上げたい。