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どうせ、自由。  作者: 劉之介
第二章 余命一ヶ月の自由
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夜の友達

 真っ暗の四畳半。

 アパートの一室で、あたしは正座をして、窓の外を眺めていた。冷たい匂いがさっきからあたしの鼻をくすぶっているけれど、別にあたしは外の景色を眺めているわけではない。確かに外は綺麗な夕焼けが見えているけれど。でも、あたしはそれにあまり注目せず、未来に起こるもっと他のことについて考えていた。

 暗闇だ。

 見渡す限りの黒、黒、黒。誰が望むでもない、誰が手を差し出すでもない、不幸の黒。あたしは外が夜に支配されてしまうまで、ずっとそこで正座を続けているつもりだった。あたしは他のみんなが夜のことを嫌っているのを知っている。あたしも昔は暗闇が嫌いだった。視界を奪われることは、大変な混乱があたしに付きまとうから。嫌だと思うのは至極当然のことだった。

 でもいつの日からか……あたしは夜と友達になった。きっかけを作ったのはなんとあたし。あたしの方から、夜に誘いを申し込んでいったの。夜は元気よく笑って、あたしの言葉に応じてくれた。夜は、あたしが思うほど怖い人じゃなかったのよ。みんな誤解している。あたしも誤解してた。でも、これは本当のこと。会ったもの。本当の暗闇に。世界で唯一の証人だもの。

 電気をつけた後の、四畳半。

 もうくだらない比喩を使って、自分の気持ちを誤魔化すのは止めましょう。これは真実なんだから。あたしはこの結果の知れたことと、向き合っていかなければいかないんだから。

 あたしはもうすぐ死ぬ。

 それは、それはとても分かっていること。誰に言われなくとも、頭でしかと刻み込まれていること。

 不治の病があたしの敏感な命を、ゆっくりとゆっくりと吸い取っている。他人が命令したわけでもない、自然に発生したわけでもない、あたし自身が確実に生み出したもの。

 時が来れば……あたしは真の自由を手にいれる。永遠の哀しみを胸に抱く。ずっとずっと長い間観察して、ノートに貼り付けて、じっくり眺めていたものが「無」になる。それをあたしは自由と呼んでいる。だってそうでしょ? それこそがみんなが求めていた答えの全て。みんなが目を背けているそこの部分に、あるはずがないと思われていた答えが隠されている。灯台下暗しって奴かもね。

 あたしはもうすぐで夜を迎える。あたしはずっとそこで正座を続けているつもりだった。

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